「あっつい!!」
この暑さの中、よく大声を出せるなぁなんて考えながらアイスを齧る。冷たくてひんやりとしていて、口の中から冷えていく。
「なぁ七海、そのアイス一口頂戴?」
そういう奴の手元にはカップのソーダ味のアイス。そして俺の食べているアイスはオレンジ味だ。星野はじいっと効果音がつくようにこちらを見てきている。
「翔、一口だけだからな」
「やった。ありがと」
星野翔。不健康そうに顔は白く、猫背であるからか内向的な性格に見える。奴は顔面に自信がある、そして自分大好きなナルシストでもある。
「ええ、2人とも…、もう食べてるの?」
「だって朱音遅いんだもん」
「うぅ…、だってあの中から選べないよ」
「結局何種類買ったの」
「…うわ4種類あるじゃん」
暮崎朱音。髪は肩まで切り揃えていて、世話好きのような雰囲気が見受けられる。彼女は方向音痴で機械音痴、それでいて優しい。決断力は少し遅いが開き直って、なんとかなるという具合に物事を考えるところがある。
「ねね、朱音。このチョコアイス一口頂戴?」
星野は先程、藤堂にねだったように暮崎の持つ袋の中のチョコアイスを見つけ、一口頂戴と言っている。暮崎は困ったように微笑み、一口だけだからね、と釘を刺した。星野の横に座り、袋の中からチョコアイスを出した。
「やった。ありがと~」
一口齧ると嬉しそうに笑う。しょうがないなあもう、とでも言うように困ったような微笑みはどことなく嬉しそうだ。
「翔、俺はあげたのにそっちはくれないのか?」
「え…、あげるよ!はい、あーん」
「ん。ありがと」
何故かあーんという効果音のようなものを口で言っていたがあまり気にしない。
「……夏休みも、もう終わりかあ」
「課題終わったのか?」
「あっ…、俺終わってない、かも」
「翔に関してはまずどこをすればいいのか忘れたんだろ」
「正解。さすが七海」
「さすがもなにもないから。ほら早く帰って課題するぞ」
「終わったらアイスあげるから、だから頑張って!翔」
「……頑張るか」
アイスという食べ物に釣られる単純なところは今は救いだ。暮崎は星野をにこにこと見守っている。
___
「まだまだ、先だけどさ文化祭のことも考えなきゃなのか…」
「まだまだ先って…、そんな遠くないだろ」
「文化祭かあ……、やっぱり劇はしたいよね」
「ええ、俺出店したい」
「何したいの?2人とも」
「やっぱりほら、シンデレラとか」
「喫茶店?とか!!」
「へえ、どっちも楽しそうだな」
「喫茶店かあ、良いねえ!楽しそう!」
「シンデレラかあ、懐かしいな」
「中学のときだったよな」
「そうだなあ」
「うん…、そうだね」
「え確か、朱音シンデレラ役で…」
「翔が王子様役だったな」
「そうそう!七海が魔法使いでね」
「楽しかったなあ……」
「高校、やっぱ同じとこ行けば良かった…」
「何今更言ってるの」
「良いじゃん、別々で」
「ん~、でもやっぱこの3人でさ、同じ高校で…なんかしたかった」
「なんかってなんだよ」
「なんかふわふわしてるなあ」
3人で笑い合うこの時間も、いつか無くなってしまうのだろう。
中学3年、最後の年。劇をしようということになって、シンデレラをすることになった。主役であるシンデレラは暮崎朱音_つまり私ということだ。決まったときは驚いた。私が立候補した訳ではなく、推薦でシンデレラに、と決まったらしい。王子役は星野翔、魔法使い役は藤堂七海。
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ガラスの靴は置いて
初公開日: 2024年04月04日
最終更新日: 2024年04月09日
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ガラスの靴は美しく透き通っている。