3.
 
 時系列としては数日後。ミルクをあたためる描写で前回からつなぐ。レイシオは少し手慣れている。
 ここ数日を回想するレイシオ。服の荷解きをするレイシオの邪魔をする開拓者(箱を分解したりリボンをグチャグチャにしたりする)、レイシオの思索の散歩についてくるようになったこと、絵本を買い与えたことなどを回想する。すこしずつ情緒を得て成長する開拓者。
 以下、現在の時系列で。
 レイシオは思索の隙間で、ふとラバーダッグ・デバッグ代わりに少女に話しかけ、意外と進んだことに驚く。話しかける内容で、渾身の作である論文を書いていることを記載しておく。お礼代わりに、会食で出されたチョコレートボンボンを渡すレイシオ。開拓者のことを思い出して持ち帰っていた。初めてはっきりと笑う開拓者に、これがあの観用少女のえみか、と驚くレイシオ。だが、もっと快活な笑顔が似合うような気がする、とも思う。
 そんなおり、予定していない来客の知らせが届く。名前を聞いて、この男が噂を聞きつけてこないはずがないか、とレイシオは入室を許可する。(実のところはブランド品をレイシオの助手が買い漁ったという情報から伝ってきた)入ってきたのはアベンチュリン。やあ、水臭いな、マイフレンド! 観用少女のお手入れ用品だって、弊社ならありとあらゆるものを取り揃えてるよ?
 開拓者は最初警戒しているが、アベンチュリンがトランクから並べた様々な商品に気も漫ろ、試供品にどうぞ、ともらった、宝石箱に詰まった花の砂糖漬けにすっかり心を奪われてしまった(酔っ払っているので感情がややあけっぴろげ)。
 嫌味を言うレイシオに、アベンチュリンはそんなこと言っていいのかい?君はまだ、この観用少女のバックグラウンドを何も知らないだろう、と返す。「Trailblazer」の銘をもつ観用少女について、情報が欲しくないかい? レイシオはため息を付き、顎で喋ってみろ、と促す(=金は後で払うことの了承)。
 毎度あり、とアベンチュリンは返して話し始める。話をしながら片手間に開拓者と遊んであげている。この街のアジアンマフィアの一角、アナイアレイトギャングがその人形を狙っているらしいということ。それはこの人形が宿す「星核」と呼ばれる寄生植物に起因しているらしいということ。
 まあ、僕がわたりをつけてあげてもいいけど? と言うアベンチュリンに、まっとうな大人はそのような判断をしない、ときっぱり告げるレイシオ。
 了解、じゃあお姫様のためのショッピングタイムだ。栄養剤は? 入浴剤だって替えのドレスだって必要だよ。潤いの褪せる髪を手に取るアベンチュリン。最低限、って感じだな。僕は彼女たちを商う店を訪れたこともあるが…もっと、宝石のように輝くんだ。愛情をもって接してあげなきゃ、という。愛情? (ここはさらっと流したい、くどく定義の話はしたくない)
 酔っ払ったような開拓者の様子とチョコレートの包み紙に気づき、この子、砂糖菓子以外のもの食べてる? まずいな、成長してしまう、とアベンチュリンが告げる。
 人形が成長? うん、~と、読者に観用幼女の成長に関する情報を渡す。観用少女を一途に愛し添い遂げた人も少なくない、と。レイシオはため息をつき、わかったこれは僕の失態だな、と認める。
 
 これはギャンブルじゃないんだ。どっちに転んでもおいしい、ただのビジネスだよ。
※アベンチュリンも本編ほど厳しい境遇にはないことの示唆。そこまで深く触れなくてもいい

4.
 カンファレンスも終わりに近づいたさなか、レイシオはテレビ番組のインタビューを自宅で受ける。放送された録画映像には、観用少女向けのミルクの空き瓶が映り込む。
 その後、足早に会場に移動したレイシオは、見慣れぬ女性(カフカ)が講演をながめていることに気づく。先日のアナイアレイトギャングの話もあり、レイシオは警戒するが、登壇の終わり際に声をかけられる。カフカは対象を口には出さず、元気そうだからしばらく預けておいてあげる、とだけ言って去る。レイシオは、彼女の左手にはまった指輪が、開拓者のしているものと同じデザインだと気づく。

5.
 なんだかんだで充実した日々を過ごし、レイシオは論文を完成させるが、それは天才クラブの目には止まらず、スターピースカンパニーが目をつけて連絡をする。己の運命を自覚するレイシオ。
 しかし、己が推薦を受けてこの道に進んだという恩を返し切れていないこと、世の中の大半は己とおなじ挫折を覚える凡人ばかりであることを悟り、自らを教育者と定義し直す。そのころ開拓者は元気にレイシオの食器棚をひっくり返しており、センチメンタルに浸るひまもないな、とレイシオは苦笑する。あらためてまじまじと開拓者をみつめ、目線を合わせてしゃがみこんで、レイシオは話す。
 僕がきみに与えられる、最も真摯な愛情は知恵だと思う。だから、それをきみに与えよう。
 開拓者の瞳(=星核の本体でもある)がきらりとひかり、これまでになく美しくわらって、レイシオは驚く。

6.
 
