「ワシが分裂した」
「……はぁ?」
 とある夜。
 仕事帰りの水木を出迎えたゲゲ郎が言い放ったのはにわかには信じ難い言葉であった。
「こっちじゃこっち」
 ほれほれと手招きするゲゲ郎に連れていかれたのは居間だ。鬼太郎は、と聞くと危ないからと他の妖怪の元へと預けたらしい。
 ゲゲ郎が鬼太郎を他の元へ預ける事は滅多にない。それはよっぽどの危険事態を意味していた。
「本来なら水木にこそ会わせるべきじゃないんじゃが……いつ元に戻るかもわからぬ。いっそ事情を説明して傍に置いておいた方が良いかと思ってな」
 灯台もと暗しとは言うじゃろ、とゲゲ郎は言った。意味が違う気がするが、そういうものかと頷いて、導かれるままに居間のちゃぶ台の前に座らされた。
「ちょっと待っておれよ。今連れてこよう」
 まるでペットでも見せるかのような口振りで一度奥へとゲゲ郎は引っ込んだ。なんなんだ。
 軽くゲゲ郎の方へと耳を澄ませていると微かに話し声が聞こえる。
「……じゃ!嫌に決まって……!」
「なにを……!」
 途切れ途切れにしか聞こえないがどうやら揉めているようだ。
 そこそこ待っただろうか。
 急須ひとつ分のお茶を飲み干し、みかんをふたつほど食べ終えたころにゲゲ郎は漸く戻ってきた。
 何故か髪の毛は伸びてぼろぼろになっている。今しがた仕事から帰ってきたばかりの水木よりも疲労困憊のご様子。
 そしてゲゲ郎の伸ばされた髪の毛にぐるぐる巻きにされて引き摺られるようにしてやってきたのは、ゲゲ郎をそのまま小さくしたような子供だった。
 仮に……仮になんとしようか。仔ゲゲ郎とでも呼ぼうか。
「ぜぇ……まったく暴れおって……ワシはこんなに聞き分け悪くなかった筈じゃが」
「小さい!どうしたんだこうつ!」
 思わず立ち上がって傍によると、グルルルル……と仔ゲゲ郎は子猫のように威嚇むき出しで唸りだしてしまった。
 野生丸出しだ。そういえば子供の頃は野山にすんでいたと聞いた。
「獰猛」
「これ!そのような態度をとるなと何度言わすんじゃ!」
「ゲゲ郎も落ち着けって……」
「じゃがのう……!」
 仔ゲゲ郎は人間で見れば10歳かそこらだろうか。だが栄養不足からか欠食児童のように腕も足もかなり痩せ細っている。
 その仔ゲゲ郎に威嚇されたところで水木としては恐さも何も感じず、ただ少しの憐憫の情が湧いてくるだけだ。だが、ゲゲ郎は違うようだ。やっぱり自分だからか、随分とその態度は厳しい。鬼太郎に対してはデロッデロに甘い癖に。ゲゲ郎の髪から逃げようともがく仔ゲゲ郎をふんじばってフン、と腕を組む様はどっからどう見ても大人気なかった。 
「なんだってそんな……」
「水木、見た目に騙されるでないぞ。これは分裂体じゃ」
「その分裂ってのは」
「まぁ座れ」
 促されるままに座る。ゲゲ郎が正面に座るが、仔ゲゲ郎は髪の毛にぐるぐる巻きにされたまま転がされていた。
「ゲゲ郎……離すのは無理でも、せめて座らせるかしてやってくれ。見てて居た堪れない」
「……仕方ないのう」
 何が嫌なのか顔を軽く顰めながらゲゲ郎はぐい、と髪を引っ張った。その勢いで一瞬仔ゲゲ郎が宙に浮かび、操り人形が如く器用にゲゲ郎の隣にちょこりと座らせられた。
 仔ゲゲ郎は何が起こったのか分からない顔でぱちぱちと目を瞬かせている。顔立ちがあどけないせいか、鬼太郎に似ているせいか、やけに可愛らしく感じるのは何故なのだろう。 
「それでじゃな」
 そして仔ゲゲ郎の反応も何も気にせずにゲゲ郎は事の発端を語り出した。
「少し山の長にちと厄介な妖怪の退治を頼まれてのう。長い付き合いじゃからとふたつ返事で受けたもののこれが厄介でな……」
 あっこれ長くなるなと語り口から察する。
