5年前にマサラ上映を企画されながら残念ながら台風のために中止になってしまった「ヘヴィ・トリップ 俺たち崖っぷち北欧メタル!」。
 しかし、その火は消えてはいなかった。
 5年の時を超え、奴らがパワーアップして帰って来る!
 『ヘヴィ・トリップ』連続痢便痔怨閻上映“場末シアター・喉仏粉砕・反インテリ・絶叫推進ハードマサラ上映!!
 なんだよそれ。
 といった感じのヤケクソ気味なタイトルで、新作である「ヘヴィ・トリップⅡ 俺たち北欧メタル危機一髪!」も合わせてのハードマサラ上映となりました。
 客席の埋まり具合は3分の2といった感じでしたが、客層が全体的にこう、妙に金気が多かったり妙に刺々しい(物理的な意味で)人たちが多かったのが印象的でしたね。
 そして今回も素敵なお土産を頂きました。
 毎度のことながらお土産の完成度が高い。
 そして開場時間になったので劇場へ。恒例の上映前スクリーン映像はこんな感じ。
 見よこの見てるだけで偏差値が2000くらい下がりそうな字面。実に塚口。
 そして塚口では上映前に上映作品のBGMや主題歌が流れてるんですが、入場してからずーっと工事現場でおっさんがえづいてるような騒音がぶちまけられてるんですが……。
 なんだか己を取り巻く環境全てが知性という知性をガリガリ削っていく中、最高にクレイジーなあの男が登場だ!
 ヴォオオオオオオオオ!!というデスボイスとともに登場した我らが戸村支配人ことシネマスター☆トムの姿に絶叫を持って返す塚口の民。
 ちなみに今回の戸村支配人の姿がどんなものであったかは必見なので公式twitterを見よ。塚口サンサン劇場という映画館がどんな場所なのかが端的にわかります。
 客席から突き上げられるメロイックサイン、打ち鳴らされる火薬銃とクラッカー、響くデスボイス。ここ本当に映画館?(いつもの)
 もはや完全に映画を見る態勢ではありませんがそれが塚口だもの。みつを。
 すでに熱狂の渦となったフロアで、まずは1作目「ヘヴィ・トリップ 俺たち崖っぷち北欧メタル!」開演!
 わたくし人形使いはⅠを見るのは3回目くらいなんですが、なんか本作、見れば見るほどまっとうな青春映画に見えてくるんですがいよいよ脳がおかしくなったんでしょうか。まあ最終的に収監されてるけどな……。いやこの作品を青春物語として認識してしまうとなんか負けた気がする……。
 でもまあこうして改めて見てみると実に青春なんですよね。フィンランドの片田舎でメタルに打ち込む青年たち、突然のチャンス、田舎なので速攻で広がる噂話、初舞台での挫折などなど、やってることはかなりアレというか「病院から患者を誘拐する」は明確に犯罪行為で完全アウトなんですがそれでも応援したくなるトゥロたちの姿に観客席から上がる応援とメロイックサインはここでしか見られない光景でした。まあ塚口の応援上映は全体的にここでしか見られないというかここでしかやっっちゃいけない光景ばっかりなんですが。
 塚口の応援上映の楽しみはたくさんありますが、個人的に初マサラ・初応援上映作品での非常に大きな楽しみなのが「ここでこれやりたい!」をやること。
 もちろん、マサラ上映・応援上映の際に戸村支配人が毎回言っているように、これらのイベントはあくまで「映画鑑賞+α」。なので独りよがりに騒ぐのはマナーとしてNGです。
 そのルールとマナーに反しない範疇で自分がやりたいことをやる。それがマサラの民の嗜み。
 というわけで今回の初ハードマサラ上映でやりたかった「トゥロたちの旅立ちを見送るシーンでロットヴォネンの父ちゃんが怪我してた右手の包帯を外すと中指と薬指が飛んでてメロイックサインになってるという最高のシーンでメロイックサインをブチ上げる」ができたのでもう悔いはない。絶頂してましたね正直。もう最高。
 しかしこれで満足してたらダメです。なぜなら劇場側もなんかしてくるに決まってるから。劇場支配人が白塗りで登壇してデスボを轟かせるような映画館相手に常識は通用しません。ほら案の定カンオケが来たぞおおおおおお!!!
 世に映画館数あれど、「上映中にカンオケをわっしょいわっしょいする映画館」なんて天の川銀河じゅう探してもここだけですよ。もう大好き。なんならあのカンオケ、中に戸村支配人が入ってても許されたと思う。
 といった感じで全体的におかしい感じのハードマサラ上映、大盛りあがりでした。
 でもなにがいちばんおかしいってこのあともう1本あるってことなんですよね。正気か?
 なお休憩時間は10分です。
 ちなみにこれが休憩時間中のスクリーン。
 なんかもう一種のカルト宗教の様相を呈しています。
 そして10分後、早々に狂乱のフェス第2弾開始ッ!