 レイシオから与えられる知恵という愛情を得て、開拓者はある意味観用少女らしく、きれいに花開いていく。(これはモノローグでよい)
 しかし、ある日カフカが唐突にレイシオの宿泊するホテルにやってくる。自分たちはそろそろここを離れなければいけないということ。本当はこの子は私が育てる予定だったが、逃げ出してしまったということ。こんなにうつくしく育っているし、あなたにこのままお願いしたかったが、アナイアレイトギャングがこの子を狙っているということ。荒事に慣れていないあなたにそれを任せるのは酷だから、明日の夜◎時に所定の場所に開拓者を連れてきてほしいが、あなたに判断を委ねる、ということを告げる。レイシオは頷き、カフカは案外素直に理解してもらえるのね?と驚く。レイシオは、開拓者がカフカにぴったりとくっついているのを見て、彼女を見れば答えは明白だ、と告げる。
 本来の持ち主である君は警察に行ける立場なのか?と問いかけるレイシオ。目をパチパチさせるカフカ。
 カフカは部屋を去り、レイシオはなにもしゃべらない。開拓者はレイシオのまわりを心配そうにうろついている。
 翌日、開拓者を外に連れ出すレイシオ。いろいろなところを回り、開拓者は楽しげにしている。しかし、カフカが開拓者を連れて行こうとするのを察知したアナイアレイトギャングが強硬手段に出て、開拓者をさらおうとする。レイシオは開拓者を抱えて街を逃げ回り、鍛えていてよかった、ともうすこし実践的に鍛えてもいいのでは?という思いに駆られる。
 やがて、所定の場所についたふたりにアナイアレイトギャングがひとり追いつくが、疲れ切ったレイシオの背中を守るように、開拓者はバットを振り回してぶん殴る。
 世にもきれいな人形が、洋服をボロボロにしながらぶん殴る様子(相手は星核が埋め込まれているということがわかっているので手出しできない)を見て、ぽかんとして笑うレイシオ。
 ボロボロになったレイシオは、ボロボロになった開拓者がバットを握りしめた姿を見て、あらためて送り出すことを心に決める。
 己の最初の生徒に、手向けにレイシオは「星」という名前を贈る。きみへの呪いであり、祝福でもある言葉。
 星という名前を得た開拓者は、レイシオのほっぺたにキスを贈って、おおきく手をふってカフカとともに去っていく。
 レイシオは座り込みながら、手を上げてその姿を見送る。
〆

以下、2に使うつもりで描いたが3に転用できるかもなので残しておくメモ
  なんでも自分でこなす観用少女の唯一の我儘と言えるのだろうか、開拓者は冷たいミルクを頑として飲もうとせず、自分で温めようともしなかった。IHと言えど子供に火を使ってもらいたくはないので後者は問題ないが、問題は前者である。
 どうなることかと思っていた観用少女との生活だが、意外にもレイシオの生活は大して変わらなかった。どの個体も躾をされているはずだと警察署で聞いた通り、開拓者は勝手に起き出し、風呂に入り、レイシオが部屋で研究を進める間、ひとりで時間を潰して、ひとりで眠る。無駄に凝った衣服はホテルのランドリーサービスに出せば事足りたし、少女は本当にミルクと金平糖しか必要としなかったので、買い出しも最低限でよかった。いまのところ、無駄に広いスイートルームに無口な同居人が増えただけに等しく、レイシオは拍子抜けしていた。
 ただ唯一、ミルクを温める作業だけは、レイシオが行った。
 少女は一日三回、ミルクの時間になると徐おもむろにダイニングチェアによじ登り、自分専用になったホテルの部屋備え付けのシンプルなカップを目の前に置いて、じっと待つ。
 規則正しい生活を送るレイシオの一日のルーティンに、その小さな背中は違和感無くおさまった。レイシオがソファから立ち上がると、開拓者も徐ろに本やタブレットを手放して、ふたり並んでダイニングに向かう。
 スイートルーム備え付けの無駄に設備の整ったキッチンにミルクパンを置き、温め、適温まで冷まして提供する。我儘らしい素振りを殆ど見せない少女だったが、頑として人間にミルクを温めてもらうことだけは譲らなかった。

以下、2を書いてる途中のメモ
レイシオが本来観用少女に注ぐべき「愛情」について、もっとも手持ちの札で近いものとしてロンド名誉教授を上げるが、彼らとも互いの利害が一致していただけで、レイシオはそれを継承できない、と自覚している。が、ミルクを温めるという実践をレイシオはこなすことができるよ、という話
最終的にクレイマー・クレイマ―のフレンチトースト作るみたいに手慣れてほしいよ
なんかわからんがウィトゲンシュタインっぽさが出てきたので読み返しておくか…
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金枝篇(仮題)
初公開日: 2024年04月22日
最終更新日: 2024年12月10日
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レイ星・観用少女パロ
レイシオが「ドクター」と呼ばれるまでをパロディの軸で好き勝手に書く