そんなことをやっている間にゲーム開始がアナウンスされ、資料を手渡された参加者がゲームフロア内に入っていく。
 部長はそれを見送ると、入口近くの壁のあたりにしゃがみ込んだ。
「部長、何探してるんです?」
 背中からかかる後輩の声に、ポケットから手紙のメモを取り出してひらひら振ってみせた。
「これまでクリアしてきたルートの特徴やSNSで飛び交ってる噂をまとめてみたんだが、どうやらこのへんに……うわっ!?」
 突然の浮遊感。
 まるでいきなり足元に落とし穴が空いたかのようにバランスを崩す。一瞬、上下の方向感覚がわからなくなった。反射的に丸めた背中が打ち付けられたのはフローリングの床ではなく……かかすかにカビの匂いがする黄色いカーペットの上。
「え……あ……?」
 何が起こったのか全くわからない頭で周囲を見回す。
 床は黄色、壁も黄色、天井も黄色。天井にはやけに明度の高い蛍光灯が、等間隔で並んでいる。
 今までいたはずのリアル脱出ゲームの会場とは明らかに違う場所。そしてもしかしたら……自分がさっきまでいた世界とは明らかに違う世界。
 前を見ると、不自然に壁で仕切られた黄色の空間が暗がりに飲み込まれている。
 後ろを見ると、不自然に壁で仕切られた黄色の空間が暗がりに飲み込まれている。
 右も、左も、黄色い空間が無限とも思える連なりを構成している。
 何が起こったのか全くわからない。ここがどこなのかもまったくわからない。しかし部長は、「ここにい続けてはいけない」という本能に突き動かされるようにふらつきながらも立ち上がり、スマートフォンを取り出す。時間は13:47。部長は歩き始めた。
 外部に連絡を取るのは5回目で諦めた。通話は繋がらず、インターネットもダメ。バッテリーがまだ50%以上残っているのが幸いといえば幸いだ。
 どのくらい歩き続けただろうか。時間を確認すると15:03。もう2時間近くこの奇妙な空間にいることになる。散々歩き回ったが、途中で途切れたはしご、意味不明な落書き、行き止まりは見つかったが肝心の出口は見つからなかった。もう自分がどこにいるのかもわからない。
 歩き疲れて、カーペットの上に腰を下ろす。天井の蛍光灯の光にさえ疲労感を刺激されるようで両手で顔を覆った。
 2時間歩き回ってこの空間についてわかったことは多くはない。自分以外の人間はいない、ドアなどの類はなくひたすら黄色い空間が広がっている――そのくらいだ。
 バッテリーが減っているスマートフォンを取り出し、電話帳を呼び出す。「後輩くん」と登録した番号。無駄とはわかっていても、発信アイコンをタップせずにはいられなかった。
 祈るような気持ちと繋がらないことはわかりきっているという諦観を同時に抱えながらアイコンをタップ。
 
 
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08:01
野崎抹茶ラテ
こんにちは^^
08:50
野崎抹茶ラテ
後輩への誕プレですね
09:46
人形使い
こんにちは。配信を見てくださりありがとうございます。
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後輩への誕生日プレゼントSSを書いていきます。
初公開日: 2025年02月07日
最終更新日: 2025年02月07日
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