・あとがきパート
はい、というわけで去年は間違って本編に実装されていないチルノシナリオの二次創作を妄想100%で書く羽目になりましたが、今回はちゃんとラルバシナリオです。
そして今回はカッコつけようと巻末に参考文献を掲示してみましたよ。今回は「常世の神としてのラルバ」にフォーカスした内容にするためにさまざまな参考文献を読んでみました。特に「CiNii Research」と「国会図書館デジタルコレクション」は実に有用でした。というかさっさと使っとけよ……。
それでいろいろ調べたんですが、なんかもう日本神話ってあっちこっちがつながってるので「このテーマ、深遠(ふか)いッッッ!!! ボボボボボボ」といった感じ。なのでほどほどのところでやめておきました。大生部多と秦河勝の産業敵対立とか面白い発見でしたがヨイダンからは完全に離れてしまうので……。
これまでも色々調べるのはやってはきましたが、それらをそのまま使うとwikiを丸写しして書いたレポートみたいになってしまうので、あくまでイメージソースに留めていました。しかし最近は物語としての構造強度がの不足を感じることが多くなってきたので、今回はしっかり調べて調べた内容をしっかり本文に反映させることを意識して書きました。その試みが成功しているかどうかはゴッドミソスープ。
今回も表紙はバロッカー同志であるなまねこさんに描いてもらいました。今回も発注どおりの素敵極まりない表紙をありがとうございます。ちなみに年季の入ったオタクの皆さんには自明のことだと思いますが今回の表紙の構図はみんな大好き「KEY THE METAL IDOL」のジャケ絵です。もちろんおわかりですね?
さて、これまでは東方イベントへの参加は紅楼夢のみでしたが、もうそろそろ参加する詐欺を繰り返していた例大祭にも参加したいと思っていますがどうなるかはゴッドミソスープ。
それでは皆さん、次の作品でお会いしましょう。次は久しぶりに純粋な二次創作になるかも。
・ラストパート続き
そして――。
無数の扉が浮かぶ空間の向こうから、その声は聞こえてきました。
「やれやれ、あのぽんこつ童子どもめ……」
その声を聞いた瞬間、ラルバは思わず身震いしました。声を聞いただけで、その声の主がただ者ではないことがはっきりと感じられたからです。
「ここまでたどり着いてしまったか。迷える蝶(かはびらこ)の妖精よ」
姿を現したのは、薄暗い空間の中で自ら光り輝くような長い金髪に古風な冠をかぶり、車椅子に腰を下ろした女性でした。
その姿を認めた瞬間、ラルバの触覚と翅が激しくびりびりとふるえます。
「あっ! あなたはあのときのとびらの神様ね!」
ラルバの言う「あのとき」とは、先だっての異変である、四季が同時に出現した「四季異変」のことです。その四季異変の黒幕こそが、この車椅子に座った女性、摩多羅隠岐奈なのです。
そしてラルバ自身も、隠岐奈の「あらゆるものの背中に扉を作る程度の能力」によって大きな力を注ぎ込まれ、大暴れした結果霊夢たちに痛い目にあわされた経緯がありました。
「また会ったな。今日はなんの用だ? と言っても……予想はつくがね」
「わたしのコレクションが盗まれちゃったの。盗んだ犯人、ここを通らなかった?」
ラルバがそう聞くと、隠岐奈は袖の中から見覚えのあるアイテムを取り出しました。
「おまえのいうコレクションとは、これのことだな?」
隠岐奈が取り出したのは、赤くて四角いPアイテム。間違いありません。まさに、今日一日じゅう探していたラルバのコレクションでした!
