弾幕ダンスバトルは、ただ単に踊りながら弾幕を撃ち合うのではなく、リズムに乗って弾幕を打つというのが重要なポイント。そのため、弾幕ダンスバトルは弾幕を相手に当てるだけでなく、リズムを奪い合うという駆け引きが生じるのです。
チルノは妖精の中でも特に強い力を持っています。しかし、ジンガのステップを踏みながら華麗にさまざまな技を繰り出してくるラルバのリズムに、少しずつ圧倒されつつありました。ラルバのカポエイラのリズムは本で読んだだけの独学でまだまだ未熟なものでしたが、それでもしっかりとリズムを刻んで次々に技を繰り出してくるのです。
(なんだこれ……あたい、こんな弾幕ダンスバトル、知らないぞ?)
対するチルノの動きは、まるで水面に浮かぶ木の葉が少しずつ渦に引き寄せられていくように、知らず知らずのうちにラルバの踏むジンガのリズムに巻き込まれていきました。そしてその動きは、自然にラルバに合わせるように同じリズムを刻んでいきます。
カポエイラを学び始めたラルバはまだ知らないことでしたが、今やふたりの動きはカポエイラにおける組手「ジョーゴ」になりつつありました。
弾幕ダンスバトルでは、たしかに明確に勝敗を決め決闘方法です。しかし今や、ふたりの動きは段々と調和しつつあります。そこには、カポエイラを行うもの、カポエイリストが互いに踊りながら作る円「ホーダ」ができつつありました。チルノが放つ巨大な氷の塊をラルバの蹴りが叩き割ると、まるでふたりのダンスを盛り上げる演出のように氷の粒が飛び散り、太陽の光を反射してきらめきます。そのきらめきの中を鱗粉を振りまきながら蝶の羽が舞い踊る姿は、まさにふたりが作り出したダンスの舞台でした。
チルノが投げつけた氷のハンマーをすり抜けるようにかわし、ラルバは太陽を背にして空中高く飛び上がりました。そして、チルノの背後に両足で着地すると同時に上半身を地面近くを擦るように振り、思い切りひねりを加えた空中蹴り「ピルリット」を放ちます!
「んぎゃーっ!」
無防備な背中側から攻撃されたチルノは、ラルバの必殺の一撃をまともに食らってピチューン!
飛び散った氷の粒に照らされながら、ラルバは勝利ポーズ!
「よしっ、わたしの勝ち!」
「ぐぅぅーっ、さいきょーのあたいがあっさり負けるなんて……」
地面に伸びたチルノはそう言って悔しがってはいますが、その表情はみんなで遊び終わったときと同じ、満足げな顔でした。
そんなチルノに、ラルバは手を差し伸べて起こしてあげます。
「あっさりじゃないよー? チルノ、すごいセンスはいいと思うんだけどなぁ」
「なに言ってんだっ! いっぱつも当てられなかったぞ!」
「あはは……たまたま運が良かっただけじゃないかな!」
「ちくしょー! もういっかい! 今度は超本気モードだぞ!」
まだまだやる気ゲージ満タンといった感じのチルノに当てられて2回戦目を申し込みそうになるラルバでしたが、今日はほかにやることがあるのです。
「はっ……しまった、わたしは聞き込みを続けないと! また今度ね、チルノ!」
「にげるなーっ!」
地団駄を踏んでいるチルノを置いて、ラルバは再び鱗粉を振りまきながら空中に飛び上がりました。
チルノとの一戦を見事に制したラルバですが、肝心のパワーアップアイテムを盗み出した犯人については結局新しい情報は得られていません。