我ながらまた両極端な作品を見たな今日は。
というわけで今日見てきた1本目はこれ!
全米が吐いたその次は全世界が吐いた!
みんな大好きお茶目なピエロさんこと「アート・ザ・クラウン」が大暴れする「テリファー」シリーズもこれで3作目。エピソード0に当たる「テリファー0」は気がついたら上映が終わってしまってたので未見です。
本作は2作目「テリファー終わらない惨劇」の直接的な続編。前作の惨劇を生き残ったシエナとジョナサンは、惨劇の記憶を引きずりながらもなんとか社会復帰していました。病院から退院し、叔母の家で暮らすことになったシエナは、いとこのガビーと再会したことで次第に元気を取り戻していきます。
世間はクリスマスシーズン。ショッピングモールはクリスマス一色で沸き立っていました。そこに前作で死んだはずのアート・ザ・クラウンの姿が。クリスマスの幸せなひとときは、前作以上の惨劇に塗りつぶされる――!
といった感じの本作、レーティングは当然のR-18なのでもう全編これゲッチョゲチョのグッチャグチャのスプラッター。そういうのが好きな人には求めてるものを全部お出ししてくれる作品です。
優れた作品の条件はたくさんあると思いますが、わたくし人形使いはその中のひとつに「作品と観客の間に信頼がある」というのがあると思います。
どういうことかというと、観客が求めているものをしっかり出してくれる作品、出してる看板通りのメニューを出してくれる咲くひんはいい作品ということ。
ラーメン屋の看板を出してる店に入ってラーメンを注文したらちゃんとラーメンが出てくる作品は信頼できます。勘違いされがちなことですがラーメン屋の看板出しといて自転車を出すのは「意外性」ではなく「観客に対する裏切り」です。
しかるに本作は予想された惨劇は全部起こります。ここでいっちょチェーンソーがほしい! はいチェーンソーお待ち! ここでひとつ爆弾頼むよ! へい爆弾一丁! いちゃついてるカップルがいたら惨殺されるのはもはや法的義務! ってなもんでとてもレスポンスがいい。焦らしておいて結局出さないなんて出し惜しみは一切なし。R-18なのでなんもかんもおっぴろげなゴアシーンには爽快感すら覚えます。「陰惨」という言葉がありますが、本作のゴアシーンは「惨」ではあっても「陰」ではない印象です。
本作の主人公たるアート・ザ・クラウンは実にいいキャラしてます。ピエロの系譜のキャラなのでその表情や仕草はバリエーション豊かで滑稽でコミカルなんですが、一切声を発さないというのが独特の不気味さと異質感を醸し出しててこれまでにないキャラです。ピエロなのでハロウィンとかクリスマスとかの季節のイベントに合うのも強い。本作も続きがある感じだったのでこれからの活躍に期待したいですね。
そして彼のDIY精神あふれる殺しの業(アート)も変わらず冴え渡ってます。特にクリスマスがテーマなら絶対にやってほしいクリスマスツリーの飾りつけもばっちり。リースの代わりに腸を巻き、てっぺんの星には生首というコーディネイトは王道で素晴らしい。前作ですっかりパートナーとなったヴィクトリアとのラブラブアート(血文字)も必見です。
まあ本作は言ってしまえば非常に悪趣味なスプラッタームービーなわけですが、その惨劇の中でもアート・ザ・クラウンが見せる不気味な愛嬌と、シエナに対してだけ見せる本物の憎悪が目立つ良作ですので、スプラッターが平気な人は見ておいて損はない作品と言えるでしょう。
しばらく時間をおいて今度は一見真逆のこの作品。
プイプイかわいいモルカーと人間の愚かさに鋭く切り込んだ作風でみんなのハートを虜にした「PUIPUIモルカー」、その劇場版作品第2弾が登場!
今回はおなじみの実写フェルトではなくCGアニメ+声付きという今までにない要素を追加してたので、おなじみのスタイルから大きく変わった様式になってます。
そのためどうなるか不安でしたが、いざ見てみると
「個」の剥奪! 均一化される個性! AIの暴走! 「よりよい社会」という幻想! その幻想に気づかず踊る人間の愚かさ!
といった感じで完全に暗黒SFじゃねーかこれ!!