「そうそう、それのこと!」
ようやく探していたコレクションを見つけて喜ぶラルバでしたが、ちょっと考えてから眉根を寄せます。
「……ってあれ? それじゃ、盗んだのはあなたなのね!」
「いかにも。実行犯はわたしではないがね」
ラルバが問い詰めると、隠岐奈はあっさり認めました。
「えーっと、返してくれない? 特にその、大きくて四角くて丸っこいやつ! そんなに完璧な形のパワーアップアイテム(大)、ほかにはどこにもないんだから!」
隠岐奈があまりにもあっさりと犯行を認めたので、怒っていたはずのラルバは思わず毒気を抜かれてしまいました。しかも、神様が相手だからか、妙に下手に出た言い方になってしまいます。
「残念だがそうはいかない。これについては少し調べなくてはいけないことがある。場合によっては壊さなくてはならん」
「こ……壊すだって!? そんなにきれいなパワーアップアイテム(大)を!? む、むうう……!」
隠岐奈のあまりに予想外の言葉に、ラルバは思わず大声を上げます。いったいどんな理由があって、隠岐奈はこのPアイテムをラルバから奪ったのでしょう?
「だがまあ……そうだな。せっかくここまで来たんだ、おまえに一回チャンスをやろう」
挑発するような隠岐奈の言葉に、ラルバの闘志に火が着きました。
「ダンスバトルだ! わたしが勝ったら、大きいのもちっこいのもぜんぶ返してもらうよ!」
ラルバの宣戦布告に、隠岐奈はにやりと口の端を吊り上げて応えます。
「やはり面白いやつだ。秘神を前にしてまったく物怖じしていない。よかろう、受けて立ってやろう! ただし、お前が負けたときは、お前の持っているその花を置いていってもらおうか」
「!?」
ラルバは反射的に、タチバナの花をしまった懐に手をやります。なぜ隠岐奈はこの花のことを知っているのでしょう? 隠岐奈の目的はいったい――?
疑問は尽きません。尽きませんが、それもすべて、ダンスバトルが解決してくれるはず。ラルバはそう確信していました。
「いいよ! 今のわたしは神様相手でもぜんぜん負ける気がしないもんね!」
「パワーを吸収して育つ花……どこでそんなものを手に入れたのか知らんが、それに頼るだけではこのわたしには勝てん!」
車椅子に座ったままの隠岐奈の放つ存在感がにわかに増し、すさまじい妖力の重圧がほとんど暴風のようにラルバに吹き付けてきます。しかし、その暴風の中にあって、ラルバはすっかり身に馴染んだジンガのステップを踏んでいました。
神様相手に戦うなんて初めてのことで怖さもありました。しかしそれ以上のワクワクが、ラルバの翅をふるわせています。
「わたしが最強のダンサーだっ!」
「妖精の弾幕乱舞、この秘神に見せてみよ、エタニティラルバ!」
▲
隠岐奈との戦いは熾烈を極めました。
車椅子に乗ったまま、隠岐奈はこれまでに戦ったどんな相手よりも強力な弾幕を放ってきます。無数のクナイ弾、前後から挟み込むように襲ってくる火球、網の目を描いて飛んでくる大玉弾、逃げ場を塞ぐように迫りくるレーザー……それらの攻撃を、身につけたカポエイラの業(わざ)のすべてを出し切ってしのぎながらも、ラルバの頭の隅では疑問が消えずにいました。
なぜ隠岐奈は、ラルバの持っていたPアイテムを奪ったのか? そして、なぜそれを調べ、場合によっては壊さなければならないと言ったのか?
いくら考えてもわかりませんし、隠岐奈が打ち鳴らす鼓の音に乗せて放たれる多彩かつ強力な弾幕の前には、考え事をしている余裕などありません。
「よく凌ぐ。しかし、ここからが本番だ!」
隠岐奈が鼓を打ち鳴らすと、周りに浮かんでいた扉がいっせいに開きました。ラルバの全周囲を取り囲むように、無数の炎弾が人魂のように浮かび上がります。
「さあ妖精の子よ、見事舞ってみせよ!」
ひときわ高く響く鼓の音とともに、炎弾がいっせいにラルバに襲いかかります。ラルバは片手で体を支えつつ逆立ちし、コマのように回る「ピアウン・ジ・マウン」の動作でそれを回避しようと試みますが、四方八方から間断なく放たれる弾幕はすべてを避けきれるものではありません。体をかすめるだけではすまず、ついには弾幕で背中の翅が大きく穿たれてしまいました!
