『ネグザルツ』
 レーヴァティンが発したその名が己の自意識の奥底へと深く根を下ろすのを、「それ」は感じた。その名が自意識の中核となり、形成された自意識は自己像を作り出す。そして、自己像は己のあるべき姿を現実のものとする。
 活性化した生体金属が装甲を形成し、むき出しだった内部構造を覆った。機肺が大きく呼吸し、星間物質を取り込む。
『そう、それがあなたの姿』
 託宣の如く響く聲に、しかし威圧感はない。「それ」――いまや「ネグザルツ」と成ったそれは、改めて自分を抱きかかえた巨大な存在を仰ぎ見た。
『ネグザルツよ。我が仔よ。あなたは私の――』
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『作戦司令101 敵勢力多数確認。「太陽剣」及び「大太陽剣」の発動は承認済み。当艦はこれより後方支援に移行する』
 後援艦隊から入力された司令が竜骨を駆け抜け、機体に張り巡らされた神経網によって有機的につなぎ合わされた生体金属ひとつひとつに緊張が走る。
 同時に「太陽剣」発動承認により閉鎖状態にあった意識野がトリガーされ、機体周辺にエネルギーフィールドが充満。ネグザルツ最大の兵器である太陽剣はいつでも使用可能。臨戦態勢。
 宙域はすでに敵艦隊に制圧されている。今も眼下では、舳先を並べた大型戦艦から射出された小型機が編隊を組み、物量で劣るこちら側を一気に押しつぶそうとしていた。
 ネグザルツは一気に加速。敵編隊の弾幕を乱数軌道で躱しつつ敵艦の中心部へ向かう。
 粒子弾の一斉射で敵編隊の中に開いた穴をくぐり抜けると同時に太陽剣を抜刀。敵艦の砲塔がこちらを捉えるよりも一呼吸早く下段から振り抜く。敵艦の全長に迫る刃渡りにまで伸長した太陽剣が、三隻の戦艦を相次いで両断した。断続的な爆発に小型機の編隊が巻き込まれて消滅する。
 しかし、ネグザルツが目指すのはさらに先。暗黒の宙域を網目状に交差するレーザーの隙間を掻い潜りながら、ネグザルツは星間物質を吸入し加速。
 密集した艦隊の間を抜けざま、粒子弾を艦橋に叩き込む。艦体が爆散するのを待たず、さらに先へ。
 警告!
 敵性体ではないため補足が遅れた。宙域に浮遊する岩塊だ。
 機体を強引にバレルロールさせて激突を回避――した瞬間、今度は逆方向から小型機の群れが迫ってきていた。回避が間に合わない!
 横ざまから叩きつけるような小型機の弾幕を受けたせいで回避軌道がずれ、ネグザルツは浮遊する岩塊に連続して激突。装甲が削り取られ、視界に激しいノイズが走る。
 ネグザルツが体勢を立て直すよりも早く小型機が群がってきた。半瞬の暇もなく、視界のほとんどが小型機の機影で覆い尽くされる。次の半瞬で起こるのは小型機の自爆による連鎖爆発だ。
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