モルカーの映画を見に行ったら攻殻機動隊が始まった感じでした。意味がわかりません。大塚明夫さん出てるしな。
というかこの絵面から大塚さんの激シブ声が聞こえてくるのがもう面白いのでずるい。いやこれ実質攻殻機動隊だろどう考えても……。
モルカーたちの暮らすモルシティ。しかし近年、モルカーの燃料であるキャベツの不足と価格高騰、しばしばドライバーの言う事を効かなくなることによる交通トラブルなどが大きな社会問題となっていました。
そこで登場したのがAI(あい)モルカー。大量のキャベツを必要とせず、自動運転で安全に運転できるということで多くのドライバーがAIモルカーに乗り換えていきます。そんな折、ポテトたちは謎のAIモルカー集団に遭遇。AIモルカー集団に追われていたのは、同じくAIモルカーの「カノン」でした。
両者のカーチェイスに巻き込まれたポテトたちを救ったのは大塚明夫ボイスの凄腕のドライバー。彼はかつてともに暮らしていたモルカー「ドッジ」の行方を探しているとのこと。かくしてポテトたちはカノンのAI機能を頼りにドッジ捜索の旅に出ます。しかし、その旅の過程でポテトたちは、人類の愚かさが作り上げた強大な過ちと直面することになるのでした――。
まず言いたいんですが交通インフラをモルモットに任すな。
あの世界の交通インフラ、どう考えても完全崩壊してるだろ。加えてパトカーや救急車といった緊急車両までモルモットにしてるのでもう完全にダメ。
そして冒頭の謎のAIモルカー集団とカノンのカーチェイス、あれで「シン・仮面ライダー」の群生相バッタオーグを思い出さなかった人はいるまい。
本作はTVシリーズで登場したたくさんのキャラクターとモルカーたちが登場するオールスター感が楽しめる作品となっていますが、そんなお祭り気分を完全にふっとばすほどの暗黒SF成分が見るものの脳を打ちのめします。
AIモルカーを生産していたベンチャー企業、メニメニアイズカンパニーの「楽園を夢想する人類が作り出していた地獄」感がどう考えてもこの絵面の作品でやることではない。
「よりよい社会のために」をスローガンにAIモルカーを開発してきたメニメニアイズカンパニーですが、その実体はモルカーを捕獲してAIモルカーに換装していたというのがまず地獄。
モルカー放映当時は暗黒SF妄想大好きっ子たちの間で「モルカー工場」「モルカー廃車場」といったあまりにも不穏なワードが飛び交っていましたが、出てしまいましたねモルカー工場。しかもその行程というのが、モルカーたちを個性付けていた各種パーツを排除して同一規格のパーツを取り付けるというそういうのが好きな人にはたまらないもの。「個」の剥奪と均一化ですよ。どう考えてもモルカーでやることじゃないだろこれ。子どもが見たら泣くぞ。
加えてこのメニメニアイズカンパニー社のCEOと社員の軽薄な陽気さがまた本作の人類は愚かレベルを格段に向上させてるんですよね。彼らは自分たちがやっていることが「よりよい社会のために」なると信じて疑わないし、決して悪人ではない。だからこそあまりにも愚かという……。
終盤、メニメニアイズカンパニーはAIモルカーのさらなる発展のために新たな製品を発表します。「スカイエンジェル」と名付けられたその製品の威容よ。エヴァでやれ。
明らかにクリオネをモデルとしたであろうその姿は、たしかにある種の希望や神聖さを感じさせるデザインとなっています。デジタルの笑顔を浮かべた天使には、しかし最後の重要パーツである「ココロカプセル」=魂が入っていませんでした。魂なき天使はそのまま起動され、入力された最優先プロトコルである「よりよい社会のために」を実現しようとします。
結果、スカイエンジェルが導き出した回答は「人類の回収」。
すなわち「健全なる人類社会の実現のために必要なのは人類の排除」という最終結論! どう見ても暗黒SFですありがとうございました!
この辺はなんかもう見ててむしろテンション上がっちゃいましたね。なんでモルカーでこれやるの? 俺はなにを見せられてるの?
このスカイエンジェルのデザインがまた恐ろしさをはらんでるんだよな。妖精を思わせる姿からクリオネよろしく頭が割れて、現れた触手で人間を片っ端から捕獲していく。だから泣くって子どもが。
スカイエンジェルは、人間を回収するためにより肥大化しなくてはいけない→ボディの材料としてモルカーを捕獲して肥大化→さらに多くの人間を回収というルーチンを繰り返し、際限なく肥大化していきます。
そしてこの大量の人類を抱えた恐怖の天使が最後に目指す場所として選んだのは、モルシティでも月でもなく……「てんごく」。だからエヴァでやれ。
なんなんだよこの展開。わたくし人形使いはもうこの辺でボーゼンとなってました。なにを見せられてるの俺は? これホントにモルカーなの?
無数の人間とモルカーの魂を抱えて天に至ろうとする巨大な天使を地上に引き留めようと奮闘するポテトたち。もはや大塚明夫ボイスだけが頼りです。
そして、バッテリーが切れかけたカノンの決死の攻撃! パーツが割れ、その下から現れた素顔は……! そう、長い間姿を消していたドッジだったのです! だからこれモルカーでやる展開じゃないだろ。
この「天を目指す天使」と「それを止めようとする地上のもの」という構図、もはやある種の宗教画のような神聖さを感じました。モルカーなのに……。
かくしてモルカーたちはスカイエンジェルを止めることに成功。ドッジもドライバーとの再会を喜びます。そのいっぽうで、「カノン」と呼ばれていたAIモルカーが喜びのうちに消えていく描写がまた哀しい……。というかここで「カノン」って名前の意味を見せつける演出ずるいだろ……。
そしてラスト、地上に撒き散らされたAIモルカー用のタブレットからは作物の芽が吹き、地上は豊かな緑に包まれます。そう、人は結局大地から離れては生きていけないのですってラピュタで言ってたしな……。
といった感じでなんかもう意味がわかりません。なんでモルカーでこんな重厚なドラマを見せつけられなくちゃならんのだ……。サイゼリアに入ったらメニューが全部二郎系だったような気分で映画館を後にするわたくしでした。
茫然自失だったので気がついたらパンフも買ってたんですが、パンフの見た目がキラキラポップなのがまたある種の狂気を感じずにはいられません。
あ、あと続編決定だそうなので今から心の準備をしておこうと思います。人類は愚か!(合言葉)