「あうっ! く、くっそー……!」
なんとか体勢を立て直そうとするラルバですが、体勢を崩したところに連続して被弾してしまいました。一気に体力を持っていかれたラルバは、空間の奥へとふっとばされます。
ふっとばされるラルバを追いかけるように、さらに降り注ぐ炎弾。ほとんど壁のようになったその弾幕の前に、ラルバはなすすべもなく――。
瞬間、ラルバの胸元がすさまじい光を放ちました。その懐から飛び出してきたのは――五枚の白い花びら。これまで何度もラルバの危機を救ってきた、タチバナの花です。
「――それかっ!」
ラルバよりも先に動いたのは隠岐奈でした。車椅子に乗ったまま自身の放った弾幕の隙間をかいくぐるように一気にラルバに近づき、タチバナの花を奪い取りました。
「ああっ! 返してよ! まだ勝負はついてないぞ!」
なんとか体を起こしたラルバですが、抗議の声を上げるのが精一杯で反撃もできません。
「悪いが、これをお前に持たせているわけにはいかんのだ」
「だから、どういうことなの!? その花とわたしと、何の関係があるっていうの!?」
「関係あるさ、大いにな。お前はパワーアップアイテムを集めることで、この花に力を溜め込んできていた。まるで蝶が花の蜜を吸うようにな。妖精の中でも特に力に対して鋭敏な感覚を持つお前は、無数のパワーアップアイテムの中でも特に強い力を溜め込んだものを本能的に集めていたのだ。そして今、この花には最大限の力が溜まっている……」
隠岐奈の言っていることが、ラルバにはわかりません。ラルバはただ、気に入ったパワーアップアイテムをコレクションしていただけ……そのはずです。
「だからこそ、お前からパワーアップアイテムを奪い、ここにおびき寄せることが必要だった。このタチバナの花を奪い取るためにな」
なんのために、と問いを口にする前に、隠岐奈は続きを口にしました。
(本文通り)
ラルバにはもうほとんど、隠岐奈の声が聞こえていませんでした。その代わりに、あの果実をなんとしてでも奪い返さなくてはいけない、その激しい衝動が湧き上がってくるのが感じられます。
そして――。
『後戸の神、障碍の神……そして、養蚕の神よ』
そこにはすでに、ラルバはいませんでした(・・・・・・・)。ぴく、と隠岐奈の眉が釣り上がります。
「なんと! もしやすでに――」
『いかにもだ摩多羅神よ。手遅れだったな』
その声音はもはやラルバのものではありませんでした。威厳をたたえた、神気すら感じられる視線が、真正面から隠岐奈を見据えます。
『養蚕の神ともあろうものが忘れたか? 蚕は繭を作るものだ。この身体(うつわ)は、我を生み出すための繭よ。そして――』
ラルバの――ラルバの姿をした何者かの背中に、裂け目が現れました。隠岐奈の能力による後戸……ではありません。その背中が、直接裂けているのです。ラルバの中で、ラルバのすべてが、大きく変質しようとしていました。まるで、幼虫(ラルバ)が蛹に、そして蛹が蝶になるように。
「おのれ、このわたしとしたことが見誤ったわ! うっ!?」
隠岐奈の手の中にあった果実が、まばゆい光とともに砕け散りました。砕け散った果実から飛び散った光の粒子が、ラルバの翅に吸い込まれていきます。それに合わせるように、ラルバの背中の裂け目がますます大きくなっていきます。裂け目は見る間に広がっていき、すでに腰のあたりまで達していました。
『非時香果(ときじくのかぐのみ)はそのための栄養、我のためだけの神饌(しんせん)よ。ほかの誰にも無用のもの。我が食らってこそ意味がある』
