1日2本のペースで書いていたこのペンギンSFアンソロ感想が1本になっているところから夏コミ原稿最終締め切り直前の緊張感を察していただきたい。
 シンプルに胃が痛い。
・希望と僕(黒石廉氏)
 人生の苦境に立たされた青年が、ペンギンとともに旅に出る、読後の開放感が印象的だったお話。
 本作から感じるペンギンイメージは「自由」。
 人間は現実でも虚構の世界でもさまざまなしがらみに絡み取られているもの。本作では、ふとしたことからイワトビペンギンの卵をかえすことになった青年が、その卵から生まれたペンギンとともに旅に出ます。
 イワトビペンギンの親はふたつ生んだ卵のうち、ひとつを巣の外に蹴り出してしまいます。本作では、主人公の青年がそんなこの世に生まれることがないまま朽ちていく運命にあった卵から孵ったペンギンの雛に、突然親に夜逃げされてこの世に一人放り出された自分を重ね合わせる様子が飾らない素朴な文体で書かれています。
 彼らふたりの旅路のなんと豊かなことか! 人間社会と離れ、動物や自然とふれあいながら旅をする二人の姿には羨望すら覚えます。
 そして冒頭とラストの「あなたは一人でなんでもできる」と「あなたは一人じゃなんにもできない」の対比の美しさよ。そもそも物語構造的には旅の前と後ではなんらかの変化が起こるべきなんですが、その変化を端的に表してみせたこのラスト、実に美しい。
 今日はここまで。
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