二次創作ファンアート執筆部屋
ローコラマンスリーお題『鼓動』で一本
すごくノープラン 短めでないと多分間に合わん
ずっとローくん視点ばかりなのでコラさん視点で書きたい
どきどきときめき系は最近書きすぎ、かといってシリアスも三本前に書いたのでほのぼのしっとり系を書きたい
味変したい コラさんのほのかなときめきのはなしにする? そんなに劇的ではない、けれどたしかな脈拍の上昇
コラさんからのローくんに対する、いとおしいこどもへ向けるほほえましいまなざしから、この子は、いや、このひとは、真にこの身を想って、しあわせたれと、そしてともにしあわせでありたいと思っている、ということを理解して、咀嚼して腹落ちさせて、そこからすこしずつ執着がにじんでいく過程がやっぱりローコラのひとつのミソであると思っているので
そもそもコラさん自身なにかに執着をするという感覚は、いや、結構あって、たとえばドフラミンゴへの愛憎だとか(憎しみと言うよりは怨恨と思っている、しかしそこに愛がゼロであったかと思うとそうではなく、ほんとうなら絶縁して二度と顔も見たくないとしても良かっただろうに、怪物と吐き捨てつつ止めなければと思っていたのは結局放っておけなかったんだろうなと、いろんな意味で 撃たせるなと言いながら肉親を撃てるのがドフラミンゴで、止めると言いながら引鉄を引けなかったのがロシナンテ 非情と慈愛 覚悟と不断 )ローくんのためにすべてを投げうったことだとか、なにかへの執着(……というより情け深さ)をものすごく持ちやすいんだけど、そこに自分が含まれないというか、そのためにかなぐり捨てられるものいちばん最後に自分も含められてしまうというか
怪文書ここまで
灯火が揺れている。
リビングの食卓の上、ちいさなランタン型のキャンドルに灯ったそれは、ふよふよと暖房の流れを感じ取っては揺れている。ほのかにやわらかな花の香りが漂ってくることからして、これはいわゆるアロマキャンドルというものなのだろう。つい半月前、ともに住む彼が微妙な顔をして持って帰ってきたこれは、どうやら彼の前世からの友たちにもらったものらしい。キャプテン、おれたちからのバレンタインです、と、冗談半分でじゃれつきながら敬愛する彼に贈り物をしているあの子らの姿を想像するだにおかしくて、ため息をつきつつまんざらでもなさそうに箱を開ける彼を茶化そうとしていたおれは、出てきた洒落っ気のかたまりのようなそれに、お、おお、と、彼ともども反応に困ってしまったのだったか。
いったいどういう生活をしていると思われているのか、彼とおれがひとつ屋根の下で過ごしているそこに、このいかにもムーディーなキャンドルが似つかわしいと、本気でそう思われているとしたらずいぶんな買いかぶりである。おれがドジをしでかさないよう、ちゃんと安全そうなものが選ばれているという明瞭な気遣いがまたちぐはぐで、ここまで来ると、いったいおまえは普段どんな話をしているのか、と彼に問いたくもなる。
とはいえ、せっかくの贈り物であったものだから、その日こそ試しに火をつけて、おお、と数分見つめては、へえ、いいなあ、うん、などと感想を述べあって早々に吹き消したのだ。それからというもの、なんとはなしに無骨な机上の真ん中に飾ったままであったそれを、なにを思ったか、彼がふと、かぱりと蓋を開けて灯したのが、先ほどのことである。
「なんだ、ディナーはもう終わったぜ」
「そんなんじゃあねえ」
腹に収めたばかりの魚の煮つけを思い出しながらにやりとわらってやれば、彼が辟易としたように顔をしかめて台所へと消えていく。なにか酒でも持ってくるのだろうか、と首をひねっては、暗に座れと言われているような気がして、ソファではなく食卓の椅子に腰掛けて待つ。予想は外れ、しかし待っていたのは正解であったらしい。戻ってきた彼が両の手にそれぞれ持っていたのは、湯気を立てた紅茶であった。ソーサーにはひと粒ずつ、キャンディ包みの安いチョコレートがころりと鎮座していて、ああ、それもまた、二週間前におれが彼に、くるしまぎれによこしてしまったものであった。
バレンタイン、など、すっかりわすれていたのだ。いや、自分にはまったく関係のない行事だと、意識から完全に外してしまっていた、と言ったほうが正確かもしれない。今世でも父はよく母に花を贈っていたし、母は母でチョコレート菓子を作っていたが、おれはといえば、彼と再会を果たすまで、時折菓子をもらいはすれど、大抵数ヶ月でおれの荒気なさや無神経、そしてなにより幾多ものドジに音を上げて離れていく人間がほとんどであった。来る者拒まずをどうにかすればどうだ、と、頼んでもいないのに母に相談されたらしい兄がふらりとこの身の前に姿を現しては、それだけを言い置いて去っていったこともある。癪に障りながらも、母上のおねがいにはいつまでたっても弱い兄の姿が愉快で、それならばと受け取ること自体をやめたものだから、余計に縁遠いものとなってしまったのだ。