今や、ラルバの背中の裂け目から吹き出してくる神気は、隠岐奈すら圧倒するほどのものになっていました。吹き付けてくる神気に目を眇める隠岐奈の眼前で、アゲハチョウの妖精を器とした何者かが、姿を現そうとしていました。
「さあ摩多羅神よ、見届けるがいい!」
ラルバの裂け目はすでに、首の後ろから腰の下にまで達していました。そして、その身体を半分に分けるほどに分かれていきます。脳天から顎下までが裂けたラルバが、どこから出ているのかもわからない哄笑を上げます。
「新世界の神への、変態(メタモルフォーゼ)を……!!」
「くぉら隠岐奈。あんた何回も何回も面倒事起こしてるんじゃないわよ……」
後戸の世界の空気を響かせる、圧倒的な重圧(プレッシャー)を伴った声が、重々しく響きます。
真紅の巫女服にお祓い某、幻想郷の住人ならだれでも知っている妖怪討滅の巫女、博麗霊夢です。
「霊夢、ちょうどいところに来てくれた! 早速そいつをふんじばってがわっふ!?」
お祓い棒の容赦ない一撃からは、たとえ摩多羅神であっても逃れられません。大上段に振り上げられたお祓棒の一撃が、雷霆のごとく隠岐奈の脳天を打ち据えます。あわれ隠岐奈は一撃で昏倒。
霊夢はすぐさまラルバに向き直りました。その両腕が、まるで神楽舞のごとく優美な所作で左右に大きく広げられました。そして――
「博麗シザーズチョップ!!」
左右から完全に同期したタイミングで放たれたチョップで、今まさに左右に割れようとしていたラルバの身体は、力付くで元通りに、数瞬後にはラルバ本人の意識が戻ってきました。
「あ、あれ……? れ、霊夢? なんでそんな鬼の形相に……? ああそれはいつものことか。って隠岐奈さん!? なんでそんなヒグマにでも襲われたような無惨な姿に……!?」
「あんた相当失礼なこと言ってるわね……」
「いや、なんでここに霊夢がいきなり出てくるのさ?」
さっぱり事態がわかってないない様子のラルバに、霊夢はため息をひとつ。
「わたしが動く理由なんて、ひとつしかないでしょ。異変解決よ」
▲
翌朝、三月精宅。
妖精用の小さな家には、三月精の他にラルバが集まっています。
「じゃあ、Pアイテムを直接盗んでいったのはサニーたちだったんだね」
ラルバの言葉に、三人そろってうつむいていた三月精たちのうち、サニーが遠慮がちに答えました。
「……そういうことになるわね」
「そういうことになるっていうか、そうよ」
スターが横からサニーの横腹をつつきながら答えます。
「むうう……」
「ごめんなさい、ラルバ。そんなに大切にしてるものだなんて」
ルナはサニーとスターの影にさり気なく隠れながら、申し訳なさそう。
ラルバはもういちどむうう……と唸り声を出してから答えました。
「まあ……こうして手元に戻ってきたんだし、あんまりとやかく言う気はないけど。その代わり、あの人たちからもらったお菓子、わたしにも分けて?」
「あの人たち」というのは、摩多羅隠岐奈とその配下の二童子のことです。
後戸の世界から帰ったあとでラルバが三月精たちを問い詰めたところ、三月精はニ童子の依頼によって、大量のお菓子と引き換えにラルバのすみかからPアイテムを持ち出すことを引き受けたとのこと。
「え、も、もちろんよ!」
「食べ切れるか不安だったし!」
「喜んでお裾分けするわ!」
口々に言う三月精を、本気で言ってるのかなー……とジト目のラルバ。しかし、取引のことは本当でしょう。
「あの扉の神様、オキナって言ったっけ。『これは場合によっては壊さねばならん』なんて」