 前述の通りわたくし人形使いはⅡの方は初見なのであらすじを。
 前回の騒ぎのあと、我らがインペイルド・レクタムの面々は無事収監されていましたが獄中でもヤンチャしほうだいで相変わらず。
 そんなある日、刑務所を訪れた超大物プロデューサー・フィストからドイツで開催されるフェス、ヴァッケン・オープン・エアへの出演をオファーされます。喜ぶトゥロたちとは反対にパシことクシュトラックスは準備不足を理由に反対。というかそれ以前に投獄されてますがな。
 しかし、ギタリストのロットヴォネンのトナカイ粉砕場が地上げの危機にあっていることを知った面々は、賞金で地上げを阻止するために脱獄。一路ヴァッケンを目指します。インペイルド・レクタムの明日はどっちだ!
 音楽に限らず、クリエイターをテーマにした作品ではしばしば商業主義vsクリエイターという構図が見られますが本作の大筋もそれ。「インペイルド・レクタム」にオファーを出したプロデューサーは典型的な金の亡者であり、彼らが憧れていた大物メタルバンド「ブラッドモーター」はフィストと手を組んだことにより商業主義にすっかり溺れていました。では「インペイルド・レクタム」の面々はどうするのか。
 この商業主義vsクリエイターという根幹部分、かなり丁寧に描かれていたと思います。本作は一見おバカ映画に見えてそのへんは決して手を抜いていないというか、本作の馬鹿騒ぎ的な部分はすべてそうした商業主義への反発、反骨であると言えるでしょう。まあおバカな部分はちゃんとおバカなんですが……。
 有名になりたい、売れたいというのは当然のこと。ですがそのためには何を犠牲にしてもいいのか? 仲間を、プライドを売ってもいいのか? そういうところにまでしれっと踏み込んでるんですよね本作。
 でもそういう部分に踏み込みすぎるとかえって作品がウェットになりすぎるし、商業主義=悪・クリエイター=被害者みたいな方向に偏ってしまうと悪い意味でのプロジェクトXになりがち。そのへんのバランスもうまいこと取っていたと思います。
 「世界的に有名なバンドになりたい」というスケールの大きな、ソーシャルな目標のためにバンドメンバーとの軋轢が生まれ、最終的に離散してしまうレクタムの面々。しかし最終的に彼らは「仲間のために」「自分のために」というパーソナルな目標に立ち戻る。
 ここで初めて彼らは報われたと言えるでしょう。有名なバンドになるという形ではなく本来の自分に立ち戻るという形で報われるというのが実にいい。はたから見ればあのラストは「バンドとして成功する」ってラストではないんですよね。にも関わらずあれが、あれこそが彼らの「成功」であるという。
 このように本作、ただハイテンションなメタル・ムービ-ではないというところをしっかり見せてくれててよかった。
 そしてハードマサラ上映である今回、客席もそれに寄り添うような応援がされていたと感じました。
 本作は今さら言うまでもなく全編にわたって爆音!絶叫!重低音!といったノリの作品で客席からも爆音!絶叫!重低音!が響き渡るイベントでしたが、それだけかと問われればさにあらず。
 前述のとおり、本作ではバンド解散の危機に陥ったりプロデューサーという社会的地位の高い人物から軽く扱われるといったシリアスなシーンも数多くあります。そうしたシーンではそれまでの大騒ぎはなりを潜め、場内は静寂に満たされていました。このギャップよ。
 何度も書きますが「マサラ上映・応援上映は映画鑑賞+α」。あくまで映画鑑賞が主体です。わたくし人形使いはいわゆる「空気を読む」という言葉があまり好きではありません。しかし、今回のハードマサラ上映は騒ぐべきところでは思いっきり騒ぎ、静かにするべきところでは静かにするという実に空気の読めてたマサラ上映でした。
 まあそれはそれとしてカンオケわっしょいわっしょいはするんですけどね。まああれこそが今回のハードマサラ上映でいちばん空気読めてた行為だと言わざるを得ない。
 あとこれは言っておきたいんですがやはりパシことクシュトラックスが好き。脱獄中に1時間かけてメイクしてくるところとか客席から爆笑が上がっててもう大好き。
 そして基本的にあんまり感情的にならない彼ですが、あのメイクのせいでトゥロと離別したときの表情が明確に悲しそうに見えるんですよね。いちばんバンドのことを心配してたのも彼だったと思いますよ。いいやつだなあほんと。
 ……といった感じで、5年前にできなかったマサラ上映をサイヤ人のごとく超絶パワーアップで楽しめました。あと戸村支配人のメイクが気合い入りすぎててもう大好き。いっそのことあのアクスタとかTシャツとか作りませんか。
 
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塚口サンサン劇場「ヘヴィ・トリップⅠ・Ⅱ」連続ハードマサラ上映行”っ”て”き”ま”し”た”!
初公開日: 2025年01月25日
最終更新日: 2025年01月27日
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