水仙
それは報われぬ恋だと知ってるの
目の前に颯爽と現れて、それはあっという間に私の心を奪っていってしまった。それと同時に、私はこの人の瞳にはきっとただの助けるべき民にすぎないのだとも思った。彼が調査分隊の隊長だと知ったのは、助けられて温かいスープを振舞ってもらった時だった。あまり自分と年の変わらぬ少年なのに、ライトキーパーで分隊長という立派な人だった。彼に救われてから、少しだけ人の役に立とうと彼を習って行動するようになった。彼の隣に並べることはないのだけれど。
「おや、こんなところで会うなんて珍しいですね」
夜明かしの墓でお墓参りをしていた時にそう声をかけてきたのは、彼と同じライトキーパーのフリンズさんがいた。
「父の墓参りです。今日が命日なので」
「そうだったのですね、邪魔してしまったでしょうか」
「いえ、もう帰ろうとしていたところなので」
父の墓に背を向けて、フリンズさんに向き直る。薄暗い夜明かしの墓に、溶け込むような人。満月のような瞳はほんのすこし居心地の悪さを感じてしまう。稲妻の言葉にある、蛇に睨まれる蛙というのは今の私のことを言うのだろうなと、頭の片隅で思った。
「よろしければ、少し休んで行かれませんか?もうすぐ坊っちゃまがここに来るので」
ゆっくりと細められた目に、見透かされたような言葉。ここで断っても乗っても彼にはどちらも面白いことには変わらないだろう。
「では、お言葉に甘えてもいいですか?すこし、人と話したかったんです。」
「はい、ついてきてください」
そう言って、踵を返す彼の背中を追う。