あなたのことを想うだけで胸が苦しくなる。まあ締切のことなんですが。
それはともかくペンギンSFアンソロジーの感想を進めていきますよ。
・NHPドキュメンタリー「スペースペンギン~光らない流れ星~」(子鹿白介氏)
みんな大好きスペキュレイティブ・フィクション。SFの本質は「楽しい大ウソ」であることを改めて感じさせてくれる一編です。
本作から感じるペンギンイメージは「渡り鳥」。
飛べない鳥であるペンギンを宇宙に住まわせ、さらには壮大な規模の「渡り」を行う種族であるという設定を持ってくるのはまさに発想の飛躍と言えるでしょう。鳥だけに。
あと本作の舞台となるスペースペンギンたちが生息する星の名前が「・Θ・(ドット・シータ・ドット)星」なんですが、これ2秒くらい考えて意味がわかったときには笑ってしまいました。このブログは横書きなのでどういう意味かはすぐに分かると思いますが、アンソロは縦書きなので一瞬わからなかった。これおそらくアンソロが縦書きってところまで計算に入れてこの名前にしてると見た。
本作はモキュメンタリー風味にスペースペンギンの生態を生き生きと描いています。とくにこの地の文がNHKドキュメンタリー風味で大ウソ感があって実にいい。お約束とも言える「~終~」で結んであるのも芸術点が高いですね。
・さよならスイートピー(あぼがど氏)
かなりストレートな恋愛というか恋慕をメインに据えた、スイートかつビターな味わいの一編。
本作から感じるペンギンイメージは「魔の者」。
魔魅に惹かれた人間は、その者もまた魔の者となるというのは異種婚姻譚のお約束の一つですが、本作は一見ハードSFな味わいの中にそうしたおとぎ話の味を感じました。
まず言及しておきたいのはところどころに散りばめられた小ネタ。クトゥルフ神話、銀河ヒッチハイク・ガイドといったところから取ったネタや「ペンギン・エンタングル」通称ペンタングル、全通ペンギンと言ったネーミングまでSF好きならニヤリとできるネタが盛り沢山。そもそもこれはSFアンソロジーなんだからここでSFネタを盛り込まずにどうするって感じですよね。
こうした小ネタはややもすると量や使い所を間違えてトッピングや隠し味のつもりが雑味になってしまうこともしばしばあるもの。しかし本作はそうした小ネタもしっかり作品を構成するパーツとなっていて全体の完成度に寄与しているのがすごいところ。
また、作中に挿入される火星ペンギンの設定もうまい感じに不安を煽ってくれるのが好き。特に火星が火星ペンギンの生息地ではなく保育所=クレイシだった、という設定は現実のペンギンの生態をうまくSFに転用していてワザマエを感じました。
今日はここまで。