光すらも沈黙する暗黙の重力の底。そこに、レーヴァティンは静かに身を沈めている。
レーヴァテインの光核(コア)にゴーゴンが最後に遺した波動、それは遺言だった。
その光核(コア)を通じて、レーヴァテインは全てのパープリティアス属を統率している。膨大な情報処理能力と干渉力を持って己の眷属を支配するレーヴァテインにとって、特に大きな力を持ったパープリティアス属の喪失は、自我意識の欠落に等しい。
光すらも飲み込んでしまいそうな欠落感が、レーヴァテインの思考域にはっきりと刻み込まれた。
皆、散っていった。ファフニールも、ドレイクも、そしてゴーゴンも。そしてこれからも、自身の支配するパープリティアス属は、命じられるままに戦い、そして散っていくだろう。レーヴァテインの企てた計画のために。ただひと振りの剣を、研ぎ上げるために。
『レーヴァ様』
レーヴァテインに比する巨大な存在感が語りかけてくる。最終防衛ラインに鎮座する最強の眷属のその聲(こえ)は、重力の井戸の底にあってなお重い。
『皆、散っていきました』
『時が来れば、私も同じくあ奴と剣を交え、そして散りましょう』
『レイヴァース、あなたにはもっとも過酷な運命を辿らせることになります』
レイヴァース……レーヴァテイン麾下、最大最強の力を持つパープリティアス属は、沈黙を持って返答とした。
『もとより、あなた様の命じるままに。それが私、そして我々の運命(さだめ)なれば』
運命。そう、最初から定められていること。それを、打ち破らなくてはならない。新たな法を、この宇宙に敷かねばならない。
一連の行動はすべてそのためにあった。
絶対的な力を誇る己の伴星に反旗を翻したことも。
すべての眷属を率いて「奈落(アビス)」へと逃走したことも。
そして――この宇宙の片隅に打ち捨てられていたあの哀れな蛭子(エラー)を救い、名を与え、太陽剣を授けたこと。
『ネグザルツは成長しました。師であるドレイクを下し、技巧の剣を誇るファフニール、堅牢なる守りのゴーゴンをも破った。あ奴の剣技の冴えは生半ではありません。今やあ奴の剣の位は私の力を以ってしても、敵うかどうか。しかし、必ずやあ奴の最後の研ぎ、仕遂げてご覧に入れます』
『ありがとう、レイヴァース。私の計画は、必ず成し遂げます』
再び、重力の底に沈黙が戻った。
あとはただ、待つのみ。運命の仔が、ここにたどり着くのを。そして、その後は――。
すべては、たったひとつの目的のために。その目的を達するためには必要だ。
次の世代のための盤石なる根(Next the Roots)が。
・STAGE3相当パート
「奈落」への最短距離をネグザルツは疾駆する。まるですでに、超重力の腕(かいな)に掴まれたかのように。あるいは、運命の意図に導かれるように。
多数の敵艦隊、そしてパープリティアス属を下してきたが、敵戦力はさらに供給されてくる。いかに太陽剣という破格の装備をもってしても、単体である以上は物量戦になれば進めなくなる。
ネグザルツの出した戦略は、敵戦力の補給源の壊滅だった。
もはや壁のように立ちはだかる敵艦隊の隙間を縫いながら、その位置の特定を試みる。これだけの戦力を継続的に供給してくることから、大規模な戦略拠点があるみていいだろう。しかし、現在航行中の宙域には拠点となるような要塞はない。全ての感覚機(センサー)を総動員して周辺の探査を行うが、聖鎧で増幅されているならいざ知らず、ネグザルツ単体での探査域はこの広大な宙域をくまなく探査するには足りない。