ある日の学校からの帰路。
「う"ーーーーーーーーーーっ…」
天馬司は悩んでいた。
「どうしたんだい?司くん」
そう問いかける隣に歩いている神代類は、同じクラスの同級生であり、大切な仲間だった。
「あっ、その、いや、…今度のショーの案を考えていたんだ!!!」
「…?熱心だね」
「はははははっ!!!そうだろう!」
そう誇らしげに胸を張る司は、ショーのことなど全く頭になかった。
今は、想い人にチョコレートを作り、渡すために案をひねり出していたのだ。
なにせ、バレンタインまであと2日しかないのだ。
そして当の想い人本人はそんなことなどきっと知らずに呑気に今日も司より遥かに多い量のチョコを貰うだろう。
「イケメンだからな…」
そうつぶやいた司に対し、類は全く意味がわからず困惑していた。
そんな類をほっとき、司はまた悩む。
「…………うーーーーーーーんんん」
司が黙るなんてことは珍しすぎて、類は困惑を超え少し恐怖を覚えた。
「司くん?一緒に考えないかい?」
「……うーーーーーーーんんんんん」
集中しすぎているあまり、類の声は届いてなかった。
「……くん?……司くん!司くんってば!!!!」
「ぅお!っなななんだっ!?!?!?」
急に類の顔が自分の顔に近づき、つい頬が紅潮してしまう。
「聞いてなかったのかい?」
「あ、ああ…すまん」
想い人の話を意図的にではないとはいえ無視してしまったことにしゅん、と犬みたいにわかりやすく落ち込む。
そうすると、類は撫でてくれるから。
「…司く〜ん…犬みたいで可愛いねぇ…」
撫でながらそう呟く類は満面の笑みだった。
別れが来るのはいやだが、ついに別れ道が来た。
「じゃあね、司くん」
そう笑顔で告げる類に全力で手を振り、その場を去る。
帰宅後、司はまた考えた。
「よし…やっぱりハート型にしよう!!」
ハート型のほうが想いが伝わりそうだが万が一気持ち悪いなんて言われたら司は生きていける自信をなくすほどだろう。
それほどに司は類に恋い焦がれていた。
「お兄ちゃん!おかえり!何してるの〜?」
「咲希!!ただいま!!!」
愛しい妹がひょこっと顔をのぞかせる。
「チョコを作るための計画を立てていたんだ!!」
計画、という聞こえはなんだか変だったが、まあ良いだろう。
「へぇ!!!アタシも手伝う!!!」
「……咲希〜〜〜〜!!!!!」
仲良しな天馬兄妹はすぐに計画に取り掛かった。
その頃、一方で類の方は…
「寧々ぇ〜〜…司くんが今日も可愛すぎたんだよ…よよよ」
『それだけで電話しないでくれる?』
電話越しでもわかる、イラつきの寧々の声だった。
「だって僕が司くん好きなの知ってるのは寧々だけだからねぇ」
『はぁ…そういやもうすぐバレンタインでしょ?チョコは?』
「もらいたい」
『はぁ、?作らないの?』
「だって僕が作ったら…食べれるものじゃなくなっちゃうから…」
『…そ。頑張って。じゃあね』
「あっ寧々っ!!」
ツーツーツー、とスマホから電子音がする。
「よよよぉ………」
寧々は類の惚気話にはもう呆れていたのだろう。
なにせ、類は司と初めて会った時から司に恋しているのだ。
司も、同じく類に初めて会ったときから恋している。
―――お互い、両片想いなのを知らないまま。
そして、ついにやってきたのだ。
――バレンタイン当日。
(よし…類にチョコを渡す…絶対に!!!!!!!)
司はその一心で、家を出た。
そして、類の方も
(司くんから…せめて友チョコを貰いたい!!!)
朝から惚気話を聞かされた寧々は、出かける前に類の親に野菜を手渡していた。
「類!!!!おはよう!!!!!!!」
「おはよ、司くん。今日も元気で可愛いねぇ」
褒めれば顔が即座に真っ赤になる可愛い団長が愛おしくてたまらなかった。
そのまま、一日が進み、ついに放課後となった。
―――類と司しか居ない、放課後の教室だった。
「な、なぁ類、」
「どうしたんだい司くん?」
「…今日、バレンタインだろ、う?」
「ああ、そうだね」
余裕っぷりを見せている類でも、顔が少しずつ紅潮していくのは止められなかった。
「これ、お前にやる!!!!!」
そう言って司が手渡した箱の中には、大きいハートの形のチョコがが1枚入ってた。
「ふふっ、司くん」
「バレンタインの飴の意味知ってる?」
当然しってる。今日のために調べたのだから。
「…これ、司くんへ」
ふふっと笑いながら類が司に渡したのは、個包装されてる赤い飴だった。
さっきの類の言葉。手渡された飴。司は、自分の顔がきっと紅潮しているとわかっていた。
「る、い――」
目の前に紫の髪が、類の顔が近づく。
その瞬間、司の唇に温かい感触が伝わった。