さて今週末はいよいよ夏コミ。それまでになるべくペンギンSFアンソロジー感想を進めておきたいですね。あとこのgooブログも10月で閉鎖されるので、移行先を決めて引っ越しを進めなくては。
・ペンギンコード(甘衣君彩氏)
 ペンギンの生活する大海原をSNSに置換したお話。
 本作から感じるペンギンイメージは「孤独」。
 本来なら群れで生活する動物であるペンギンですが、本作では孤独を志向する性向を持つ人間を「ペンギン型」と分類しています。主人公である郡前氷河は典型的なペンギン型の人間で、SNSにおける自分が行きやすい世界を志向した結果、誰からも干渉されず誰とも関係を持たなくていい設定を作り、ひとり孤独の中に安らいでいます。
 ……という描写があるからこそ、逆説的に他人の声というノイズに溢れたSNSの世界が際立って感じられました。どれほど孤独を志向して他者との関係を断とうとしても、まるで水が染み込んでくるかのように他者の声が聞こえてくる描写にはホラーの味わいすら感じました。
 ペンギンにとって南極は「天敵のいない土地」なわけですが、本作においても郡前は天敵がいない土地=他者から干渉されないVR世界に文字通り没入(ジャック・イン)していきます。完璧な孤独。これもまたひとつの幸福、楽園のかたちなんだなあと感じました。
・ほの明るい空の下で(蒼桐大紀氏)
 時は2204年、木星第三衛星ガニメデの調査現場を舞台とした作品です。
 本作から感じるペンギンイメージは「いるかも知れない存在」。
 本作におけるペンギンは、ガニメデの過酷な環境とそこでの各種調査のために人為的に乱された変異種。この設定だけで3杯イケますねもぐもぐ。
 そんなガニメデペンギンと人間の主人公のコンビが挑むガニメデの調査の描写は、テクニカルタームをふんだんに取り入れたそういうのが好きな人にはたまらないもの。いつもの退屈な調査だと思っていたら……のお約束展開からの緊迫感ある脱出劇。そしてそこからのラストのどんでん返しという構成が実に堅実で物語建築強度の高さが伺えます。
 フィクションに登場するペンギンには「可愛い」以外にもそのモノトーンの佇まいから「クールかつニヒル」といった印象があるもの。本作のガニメデペンギンであるアルフの言動もそのイメージによく合っていたと思います。
 今日はここまで。
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ペンギンSFアンソロジー感想その20
初公開日: 2025年08月11日
最終更新日: 2025年08月11日
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