もうカレンダー見たくない……あなたを想うだけで胸が締め付けられるの……。
というわけで紅楼夢原稿最終締め切りまであと1週間とちょっととなりました。胃が痛い……。
それはさておき、もうそろそろ終りが見えてきたペンギンSFアンソロジー下巻感想やっていきましょう。
・あなたの声だけ聞こえない(阿下潮氏)
本アンソロジーでは、実際のペンギンの生態を軸に据えた作品はたくさんありましたが、本作はその中でもタイトルの通り「声」に焦点を当てた作品となっています。
本作から感じるペンギンイメージは「執着」。
本作ではコウテイペンギンの、メスが子育てのために往復120日もの間絶食して餌をとってくるという過酷な生態、そしてその鳴き声は千差万別で、個体を外見的特徴ではなく鳴き声で区別しているという特徴を土台として、濃密な愛憎劇を描きます。
ペンギンを飼育している水族館では、しばしばペンギンの「人間関係」が笑いを誘いますが、本作ではそうしたペンギン同士の関係をシリアスに描いています。
恋愛関係にはしばしば「盲目的」という枕詞が付きますが、本作に登場するペンギンの多くはまさに鳴き声でしか相手を判別できていません。すなわち、鳴き声で自分を偽ることが簡単にできてしまうんですね。この特徴をためらいなく利用することで愛する相手を欺瞞して手に入れるという展開には、およそ野生動物には感じられないじっとりした暗い感情を見ました。
・ペンギン・ボックス・パラドックス(紫陽凛氏)
電脳世界をペンギンが生活する海に見立てた作品が多かった本アンソロジーですが、本作もまたそんな電脳世界に出現するペンギンを扱った作品。
本作から感じるペンギンイメージは「謎のバグ」。
SFは多くの場合未来世界を描くものですが、本作の未来世界描写は非常に具体的で、いかにもありそう、そしていずれこうなりそうと思わせてくれるワクワク感がありました。3次元世界と仮想世界の二重構造が成立している社会とか、もうすぐそこまで来ている気がします。
そして仮想世界でのトラブル解決のために3次元世界でドタバタする羽目になるというのもなかなかリアル。このドタバタ感、システムエンジニアとかそういう仕事をしてる人には共感……を通り越して胃が痛くなりそう。
そうやってトラブル解決に奔走する人間側に対してペンギンの方はあくまでマイペースで、特に目的もなくそこにいるだけ、というのがいかにもペンギンらしくて好き。
今日はここまで。