その場に彼らは寄り集まってひとかたまりの大きな黒い点となった。こうすることで遮蔽物のない吹雪の中で体温を奪われることを防ぐのだ。
ややあって、吹雪が弱まり始めた。彼らは再び一列の隊列を組んで白い雪に覆われた大地を歩き始めた。
彼らはこの雪と氷に閉ざされた1361万3000平方キロの大陸を渡り歩く、唯一の二足歩行動物。
それこそが、彼ら「ペンギン」。
赤道以北に活動領域を押しやられた人類の、南極調査隊である。
人類の戦争とその文明に終焉をもたらしたのは、核ミサイルでも国家首脳の暗殺でもなかった。突如として南極点から発生したカビ、それが最終戦争の引き金だった。
後に「アスペルギルス菌」と名付けられたカビ菌は、気流、水流、そして戦争中であった各国の軍需物資の流れに沿って瞬く間に南半球に配備されたを軍を軒並み全滅させ、撤退させた。
地球全土を飲み込むかと思えたこのアスペルギルス菌による侵食は、かろうじて赤道付近で食い止められた。