 かれこれしばらく聞いた話をざっとまとめてやるとこうだ。
 ゲゲ郎が退治した妖怪の最期の悪あがきの妖術で過去のゲゲ郎が分裂したらしい。
 ゲゲ郎の話が長いせいか仔ゲゲ郎も隣で聴きながらだんだんうとうとと船まで漕ぎ出した。子供の体だからだろうか。にしてもギチギチに縛られながらよく眠気が湧くものである。
「この頃のワシは人間を憎んでおってな……水木に襲いかかってもいかぬ。勿論、鬼太郎にも害が及ぶ可能性もあるじゃろう。じゃからこやつが消えるまで暫くこうしてワシが付きっきりで見張っておく」
「見張っておくったって……」
 ちらりと子ゲゲ郎を見る。いくら危険だからと言って四六時中こうして縛って転がしておく訳にもいくまい。
 ふむ。
 ふと思いついて仔ゲゲ郎に近寄った。うとうととしているからか水木が動いても気がついていない。
「水木?なにをするつもりじゃ」
「いや、いっそ俺が襲われないようにある程度仲良くできた方が話が早いんじゃないかと」
「命知らずかお主」
 そっと顔をのぞき込めるくらいの距離に近寄ると、さすがの仔ゲゲ郎も気がついたようだ。急に距離を詰めてきた人間に目を丸くし、くわ、と牙を向いた。髪の毛がぶわりと広がり、バチッと火花の散る音がする。
「ほれ」
 だが、今にも襲いかかりそうな仔ゲゲ郎に対して水木が目の前に差し出したのは、先程まで食べていたみかんの粒だった。
「それで上手く行くと思っとるのかお主」
 ゲゲ郎の呆れた声とは裏腹に、ぱちりと仔ゲゲ郎は目を瞬いた。
「ほれ食っても大丈夫だぞ。さっきゲゲ郎が話しながら食ってたのを恨めしそうに見てただろう」
 ほれ、と筋まで取られて綺麗にむかれたみかんの粒を仔ゲゲ郎の前に差し出すと、大人しく仔ゲゲ郎はぱくりとそれを口にした。
 そのままもしゃもしゃと丹念に味わうようにじっくりと租借し、こくりと飲み込む。
 そして、あ、と水木の手の中に更なるみかんがあるのを見るとぱかりと口を開けた。
「嘘じゃろ……ワシ……」
 チョロいな……と口に出そうとして流石の水木も口を噤む。
 みかんの粒をひと粒づつ食べさせてやると餌を与えられた雛鳥の如くもしゃもしゃと食べてはぱかりと仔ゲゲ郎は口を開けた。
 どうやら随分と気に入ったらしい。  
 
 みかんをゆっくりとふたつ食べ終わる頃には子ゲゲ郎はもうすっかり落ち着いていた。さっきまでの威嚇はどこに行ったのやら。
 もはやもうゲゲ郎が髪の毛を緩めても暴れやしないで大人しくちょこりと座っている。
「お前……よく野生で生きてたな……」
 思わずゲゲ郎を見るとふい、と目を逸らされた。自分でも同じことを思ったのだろうか。
「幽霊族は仲間意識が強いんじゃ……体も頑丈じゃし……他の妖怪達との交流も多かった……その上ワシはその……争い事は好まんからのう」
「つまり?」
「飯をくれて敵意も無い奴に怒りが持続せん」
「お前よく野生で」
「ワシも今疑問に思っとる」
 ハァ……とゲゲ郎が遠い目をしてため息をついた。
 一方仔ゲゲ郎はと言うと自分の事を話されているというのにきょとりとした顔で水木をただ見上げていた。
「どうした?」
 ひょいと仔ゲゲ郎が袖を引く。引くが、それだけだ。真顔。みかんの時もだがこの子笑わない。
 鬼太郎の表情筋が硬いのはこいつの遺伝かと何となく思う。
 じゃあ将来鬼太郎もそのうちほへほへへらへらとした緩い顔ばかりするようになるのだろうか。
「なんじゃワシとそやつを見比べて」
「いや……」
 そう言っている間も子ゲゲ郎はずっと水木のそで口を掴みっぱなしだった。これはこれで可愛いのだがやりように困る。どうしたものか。せめて何か話してくれれば良いのだが。
 どうしたものかと戸惑っている間に痺れを切らしたようにのそりと仔ゲゲ郎はずりずりと水木の元へと近寄った。
