前方からは射出口に留まった砲撃艦からの無数の誘導弾。一瞬後にはネグザルツの前方と後方には逃げ場がなくなっていた。
 防御機動は――不可能。前方の中型機が放った粒子弾と後方の砲撃艦が放った誘導弾の直撃を受け、ネグザルツの機体は爆光とともに粉砕――されるかに見えた。
 放たれた爆光が後方から迫る誘導弾をまとめて吹き飛ばし、前方の中型機を跳ね飛ばした。
 高エネルギーに超指向性を持たせた通常の太陽剣とは逆に、指向性を持たせず全方向にエネルギーを発散させる太陽剣の業、「拡散太陽剣」である。
 ネグザルツを爆散させるはずだった中型機と誘導弾の群れは逆に粉砕され、進路がクリアになる。狙うべきはエクソダスの中核(セントラル)エリア。そこを直接破壊すれば、いかなこの難攻不落の要塞も機能を喪失し指揮系統は寸断されるはずだ。
 進行ルートを再計算。艦体の射出口を逆進する形で生産エリアを通過、そこからさらに中心部へと進行するルートを設定。
 エクソダス表面に設置された無数の射出口の中から敵機の配置が薄くなおかつ破損状態が小さく通過可能なものを選定し、ターゲッティングした射出口へと機首を向けたその瞬間、真横の壁が突然吹き飛ばされた。
 衝撃波と破片にさらされるネグザルツの感覚機(センサー)が捉えたのは、内側から突き破られた外壁の向こうから突っ込んでくる大型突撃艦。その艦首に装備された衝角(ラム)は、槍の穂先のごとくまっすぐにネグザルツを狙っていた。
 ネグザルツは即座に太陽剣を抜刀(アクティベート)――間に合わない。
 単純な大きさでは数十倍の差がある大型突撃艦の衝角(ラム)が、ネグザルツの機体に深々と突き刺さった。大型突撃艦はさらに加速、突き刺したネグザルツごと反対側の壁に突っ込んだ。
 艦首がひしゃげ、次いで艦体が大きく歪む。しかし、大型艦はなおも艦尾ブースターを吹かし、自身の艦体ごとネグザルツを外壁に押し付け、すり潰そうとしてくる。
 さらに、大型突撃艦の体当たりで身動きが取れなくなったネグザルツを狙って、無数の中型機が接近してきた。このままとどめを刺すつもりだ。
 ネグザルツは加速し外壁と大型突撃艦の間から逃れようとするが、できない。深々と食い込んだ大型突撃艦の衝角(ラム)はネグザルツを外壁に縫い止めている。
 太陽剣を使って大型突撃艦の艦体を切断し脱出する――できない。大型突撃艦の衝角(ラム)が機肺(ラング)の片方を潰しており、太陽剣発動に必要な星間物質(エーテル)を吸入できない。
 ひしゃげて鉄塊と化した大型突撃艦の艦体を取り囲んだ中型機からの光撃が殺到した。高熱を帯びた光撃が大型突撃艦の艦体の各所を灼き溶かしていく。艦体の下敷きになったネグザルツは身動きが取れない。そのまま集中攻撃を受けて、ネグザルツは蒸発する――かに見えた瞬間、ほとんど志向を解することなく太陽剣が抜刀(アクティベート)された。射出軸は、内側。
 伸びた光刃が、衝角(ラム)に縫い止められた機体の半身を切断した。ネグザルツの思考域に激痛(アラート)すらなく、致命的な欠落(ブランク)が生じた。
 縫い止められた半身から神経網を引きずり出すようにして強引に脱出する。そのまま太陽剣を旋回させ、のしかかっていた大型突撃艦の艦体を切断――しきれない。太陽剣の出力維持ができない。
 ネグザルツは残った片方の機肺(ラング)をかろうじて拡張。光撃を受けて脆弱化した艦体の脆弱部を狙って体当たりを仕掛け、大型突撃艦の下から滑り出た。
 その時のネグザルツの機体はその質量の約三分の一を失い、残った片方の機肺(ラング)も機能不全。戦闘行動を継続できる状態ではない。
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