いったんお相手考えず即興で てきとうに
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ワファー・アンニール
シャンム・ナシーム
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きんいろの花と蜜の詰まった瓶を買い、陽に透かした。
見え透いた秘密が、あたしたち好きだね。
猫に呼ばれている。と、人間は思うわけだ。たぶん、餌のことしか考えていないし、暇を持て余すのは人間のせいなので、苦情を言いにいらしたのだろ。
秒針に誑かされるなら、最初から時間なんて止めちゃえばいいんだよ。と言う。リネが指を鳴らした。
喰えない空気に雑じる。人間性を回復する。他人に頼まれてタンクをする。フレンドリーファイアで死んじまえと思う日がある。
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生きていくと、罅が生じる。雨や泥濘、夜露を歩いたあとでなくては靴が濡れず、振り向き見ると、渇いたクレヴァスが差し迫っている。わたしが一歩を踏み出せば、支えの片足の後ろにはもう罅が走る。分かたれた片側に避難した愛するものたち。あそこまで走ってゆく勇気は出なかった。両親はその勇気の出るひとたちだったが、わたしは寓居を轉々とし、罅から逃げ続けている。
ボーンモス荒原の南端には不均一な轍がある。隊商の荷車に燈台守の物資輸送車、変わった映像装置が(意思を持ってか持たずか)その溝を深くするし、わたしもそれを歩いた。
雨が降っている。分厚い茶封筒を守る鞄を二度、三度たしかめた。さっきからおかしい、というよか、常に夢を漂っている心地がする。
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寓居のローテーブルにはうつくしい字の走り書きが置かれていた。枯れ葉のように思い、そぅっとつまむ。まず先に“F”の字を見た。未来の日付と店の名前。スペランザ。Fは、もっと丁寧だったはずだ。
日傘を差して春を嗅いだ。蠱惑的だった。柄をまわす。深緑の洋裾の端にあつらえられたような、しろくて、ふあふあの衿飾がまわる。いまの生活と乖離している。工業廃水を踏んで、ようやくそう気づいた。
春、とはわたしが勝手に申しただけでナド・クライは常冬である。越冬した、と思うにはまだ遠い。夏は遠い。春すら未だだ。
最近は、大ごとばかりが起きた。避難誘導で炎国への船に乗り、膚をちりちり灼く日差しの下にいた。鉄屑の増えたナシャタウンへ戻ると、知り合いや、見知らぬひとたちとは口々に「大変でしたね」と交わす。わたしたちは無事だった。おそろしいことならいくつも巻き起こったし、それらとかけ離れたわたしたちは、ただ、無事だった。
日傘を差したのは、買ってすぐ、試せなかったからだった。あくまで避難という名目でナタへ渡ったのに、暢気にみえてはならぬと思っていた。傘は持ち出した荷の中へ隠せた。ちいさくて、助かった。
春は飴細工のにおいだった。心ばかり懐郷する。稲妻はもう、梅が咲いているはずだ。ヒヨドリがやかましくするはず。こちらではとんと聞かぬ。代わりに鉄の花が鉢に植わっているし、コンヴェヤが日夜忙しない。酒のみどもが前より倖せそうに、騒々しい。あたらしい噂がある。背の高い燈台守がおふたりで、街燈を直している。*ああ*されるんやろか、しかし想像がつかなかった。
幅の広い階段をのぼってスペランザへゆくと、店のほうではなく、町を見下ろせる、低い手すりにFは寄りかかっていた。上背があって目立つ。日差しのもとでは特に。眸が合わさった、というより、なにを頼りにしたか知れぬが彼は階段をのぼりきる前からわたしを見つけていらっしゃった。
「お久しぶりです」
変わらぬ方だな、と思う。お久しぶりですとそっくり返し、「お待たせしましたよね、フリンズさん」とようやく階段を抜けた。日傘をたたむと物珍しそうになさる。あらためて、自分でも可笑しい。編帽子を被って日傘をかけて、あんまりに太陽を厭うひとだ。これで膚がなまッ白ければかんぺきだったろう。
「待つにも退屈しない町ですから」
「長、待ってましたね、それは」
「早くに着いただけですよ」
1時間だ~~~ そろそろ終わります ありがとうございました~~~~<3