「お?なんだ……」 
 大人しくなったからとゲゲ郎の髪の毛はもう解かれている。仔ゲゲ郎からはもう敵意を感じないが行動が如何せん読めなかった。
 そのまま水木に寄ると仔ゲゲ郎はぐい、と水木の腕を広げさせ、胡座をかいている足をさらにぐいぐいと軽く広げさせた。
「おい、どうした」
「あ〜……」
 何かを察したようにゲゲ郎が嫌そうな声を出した。
 そしてある程度水木の足を胡座をかかせたまま緩く広げさせると、膝の上で丸くなって眠る猫がごとくコロリとその上に転がった。
「…………」
「………………」
「おい寝たぞ」
「これ本当にワシか?」
「どっからどう見てもお前だろうこれ」
 すやすやと寝息を立てて丸くなって眠る仔ゲゲ郎にはもはや野生の影はない。失われた野生。何処へ。
 それを見ているゲゲ郎は心底複雑そうに眉を歪めて唇を引き攣らせていた。まぁ無理もない。幼い自分がごろにゃんと即効で相棒の人間に懐いているのである。
「これどうするんだゲゲ郎」
「一刻も早く消す」
「……手段は」
「決まっておるじゃろう」
 フン、とゲゲ郎は忌々しそうに鼻息を鳴らす。
「物理じゃ!」
「荒事はよせつってるだろうが」
 照れ隠しなのかそれ以上のものなのかやけに仔ゲゲ郎に対して暴力的なゲゲ郎を宥めるのに時間を食った。  
 わぁわぁと騒ぐゲゲ郎を落ち着かせる間もぐうぐうすやすやと膝の上で寝ているもんだから仔ゲゲ郎も豪胆なものである。
 最終的にゲゲ郎をみかんで懐柔して落ち着かせた。
 もっしゃもっしゃと残り少なくなった箱のみかんをぜんぶ食っていいぞと言われて大人しく食べだしたゲゲ郎にため息を着く。
 アレッこいつこの頃からなにも変わっていないのでは。
   
 膝の上でぐっすり眠っている仔ゲゲ郎を起こさぬようにそぉっと抱き上げて布団に寝かせる。だがここでも誤算があった。仔ゲゲ郎が水木の服を掴んで離さない。
 ちょっと前まで赤子だった鬼太郎も同じように抱っこから寝かせようとすると腕を掴んで離さない子だった。
 そんな事を思い出しながら水木は仔ゲゲ郎と一緒に眠ることを余儀なくされた。
 ちなみにゲゲ郎はそれを見て心底嫌そうな顔をしていた。まあ心情は察するに余りある。仕方ない。
だが水木とゲゲ郎の2人は予想していなかった。
仔ゲゲ郎が思いのほか水木に懐きすぎた余り求婚騒ぎまで発展するとは
↑本文
────
↓雑談 
1時間半くらいやったのでこの辺で切ります〜!お付き合いありがとうございました〜!!
気が向いたらまたやるかも 楽しいね
水木と一緒に寝る←別にいい
水木の服を離さないとこを赤子の鬼太郎と比べられる←やや屈辱
みかん 美味しいからね 仕方ないね 鬼太郎もそう言っています
ゲゲ郎からしたら黒歴史目の当たりしとるようなもん
自分の事なので察しがついて嫌な予感してるゲゲ郎
ゲゲ郎髪の毛スタンバイ
してる
(θε川|
仔ゲゲ郎は品種改良された甘いみかん食べるの初めてかもしれん 酸っぱいみかんで悶絶した過去 ありそう
ゲゲ郎、人懐っこいから即効で懐いて裏切られた経験死ぬほどありそう でも懲りない
大丈夫だよ水木、ゲゲ郎もワシ……チョロすぎ……!?って思っとる
死ぬぞお主それ
噛まれたら噛まれたで「痛くない……痛くない……」するつもりだった水木
いざとなったら体内電気で仔ゲゲ絞め落とすスタンバイしてるゲゲ郎
多分ゲゲ郎はマジでギッチギチに締め上げてるから仔ゲゲも悲鳴上げる一歩手前
お前じゃ
こやつ野生すぎんか?と思ってるゲゲ郎
おぬしおぬしおぬし!死ぬ気か!?って思ってる ゲゲ郎
だいぶ脳死で書いてます これ 
いいんだよ ご都合妖怪なんだから
のうこれ端折りすぎではのうか?
