ほんの数か月しかない逃避行のようなオフシーズンの朝、目が覚めると隣に冴がいることが信じられなくて、都合の良い夢の続きでも見ているのかと思うことがある。シエスタが当たり前のように生活に組み込まれている冴と私の寝室のカーテンは一筋の光も通さず遮光していて、暗闇にうかぶ冴の輪郭が触れれば消えそうなくらいに朧だ。
 決まった時間に寝て、起きて。計算された生活を送っている冴はたいてい、目覚ましが鳴る前に目を覚ます。正確な体内時計のおかげで朝が来たことを悟った彼は、時間を確認するでもなく、しばらく暗闇のなかでじっとしていて、私は、それを感じるたびにさみしいような、悲しいような気持ちになって、朝なんか来なければいいのにと思う。
 触れてしまえば形を成すから、認めないままでいたい。そういう曖昧なまま、ふさぎたくない傷があるのだろう。ただ傷が膿まないように、冴はじっと朝が来るのを待つしかないのだ。
 手負いの獣のような冴はうつくしい。姿が見えなくとも、私には分かっていた。
 正直、この時間を私はどう過ごせばいいのか分かっていない。冴が他人に傷口に触れられたくないのは明らかであるし、そもそも冴が打ち明けてくれたところで私は何もできない。だから、きっとこれが正解なのだと思う。冴だって、口だけはいつも達者なのだ。私にしてほしいことがあるなら言うだろう。もうすっかり毒されてしまっている私は、素直に傷を晒せない冴の弱みだって、なんて人間らしいのだと思うと愛おしかった。
 寝起きの耳にやさしい、くぐもった目覚ましの音が聞こえてからたっぷり3コールほど置いて、冴はゆっくりアラームを止める。私が起きていることに気付いているくせに、気を遣って静かにしているのだ。起き上がった冴が柔軟ついでに肩を回して、すこしだけ迷いの残った仕草でカーテンを開ける。
 朝日に照らされてくっきりと実体を表した冴は、きちんと人間のすがたをしていた。
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eta
ありがとうございました~一旦停止します ^^) _旦~~
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