粒子弾をものともしなかったリュミエ-ルの装甲が、太陽剣の熱量に熔解し始める。このまま攻撃を受け続ければ、いかに聖鎧といえど装甲の貫通を許してしまう。
転瞬の判断でレインディアは機体を強引に反転した。その勢いで振り回された光子縛鎖がネグザルツに激突、太陽剣の剣閃が反れる。
「体勢を立て直す暇など与えるものかよッ!」
すかさず間合いを取ったレインディアは、防御力で劣るネグザルツを一気に押しつぶす構えを取った。機体各所の砲門が一斉に開き、ネグザルツに照準を定める。
一瞬の内にネグザルツのそれに倍する粒子弾の弾幕が襲いかかる。レインディアを頂点とする円錐形の射界を取って放たれたその攻撃は、決して単なる焦燥から放たれたものではなかった。レインディアの立悦した演算能力は一瞬の内にネグザルツの未来位置を数百パターン予測し、そのすべてを押しつぶす形で放たれたものだ。
会心のタイミングで放たれた回避不能の弾幕がネグザルツの機体を覆い尽くす。レインディアは勝利を確信――しなかった。反射的に太陽剣を弾幕に埋もれて爆散するはずのネグザルツの現在位置に突き入れる。
その切っ先は仇敵に達する前に阻まれた。弾幕を貫いてまったく同じ軌道で放たれた太陽剣が、レインディアの太陽剣を押し留めていた。
瞬間、レインディアは吸入口から大量の星間物質(エーテル)を吸収。その光核(コア)から神経網を通して全身にエネルギーを循環させた。
光翼展開。
装甲の隙間から放出された余剰エネルギーが二対四枚の翼となって展開された。機体内部に横溢したエネルギーが束ねられ、光の剣を成す。
弾幕に穴を開け、さらに必殺のタイミングで放たれたレインディアの太陽剣を計り知れない精度で受け止めたネグザルツの太陽剣が押し返される。
聖鎧の力をも最大稼働させて増幅された、真正の太陽剣を真正面から押し返すほどの熱量を持ったレインディアの太陽剣が、ネグザルツの防護フィールドを見る間に減衰させていく。
臨界駆動によって発生した思考を埋め尽くすほどの激痛(アラート)をレインディアは無視。神経網の一部が灼き切れるのにも構わず出力を上げ続ける。
「これしきの痛み、貴様に与えられた屈辱に比べれば……!!」
正面から交錯するふたつの太陽剣。その一方――ネグザルツの太陽剣がかき消えた。抵抗がなくなったレインディアの太陽剣が、無防備な姿をさらすネグザルツに向けて突き刺さる――刹那!
ネグザルツのまとった防護フィールドが内部から爆裂し、一次装甲に直接突き刺さる寸前の太陽剣を弾き飛ばした。
「な……ッ!?」
攻撃を逸らされたレインディアはすぐさま次の行動に移ろうとするが、神経網に深刻なダメージを受けた状態では思考と機体の連携が十全にできない。ノイズがかった思考でなんとかネグザルツの方向に照準を合わせようとするが、遅い。
ネグザルツはレインディアの機体直下に占位していた。下段(スターン)から振り抜かれた太陽剣が、今度こそリュミエールの装甲を斬り裂いた。
「ぐぅおおおおお……ッ!」
ダメージ限界。リュミエールとの接続(コネクト)によって拡張されていた自意識が急激に縮小。感覚情報が寸断され、思考が激痛(アラート)で真っ赤に染まる。すべての感覚が抜け落ちていく中で、喪失感だけがただひとつ濃い。
聖鎧との接続が強制的に解除され、レインディアの本体がリュミエールから排除された。