彗星のようにまばゆい彼の情熱にとかされるまま、契りを交わしてはじめての冬。ひょっとしたら恋人である彼も例外なく、この日をたのしみにしていたのではないか、と思い当たったのはほとんどの菓子屋も閉まった帰り際のことで、泡を食って購入したのがチョコレートの徳用袋であった。帰宅して早々、急に押し寄せた冷静に、これはないだろう、と頭を抱えていた、そこにあの、小洒落た袋を持った彼が帰ってきたものだから、一瞬だけ心臓が裏返りそうになったのは言うまでもない。
(『……コラさん、それ、溶けるんじゃねえか』)
ずっと、そんなに握ってたら。彼の友人のおかしな贈り物のおかげで緊張が緩んだ、そこへ、言い出しづらそうに口を開いた彼の指摘に、はっと気づけばチョコレートの詰まった袋が手に潰されている。正直に言おうか言わまいか、迷うこの目はきっと、なによりも克明に語っていたのだろう。もしかして、と、彼が声を浮かせた、それと同時に、おれはごめん、と謝っていた。
(『また、ちゃんとしたやつ、買ってくるから』)
これしか、見つけられなくて。思い返すもなさけない台詞に、ああ、あのときの彼は、よくあきれかえらなかったものだといまでも思う。差し出す袋を受け取りつつ、いや、それを言うならおれなんか、なにも用意してねえが、と、いっそ困惑したように袋の印刷を読んだ彼は、五十個入り、の文字を目にした瞬間、ふは、と、わらいだしてくれたのだ。
(『どれだけ食わせる気だよ!』)
これ以上いらねえよ。愉しげに、くしゃりとその硬い顔を崩して、この手を取ってくれた彼は、むしろ、いっしょに食おう、と、いかにもいとおしそうに、黄金色の目を細めてくれたのだったか。
幸か不幸か、彼もまたおれと同じく、件の行事にはさして興味がなかったのだろう。あとで彼の妹御に聞いたところによれば、学生時代は毎年方々から差し出される贈り物を鬱陶しげに突っぱねていたというのだから贅沢なものである。さすがはロー、おれとは違うな、と唸るおれに、おにいさまは一度決めたらまっしぐらだからね、と、おかしそうにわらう妹御の目が、いやにおれを見つめていたような気がするが、いまはそんなことはどうでもいい。
(……男前になっちまって)
紅茶を机上に置き、まだ冷めてないからな、と、おれには念を押して自分はさっさと熱々に口をつける彼の、精悍な横顔をながめる。むかしから鼻っ柱の強い子ではあったが、こうしてすっかりおとなびてしまえば、それは確固たる意志として彼を輝かせている。願うように、祈るように、この心身の安寧のそばに在りたいと、いつかの面影を残すかんばせで切々と乞われ、渋った末にうなずいたのは、おれの、あいかわらず何者をも拒まぬ姿勢のせい、などでは決してなかった。かつてのいとし子が、すっかりおれを超えたようなつよさを身にまとって、いっそくるしくもなってしまうような切望を、なんの外連もなく、まっすぐにぶつけてくる。
彼はもう、こどもではなかった。おれよりももっとずっと、世界を見た、自由なひとりの人間であった。そして、そのうえでなお、おれに手を取ってほしいと願う、たったひとりの、おれのいとしいひとであった。
灯火に、うすらと照らされた彼の面貌が、こちらを振り返る。跳ねがちな黒髪の下、金のひとみがかがようのは、揺らめく炎のせいだろうか。ひとよりも遅く脈打つ心臓が、その歩みをすこし、早めていく。
(……ああ、でも、いやな感じじゃあねえ)
緊張に、切迫に、嫌悪に、苦痛に、煩悶に。いつだってこの胸が重くなるのは、ろくでもないときばかりであった。口許が緩む。彼が、怪訝に眉を寄せた。
「なんだ、コラさ……」
ん。そっと、ひとつ、くちづけてやれば、これまで幾度も重ねたというのに、瞠目した彼は見事にうろたえるのだからおもしろい。なんにでも意図を見出そうとするのは彼のわるいくせだ。喉を鳴らし、包みをほどいたチョコレートをつまんで、その口に放り込んでやる。目を白黒させてむぐ、と、素直に咀嚼した彼は、ふと、視線をキャンドルへと向けては、またこちらを見上げるのだ。
「……そんな気分になったのか?」
「え?」
「いや……」
なんでもない。ごまかすにはあまりにも下手な台詞に、なんだよ、と頬を指の背でかまえば、首をよじっては逃げた彼が、自分のチョコレートをほどく。そうして、ん、と、ややもぶっきらぼうに、この口許に差し出してくれる、そのあたたかさがまた、じわりと胸に染み込んでいくのだ。打つ鐘の軽やかさに、むずむずとくすぐったい口を開ける。彼のまなざしが、は、と、息を呑む。
押し込まれる甘味とともにとけてしまいそうだなどと、言うより前に、鮮烈なキスをお見舞いされた。
ときめき
2025.02.28