ジョンケはあの赤い車のおじさんの正体を、まるで推理をしている探偵のように、淡々と明かしていった。
新人であるアントワーヌの立場として、ベテランであるジョンケを信じるべきか、それともこの話を疑うべきか、アントワーヌにはあのおじさんがとても父の脛をかじってばかりいるような、情けのない大人には見えなかったのだ。
自分を何度も助けてくれたあの人を、そうは思いたくなかった。
頭の中に記憶とともにあのおじさんに初めて会ったあの日からのすべてが、ムービーになって流れ出す。
気付くと、アントワーヌは声を出していた。
「そんなわけないです。・・・・・・そんなの嘘だ、」
「なんだ、まだそう思うか?」
「わかんないですよ、俺は。あの人のことはまったくわかりません。どんな性格でどんな人生を送られてきたのかなんて。でも俺はあの人に恩があるんです。尊敬してるから、信じることはしたくないです。」
「・・・・・・わかった、、気持ちはわかったよ。だけど勘違いしてないかな?」
「どういうことですか?」
サングラス越しでも伝わる熱い視線が、その特別な感情を伝えようとしているのがわかった。つばを飲み込む音が聞こえるほどの静寂が続いた後、ジョンケが慎重に口を開いた。
「クリスチャン・ディホールさんは、あるご病気を患っている。そしてここ最近、容体が悪いんだ。もしかしたら山場がまもなくかもわからない。」
「そんな・・・・・・・。」
「アントワーヌ、ステージに立ってくれ。今度のルイ・ウィートンさんが監督する劇はディホールさんが作った話で、最後の合作ともいわれている。主人公としてそのステージに立ってほしい。」