人は誰しもその原罪によってその肉体という軛に縛られています。
わたくし人形使いも決して消えない罪を背負っています。その罪とはSF好きを自認しておきながらインターステラーをまだ見てなかったということ。
この罪はあまりにも重く、学生なら即刻三者面談、社会人なら良くて始末書、下手すれば懲戒免職すらありえるほどの重罪。
というわけでこの罪を濯ぎ来世での幸福を得るために、今回のリバイバル上映の機会に見てくることにしました。
アマプラで配信されてたので途中までは見たんですが、自宅で長時間の映画を見るとなかなか集中できないのとやはり映画館で見てみたいということで途中までしか見てませんでした。
リバイバル上映の報を聞いて調べてみたらTOHOシネマズなんばで上映するらしいので、久しぶりになんばに行ってきました。
そういやTOHOシネマズは梅田ばっかり行ってますが別になんばに行ってもいいんだよな。
舞台は気候変動で作物が育たなくなってしまった地球。年々生産できる作物が減っていく中、数少なくなった農業を営んでいる人間のひとりである元パイロットのクーパーは日常的に砂嵐が襲ってくる中ほそぼそと生活を続けていました。
そんな中、クーパーの娘であるマーフは自分の部屋の本棚から勝手に本が落ちる怪現象を発見します。マーフはそれを幽霊のせいだと思ってましたが、不審に思ったクーパーが調べてみたところ、それは重力波によるメッセージであることを発見。そのメッセージが示す座標に向かったクーパーは、滅びつつある地球を救うための脅威のミッションに身を投じることになります。
クリストファー・ノーラン監督作品は、これまで「フォロウィング」「メメント」「ダンケルク」「TENET」「オッペンハイマー」とけっこう見てきましたが、ガジェットやギミックこそ非常に難解で複雑なものの、その根底にあるのは割と普遍的な要素だなあと感じます。
本作も正直なところ「滅びかけている地球に代わる居住可能な惑星を探すためのミッション」というのがストーリーの本筋というのはわかるものの高度な専門知識が必要なSF要素やガジェットには全部ついていくのはなかなか難しかったです。
またノーラン監督の作品におけるお約束である時系列まぜこぜは本作では控えめ。時系列はループ構造で作劇的演出ではなく作中で実際に起こっていることであり、ラストが最初に戻ってくるという構造なので他のノーラン作品に比べれば時系列は把握しやすかったと思います。「TENET」の時系列とか整理しようとすると頭がおかしくなるわ。
さて本作も色々言いたいことが出てくる作品ですが、まず言っておきたいのは数々の驚異的な宇宙や惑星の描写ですよね。
そもそも映画というのは現実には見られない(であろう)光景をスクリーンに映し出すもの。しかるに本作は宇宙空間はともかく、地球以外の惑星の様子をはじめ、ブラックホールやその内部、果ては我々3次元世界の住人が知覚し得ない5次元世界の描写という驚異的な映像を、IMAXの音響と大スクリーンで拝めます。
特にブラックホールの描写というか形状は、本作以降のさまざまな媒体で描写されるブラックホールを「宇宙に空いた黒い穴」から「楕円状に潰れた奇妙な形状の天体」に一気に書き換えたことからも分かる通り革新的な描写でした。
また、中盤で人類が生存可能な惑星と目されていた天体のうちのひとつである一面が海洋で覆われた惑星での、山脈と見紛うほど巨大な津波がそびえ立つシーンの迫力よ。「津波」に対して「そびえ立つ」って形容詞を使うなんて初めてですよ。しかも今回はIMAX上映だけあって、津波に飲み込まれてもみくちゃにされる気分がしっかり味わえました。
SF作品といえばロボットですが、本作に登場する人工知能ロボットTARSがこれまた今まで見たことのないような独特のデザインをしてて面白かったです。非人間型ロボットというと大抵の場合は他の生物を模していることが多いんですが、TARSはなんというか、4本の柱がつながったような独特の形状をしており、状況に応じてぜんまい仕掛けの人形のように歩いたり車輪のように転がったりするというギミックが面白い。SF作品にはそれこそ無数と言っていいロボットが登場していますが、その中のどれとも類似していないデザインが未だに出せるってのがすごい。しかもそういや本作は2014年公開作品なんですよね。10年前にこのデザインって……。
そして時間系SFのお約束である「主観時間のズレ」。本作でクーパーが挑んだミッションは、命がけの危険な任務というだけでなく、地球に残してきたマーフと同じ時間が過ごせなくなることを意味するものでもありました。
先述の水の惑星における1時間は地球においては7年間に相当。船外に調査に出て津波に遭い、命からがら帰ってきたときにはすでに23年もの時間が経過しており、船で待機していた仲間は壮年になっていたシーンはかなりゾッとしました。そしてその後、コンピューターが受信していた23年分のビデオレターで、地球に残してきたマーフがすでに成人するほどの時間が経過しており、そしてすでにクーパーの帰還が諦められていることを悟るシーンがあまりにも辛くてなあ……。
しかしそこからの逆転と、ファーストシーンの意味がすべてわかるラストシーンがまた時間系SFの醍醐味といった感じ。あの伏線回収たまらん。
本作はノーラン監督の作品の中でも時系列がわかりやすいぶん見やすいかもしれません。銃撃戦や宇宙人といったフィクション的なスペクタクルはなく淡々とストーリーが進んでいく作品ではあるものの、前述の通り我々が体験し得ない数々の宇宙を体験できるのでおすすめです。