とはいえ、このまま押し合いになってしまえば、やがてリリーに押し切られてしまうであろうことはチルノも感じていました。
リリーのまとう春気は強烈です。理由はわかりませんが、その強さはさっき見た通り、春でもないのにまわりじゅうから桜の花を咲かせるほどのもの。リリー自身が言っていた通り、まるで春が戻ってきたかのような光景の中、リリーはすごい力を発揮しています。
――そこで、チルノの頭の中にひらめくものがありました。
「……そっか! それなら!」
空中を激しく飛び交ってリリーの放つ弾幕を避けながら、チルノは何を思ったのか地上に向かって急降下していきます。
さまざまな例外はあるとはいえ、弾幕ごっこは基本的に空中で行うもの。空中なら前後左右、そして上下と自由に動き回れるので、必然的に相手が撃ってくる弾幕をかわす余裕や選択肢が大きくなります。
しかしチルノは空中から地上に移動して地面に立っています。これでは空中にいるリリーからの弾幕に無防備になってしまうはずです。
「ほよ? チルノさんどうしたんですかー? まさか、ギブアップですかー?」
チルノの行動に困惑気味のリリーに対して、チルノはいつもみたいに腰に手を当ててふんぞり返ってみせました。その顔は、どう見てもギブアップするという表情ではありません。
「まさか! 反撃はこれからだっての!」
いつものふてぶてしいくらい自信満々の表情で、チルノは両手を高々と空に向かって掲げました。その両手には、これまでにないくらい濃い冷気が集まっていきます。けれど、地面から狙ったところで空中にいるリリーには簡単に避けられてしまうでしょう。
しかし――チルノが次に放った冷気は、リリーを狙ったものではありませんでした。
「あんたができるんなら、あたいにもできるはずだよね!」
両手に蓄えられた冷気が叩きつけられたのは、空中にいるリリーではなくその真逆。地面でした。
強烈な冷気を受けた地面は、チルノを中心にして見る間に凍りついていきます。花も、草も、土も、そしてまわりで観戦していた妖精たちも巻き込んで、大地はみるみる凍土となっていきました。
さっきまでは春の陽気に覆われていた森の中が、地面が凍らされたことによって一気に寒くなってきました。そうまるで――ここだけ冬になったかのように(傍点)。