「昔は魔法のこと、御伽噺だと思っていたんだよ?」
「ああ知っているさ。そんなの入学してからの授業ですぐやるだろうに」
それがどうしたんだい?と問いかける前に彼女は笑った。
「そうなの。でもみんな覚えていなかったのよ!おかしいでしょう?」
彼女の特徴的な笑い声が空気を震わせる。
「覚えていなかった、?」
「ええ。でも貴方は覚えていた!流石ね」
「……まあ、監督生という肩書は伊達じゃないからね」
褒められて嫌というものは少ない。それに彼女から褒めてもらうのは嬉しいものだ。代表監督生である、彼女に。
「ああそれで話の続きになるのだけれど」
「魔法のことかい?」
「……昔は科学というものがあるらしいの」
「かがく?聞きなれないものだね」
「そう。十分に…まあ高度にね発達した科学は魔法と見分けがつかないとでも言っていたそうよ」
「魔法と、そのかがくは見分けがつかないほどのものなのか?」
「分からないわ。それに、見てこれ」
「なんだいこれ…空想科学…?」
「面白そうじゃない?」
「確かに、面白そうではあるけれどね…」
「そうよね。未知なるものに手を出すとなるのは怖いわよね」
「君は、僕のことを臆病だとでも?」
「あら、事実でしょう?臆病な性格には他人に対して気を遣うことができるじゃない。それに私達には必要不可欠な想像力があるわ」
だから貴方は監督生に選ばれた。違う?とでも言いたげに首を傾げ挑戦的な笑みを浮かべる。
「君は本当に、」
言いかけていたところに大きな風が起こった。
「あら、お元気ね」
「貴女は本当に…戯れが過ぎます」
「そう?自由に生きているだけよ?」
そう返答されると副代表監督生は大きな溜息をついた。
「風魔法を得意とする者は、秩序ではなく自由を愛する傾向だと聞いたのだけれどね…」
「貴女がどこから情報を仕入れているのかは知りませんが古い情報ではありませんか?」
「そうね、それで用件は?」
「校長がお呼びです」
「分かったわ。行きましょうか」
*
「失礼します」
「やっぱりここの扉無駄に大きいわね」
「静かにすることは出来ないのかい?」
「あら、出来るわよ」
「それじゃあ、静かにしてくれよ」
お願いだから余計なことは言ってくれるな、なんて念をこめながら見つめる。彼女に届いたかどうかは分からないが、ウィンクを返してきたので届いたのだろう。
「それでは1人ずつ自己紹介を」
「…代表監督生である私からでよろしいでしょうか?」
沈黙を肯定と受け止め、彼女は自己紹介を始めた。
「代表監督生、四羽弥生です。幻魔法を得意とします」
金髪に黄色の瞳を持つ彼女、四羽弥生の後ろから前に出る副代表監督生。
「私は副代表監督生を務める泉嵐と申します。風魔法を得意としています」
銀髪碧眼を持つ副代表監督生。
「代表監督生と同様に幻魔法を得意とします。虚淵歩です」
緊張感が張り詰めた中、よくここまで言えたものだと自画自賛をしておこう。そう思った。
「副代表監督生と同様、風魔法を得意としています。鳥崎朔夜です」
腰までの黒髪に紫色の眼を持つ。
「火魔法を得意とする。野塚焔だ」
赤い髪が特徴的で橙色の瞳が美しい。
「佐倉瑞輝です…!火魔法が得意です……」
緊張感からなのか、桃色の瞳が右往左往としている。黒髪は肩まででストレートだ。
「……水魔法を得意としています。日向葵です」
白い絹のような美しい髪に瞳は太陽に照らされた海の水のような色。水魔法が得意という言葉に頷ける。
「同じく水魔法を得意とする。橘奏人だ」
青髪に切れ長の灰色の瞳。強面というものに分類する者だ。
「私は天嵜美南だ。土魔法を得意とする」
赤目で金髪は一つに結ばれている。なんだか近寄りがたさが感じられる。
「初めまして~、緑川光です。土魔法が得意です」
寝癖が少しある茶髪。ニコニコと笑みを浮かべ、緑の瞳は細められる。優しい雰囲気がある。
「八朔日亜月。無属性・再生魔法が得意…です」
敬語を使おうとしている努力が見受けられる。紫髪に紫眼。ピンクのリボンが可愛らしい。
「停城了です。無属性・停止魔法が得意」
白がかった紫髪に翠眼が映える。
「以上、監督生の自己紹介です」
「ありがとう。それでは、本題に入ろうか」
*
「君達は入学して、半年だ。だが監督生である君達の顔合わせ会をしていなくてね。やはり、顔合わせはしておいた方が良いだろう?そこで今日、顔合わせ会をしようと思ってね」
「交流は大切だからね」
弧を描き、まるで悪巧みするような笑い方をする校長先生。
「ああ、自由にしてくれて構わないよ」
「さて、顔合わせ会、いわば交流会のようなものですが。どうします?」
「どうする、とはどういうことでしょうか」
「自由にしてくれて構わない、この交流会に参加するも自由ということです」
どうします?とでも言うように首を傾げ笑みを浮かべる。
「あの、私はみなさんと、お話したい…です」
紫の瞳が揺れる。緊張もあるだろうに勇気を出して、言ったことがわかる。
「そうだね。僕も初めての人がいるし…是非お話したいな」
目が合うと、にこと微笑みかけられる。
「分かりました。それでは交流会をしましょうか」
交流会、といっても何をするのかが不明。だからこそ、何をするかによるだろう。
「力比べでもするか?」
好戦的に笑う野塚焔。橙色の瞳が輝いているように見える。
「…良いね。やる?」
白い絹のような髪を結おうとする日向葵。容姿とは裏腹に好戦的なようだ。
「葵、…」
橘奏人は幼子に注意するかのように言う。それを手で制した。
「大丈夫だから。……ただの力比べ」
「楽しそうだねぇ、美南ちゃん。葵ちゃんと焔ちゃんの力比べだって」
「……力比べか」
「おいちゃん付けはやめろ」
「ごめんねぇ、焔ちゃん癖なんだ」
ちゃん付けされたことが嫌なのか、顔をしかめる。
「……やろっか」
葵の言葉で気を取り直す焔。
「ああ、やろうか」
*
「それでは代表監督生である私が公平なる審判をさせていただきます」