『色褪』
マンションのベッドの上で目を覚ました。
リビングに行くと、テーブルの上にメモと鍵があった。
『仕事に行ってくるね。5時過ぎに帰るから!』
如月「あー…」
現在同居中の女性は、大手企業の企画課に勤めている会社員だ。
如月は、彼女に養ってもらっている。
如月「何しよっかなー」
久しぶりに、昔の仲間に会いたくなった。
三鷹と黒宮。同じ時期に業界に入り、何かと一緒に仕事をした仲だ。
如月「ま、殺されそうだし行かないけど。…暇だなぁ」
昔は、如月も仕事をしていた。
その仕事も、ある出来事をきっかけに辞めた。
如月「…柳澤さんの命日ってそろそろだっけ」
今日は10月25日。柳澤が死んだのは、26日。
如月「柳澤さん、お酒好きだったよねぇ」
財布をポケットにねじ込んで、マンションを出る。
相変わらず、街はいつも通り賑わっている。
如月「誰が死のうが、世界は変わんない。結局椿の勝ちかぁ」
ずいぶん昔に、椿と賭けをしたのだ。
『もしも自分に近しい誰かが死んだ時、世界は変わるのか』。
如月は、その頃はまだ、信じていた。
大切な人が死んだら、世界は変わってしまうと。
如月「ほんと、俺ってバカだよねぇ…。世界は変わらなくても、俺は変わっちゃったし」
もう、昔のように心から笑えないし、泣くこともできない。
表面上、笑顔を貼り付けて生きている。
如月「
『番外編』
如月「…毛糸からまったんだけど…」
三鷹「頑張って解いて」
如月「俺そんなに器用じゃないんだって…」
ちまちまと毛糸を解きにかかる如月。
三鷹はスイスイと毛糸を編んでいく。
黒宮「…大丈夫か?」
柳澤「今どこまでいった…!?」
柳澤は完璧主義者らしく、図案通りやろうと躍起になっている。
殺し屋たちがせっせと編み物をしているのもおかしな話だが、これには理由がある。
そろそろ冬がやってくる季節だが、彼らはセーターやらマフラーやら、そういった防寒具をあまり持っていない。
それで、裁縫の得意な三鷹の指導のもと、各々編み物に勤しんでいるのだ。
如月「俺にできるのはポンポン作りまでだ…」
三鷹「やればできるでしょ、やれば」
如月「もう無理…。そもそも初心者にマフラーなんて不可能でしょ」
三鷹「水嶋ちゃんは初心者だけどセーター編み終わったわよ」
如月「ほんとに初心者!?」
三鷹「裁縫ができる男はモテるらしいし、ベスト・オブ・ヒモのアンタなら身につけておくべき技術じゃない?」
如月「その二つ名やめて!?水嶋ちゃんひいてるよ!?」
水嶋は編み上げたばかりのセーターを抱きしめて目を逸らしている。