ッスね
鬼太郎がワシに似てるんじゃが??
やっぱそう思う?郎まで入れるわ
仔ゲゲってどうなん?仔ゲゲ郎まで入れる?
仔ゲゲ(ゲゲ郎100さいのころの姿)
カタカナなのぉ〜!?ありがとうございます カタカナ固定で行く
仕方ねぇ 最後のタイトル出た瞬間すべての記憶失うもんな わかる(わかる)
固定されてました!? 有識者教えてください
ゲゲ郎の一人称ワシかわしか儂にするか問題 常にある
でた!
子供の子のオシャレなやつの変換が出ない
小さく離してる表現の仕方わからんくない?
灯台もと暗して
書き出しわからんくない?
下雑談枠で上に本文書き連ねていく形式で試しにやってみます
お試しなので途中で変えるかも
カット
Latest / 95:03
カットモードOFF
18:11
ななし@e41c4d
児?
21:05
ななし@e41c4d
確か字幕でどっちかに固定されてたはずですね
21:55
ななし@e41c4d
見たときは覚えてるんですが、映画館でると忘れてしまってて(涙)
24:25
ななし@e41c4d
見つけた。片仮名のワシだ
25:21
ななし@e41c4d
私もスッキリした
33:29
ななし@e41c4d
ゲゲだけだとちと違和感ありますね
34:40
ななし@e41c4d
なんかめっちゃこげたゲゲ朗がひょっこり出てくるw
39:48
ななし@e41c4d
www
40:48
ななし@e41c4d
心の声に突っ込みツボるw
45:01
ななし@e41c4d
字がするって出てくるのおもしろいなあこれ、あと筆が早い御見逸れします
45:28
ななし@e41c4d
ご都合妖怪なんて南保でもいていい
45:48
ななし@e41c4d
しゅげ~!
52:39
ななし@e41c4d
向こう見ずなところ変わっとらんこやつって思ってんな
53:31
ななし@e41c4d
危険地帯に単身乗り込む男がそれくらいでひくわきゃない
54:10
ななし@e41c4d
ワラビーなのかも
55:37
ななし@e41c4d
猛獣じゃん…ダメだよ水木さん近寄ったら❗
56:37
ななし@e41c4d
餌付けw
57:22
ななし@e41c4d
がんばれゲゲ朗
59:52
ななし@e41c4d
ナ○シカ…❗
61:03
ななし@e41c4d
懐いたら仔げげ朗を肩に乗せてくーるくるするんか
61:23
ななし@e41c4d
ちょっろ
65:57
ななし@e41c4d
あるわー
68:41
ななし@e41c4d
野生って言うとポケットなもんすたーみある
69:24
ななし@e41c4d
かわいいな
72:00
ななし@e41c4d
www
73:35
ななし@e41c4d
浮かぶわw
76:49
ななし@e41c4d
わくわく
79:32
ななし@e41c4d
なるほどwこれ恥ずかしかろうな
81:36
ななし@e41c4d
かわいいね
82:22
ななし@e41c4d
たらしだ、妖怪「妖怪タラシ」
86:27
ななし@e41c4d
愉快、愉快
89:24
ななし@e41c4d
うんうん(*-ω-)シカタナイネ
92:54
ななし@e41c4d
www
94:12
ななし@e41c4d
一応じぶんfだから寝るのはいいって判断なのか
94:24
ななし@e41c4d
おつかれでしたー
94:35
ななし@e41c4d
面白かったです
チャットコメント
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
テスト 人間嫌い期分裂父水
初公開日: 2024年03月07日
最終更新日: 2024年03月07日
ブックマーク
スキ!
コメント
テスト配信です 唐突に終わるかも
チャットはガンガンしてください
一応人間嫌い期のゲゲ郎が分裂したと思ったら思いのほか水木に懐いてしまった!感じの父水予定