めでたく誕生日を迎えたわたくしです。次はめでたく新年を迎えるべく今年中に済ませておきたいことを済ませていきますよ。
というわけで秋季例大祭戦利品レビューの続き。11月中には終わらせたい。
・埋もれ木の舎(折葉坂三番地)
東方小説系サークルの中でイチオシの本サークルさんの新刊は、近江彦根藩の第十六代藩主にして「桜田門外の変」にて暗殺された大老・井伊直弼をテーマに取り上げた作品。
わたくし人形使いは本サークルさんの東方二次創作小説はいつも入手しているので、今回も内容についての詳細はまったくチェックせずに手に取りました。
今回はコピー本で表紙絵もなく、タイトルからも内容を類推できなかったのでどのような内容かはまったく予想せずに読み始めたんですが、井伊直弼が出てきて「これはどうなるんだ?」とワクワク。
本作は東方本なので当然このあと東方キャラが出てくるはずであり、これまた当然話の流れから井伊直弼と何らかの関わりがある東方キャラが出てくるはず。でもじゃあ井伊直弼と関わりのある東方キャラって誰だ?と思ってたらまったく予想外のキャラである豪徳寺ミケが出てきて驚きました。
そもわたくし人形使いは歴史にはあんまり詳しくないので、井伊直弼に関しても「桜田門外の変で暗殺された」以上の知識や印象がなかったんですが、本作ではそうなる以前の若い頃の井伊直弼がどのような人物であったかにしっかり踏み込んで描写されており、井伊直弼という人物にこれまでになかった印象や感触、もっと言えばいち個人としての彼の人物像を感じることができました。
そして今回の登場キャラである豪徳寺ミケ。もちろん適当に出したわけではなく、井伊直弼との関わりにはしっかりとしたつながりと根拠が、感情的なつながりと史実的なつながりがあります。
まず、感情的なつながり。
彦根藩第十四代藩主である井伊直中の十四男として生まれた彼は、世継ぎにも選ばれず他藩の養子にも選ばれない中途半端な立場に置かれた己の身をむず痒く思っています。対してミケも、純白の毛色を至上とする豪徳寺の出身にあって三毛猫という点で差別を受け、蔑まれてきたという過去を持っているのです。
そして史実的なつながり。
本作中でも史実通り、井伊直弼は桜田門外の変で暗殺されてしまいます。それは歴史的実であり多数の目撃者もいます。しかし一方で、幕府の公的記録では直弼は桜田門外の変から二ヶ月にわたって生きていたことになっている。さらに桜田門外の変の際に持ち去られたという直弼の首の行方もさまざまな異説があり、どれが真相なのかははっきりしていない。
そして、直弼の墓は現在、世田谷「豪徳寺」にあるもの、その地下には埋蔵物がないことが調査で判明しているという――。
このサークルさんの歴史上の人物を取り上げた作品の魅力はなんといっても歴史上の人物(=現実)と東方キャラ(=フィクション)とのつなげ方だということがよく分かる、本サークルさんのエッセンスを凝縮したかのような一編でした。しかしこの密度の話を奥付含めて20ページ未満でまとめてるのすごいなほんと。