しかし、レインディアは躊躇しなかった。正常な判断能力を失っていたのか、光核(コア)を増設するという危険な処置を行ってなお自己同一性を保つ確信があったのか。それを知る者はいない。おそらくは、レインディア自身さえも。
 その要請を受け取ったのは、レーヴァテインの眷属の中でもその側近であるレイヴァースと同格にして光の軍勢の最終防衛ラインを担う惑星支援艦を率いる、光の軍勢の戦略ネットワークの管理中枢たる超弩級恒星艦ペンタグラムだった。
 ペンタグラムは1.258秒という長考の末にその要請を受諾。機動要塞エクソダス内の生産プラント内に回収されていたレインディアの増強処置(アップグレード)が実行された。
 培養槽(ヴァット)内から成長した光核(コア)が取り出され、レインディアに合わせて調整された二対四基の増加装甲へと移植。この増加装甲は表面に対光撃術式を巡らせた盾であると同時に、レインディアが自ら構築した疑似太陽剣へ光核(コア)のエネルギーを供給して増強するための剣でもある。
 切り開かれたレインディアの竜骨(スパイン)から伸びた神経網が施術用アームによって引き出され、同じように光核(コア)を埋め込まれた追加装甲から引き出された神経網が癒着される。その施術の中で、レインディアの人格がどのように変容しているのか――そもそも本来の人格が保持されているのか、それをうかがい知ることはできない。
 そして――処置が完了したその瞬間、レインディアは覚醒した。自身が身を沈めていた培養槽(ヴァット)ごと周辺の生産プラントを破壊。施設壁面を連続して破壊しつつ一直線に進行していった。
 その目指す先にいるのは――。
(幕間終了)
・第4章
 戦いの始まりを告げたのは、レインディアの増加装甲から展開された光翼だった。
 聖鎧着装時と同等かそれ以上の出力と推定される一対の光翼が激しく羽ばたき――転瞬、その姿が視界から消失。
 次の瞬間、大上段(アヘッド)から雷霆の如き一刀が振り下ろされる。対するネグザルツは機体を傾斜させて半身となりこれを回避。しかしレインディアはそれを読んでいた。
 振り下ろした太陽剣を即座に返し、下段(スターン)から回避動作直後のネグザルツを狙って斬り上げの一刀を振り放つ。
 ネグザルツはさらにそれを先読み(カウンター・リード)していた。抜刀(アクティベート)した太陽剣を身近くに構え、レインディアの一刀を受け止める。そのまま受けた一撃を受け流し反撃を――試みようとした瞬間、頭上からの一刀(・・・・・・・)がネグザルツの左舷部を深々と斬り裂いた。
 予想外の二刀目を躱し損ねたネグザルツは間合いを外して態勢を整える暇(いとま)もあらばこそ、驚愕に思考域を塗りつぶされそうになった。
 二刀流(・・・)。
 その身に纏った増加装甲から伸びるのは、本来ありえないはずの二振りの太陽剣。
 今のネグザルツがその属性(アライメント)を闇に擬態していることを差し引いても、太陽剣の使用がもたらす消耗は極めて大きい。その身に備わった強力な自己再生能力があるからこそ、自身に大きな負担をかける太陽剣がようやく使用できるのだ。
 しかし、レインディアはその太陽剣を二振り携えている。真正の太陽剣では考えられないことだ。いったいどうやって?
 その疑問に答える代わりに、レインディアは二振りの長大な太陽剣をひとつは上段(フォワード)、ひとつは下段(スターン)に取った。天地上下の構え。
 瞬間、光翼が羽ばたき、レインディアの姿が再び視界から掻き消える。しかし今度はネグザルツは全感覚機(センサー)を集中してその機動を追っていた――殺気は上下同時!
 二振りの太陽剣が完全に同期した剣閃となって、ネグザルツを上下から挟み込む。
 偽太陽剣・蛟(ミズチ)。
 
 この業の要義は攻撃ではなく、相手の回避方向を限定することにある。すなわち、左右いずれかに回避した時点で二の太刀で斬られることが確定してしまう。
 それを防ぐためには回避ではなく防御を行う必要がある。しかしネグザルツの太陽剣は一振りのみ。左右から同時に仕掛けてくる偽太陽剣に同時に応じることはできない。左右いずれかを受けた時点でもう片方の剣閃で斬り裂かれるだろう。
 迫る剣閃が帯びた殺気が、装甲越しに竜骨(スパイン)を戦慄かせる。ネグザルツはその殺気に突き動かされるように――急加速した。
 瞬間、十字に交差した剣閃がネグザルツの尾部をえぐり取る――が、それだけに留まった。ネグザルツの急接近に間合いを潰されたレインディアは、太刀を戻す余裕がない。
 レインディアの懐に飛び込んだネグザルツの機首に、太陽剣の輝きが集中する。
 太陽剣・穿(ウガチ)。
 正確にレインディア本体を狙った必殺の一撃は、果たして弾かれた。レインディア本体に接続され、拡張された機体の一部となり自在に駆動する一対の追加装甲が折り重なるように瞬時に全面に移動、至近距離からのネグザルツの一撃を正面から防いだのだ。
 さらにレインディアは急速に機体を旋転、攻撃直後の硬直で動けないネグザルツに光翼を叩きつける。吹き飛ばされ制御を失ったネグザルツの未来位置には、すでにレインディアが放った粒子弾の弾幕が待っていた。
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初公開日: 2025年04月06日
最終更新日: 2025年04月07日
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