[第二話]
さて、久しぶりにここへ来たわけだし、初対面の人もいるはずだ。
南井と別れ、病棟へ向かう。
不意に背後に気配が現れた。振り向くと、やたら前髪の長い男性。
前々から通院している『柘榴』だ。本名は決して教えてくれない。
『食人病』という、人肉からしか栄養を摂取できない奇病の患者だ。
「「こんにちは。半年ぶり?」」
「…6ヶ月と3日ぶりだ」
「「今日はお仕事?それとも診察?」」
「仕事」
なるほど、それでよく喋るのか。普段はコミュニケーション能力がないくせに。
「「そういえば、お仕事で会ったりしなかったよね。もしかして、共闘NG?」」
「知るか」
ざくざくと、大きめの歩幅で去っていってしまった。
嫌われている、かもしれない。
病棟に着くと、弾けるような笑い声が聞こえた。
聞き覚えのない声。新しい患者なのだろう。
病室を覗くと、この病院には珍しい長髪が目に入った。
長髪の女性が、新しい患者。
もう1人の、茶髪で童顔の男は、一色黎人。『超人病』という、どんな怪我も病気も一瞬で完治する、“ヒーロー“と同じような奇病の患者だ。
「あ、双子ちゃん?」
「3年くらい前からこの病院でお仕事してる子たちだよ。明里美衣ちゃんと、明里美来ちゃん」
「医学だ!」
謎のセリフを吐いて、“ご新規さん“は朗らかに自己紹介をした。
「私は九重雪葉。1週間前に入院したばっかりなんだ〜。よろしくね!」
よし、この人のあだ名は『雪のお姉さん』だ。
妹の了承なしに決定したが、私たちはお互いの考えていることくらい手に取るようにわかるし、合わせてくれるだろう。
別に、私たちだって無意識的にステレオ効果的な発言をしているわけじゃないのだ。
閑話休題。
「「色のお兄さん、雪のお姉さんの病気ってなに?」」
「えっとね…『無記憶病』って言って、24時間経つと記憶がリセットされる病気なんだって」
「だから、忘れないようにしたいことは文字にしとくの」
差し出された日記には、びっしりと小さな文字が書かれている。
ちょっと、狂気を感じた気がした。
ーーー
こんにちは
ありがとうございます!
えっ、すごく嬉しい!!
双子ちゃんは、個人的にオリキャラの中で一番好きなんです
双子って、いいですよね…
特に、喋るタイミングや言ってることが全く同じなのが好き…(実際にはありえないし)
実際にやられると、ちょっと、水中にいる感じがしてビビる…
うん。『そっくり!』って言うと怒る双子もいる。
あ〜
自分も、妹と似てる!って言われるの嫌です…
二卵性だと、双子っていうよりは姉妹とか兄弟って感じのタイプもありますよね
ネタがつきそうなので、今日はここまで
適当に雑談しましょう!
はい
双子ちゃんの主観的には、ゴミみたいなちみっちゃい文字がびっしり書かれてたら狂気なんでしょうね
いえいえ
九重姉さんの特技は速記ですし、多少は簡略化した文字でしょうね
小学校で『カタカナかひらがなで書け!』って言われました
でも、プライドが許さない。
それを鉛筆とかで塗りつぶした跡、後々見て後悔します…
ありがとうございました!
こんにちは!
今日はここまでにします
見てくださってありがとうございました!またお会いしましょう!!
ーーー
[雪]
今日は新月。
雪が降っているおかげで、田舎のここでも外は明るい。
明日、大雪警報で学校休みにならないかな。
雪かき当番だから、たっぷり積もった雪をかかなければいけない。正直、面倒くさい。
クラスごとの当番の上、休んだら確実にバレる。誰かに代わってもらいたい。
一番いいのは休校だけど。
天気予報を眺めながらぼーっとしていると、電話がかかってきた。
友人からだ。
もう夜遅いし、寝ていたってことにしよう。
しかし、電話は鳴り止まない。
うるさい。こんな夜中に電話をしつこくかけてくるなんて、常識がないの?
苛々しながらスマホの電源をおとそうとして、ふと名案を思い立った。
翌日、学校は休校になった。