カオスはサーカスのステージの真ん中で、くるくると4つのカラフルな玉を上手にジャグリングしていた。
「よっ、ほっ、今日の玉はいつにも増して軽くていいなあ」
ニコニコと上機嫌に笑うカオスの足元に、いつの間にか小さな人形たちが歩み寄ってくる。
「オニイサン、オニイサン。ぼくタチトあそバナイ?」
「おいおい勘弁してくれよ、ネクロ。今は新作の玉で手を馴らしてる最中なんだから、人形で邪魔しないでくれ」
カオスは見上げて文句を言う。人形たちが繋がれている糸を辿ると、サーカス小屋の天井の縁に座って操り糸で人形を操っているネクロがいた。
「ふふ、ごめんごめん」
そう言って、ネクロはそのままカオスの上に落ちてくる。カオスは少し驚いたものの、両手を伸ばして難なくネクロを受け止めた。代わりに、先程までジャグリングしていたボールが足元に落ちる。
「あーあ、ネクロの所為で折角の新作の玉が落ちちまった」
ため息をつくカオスに、ネクロは改めて散らばった玉を見た。
「この玉たち、カオスの新作?」
ネクロの質問に、カオスはにっこりと笑って答える。
「ああ。今日死んだ魂をジャグリング用の玉にしてみたんだ。使用感もとても軽くていい感じだ。多分、生前中身のない空っぽな人生を生きてきたんだろうな。そういう魂は、ジャグリングの玉にとても向いてる」
上機嫌なカオスに、ネクロも抱っこされたままカオスの足元で倒れた人形たちを指さす。
「ボクも今日死んだ魂の中で、選りすぐりの可愛いやつを人形にしたんだ! 全部自分が世界で一番正しい、自分こそが世界の支配者だって思ったまま死んだ、とっても可愛い魂たちだよ。そんな可愛い魂たちが人形に生まれ変わって、ずーっとボクに操られる……ああ、とっても楽しいな」
ネクロの無邪気な笑顔に、カオスは瞬きをしてそれから「ははっ」と楽しそうに笑った。
「ネクロは本当に歪んでるな」
カオスにそう言われて、ネクロはぷくっと頬を膨らませた。
「えー?! カオスに言われたくないな。カオスだって魂に意地悪なことばかりするでしょ」
「俺は役に立たなかった魂を、役立つようにしてやってるんだから、感謝されてもいいくらいだと思うけどな」
「それを言うなら、ボクだって可愛い魂を更に可愛がってるんだから、感謝されてもいいと思うけどな」
互いにそう言い合って、カオスとネクロは視線を合わせ、くすくすと笑い出した。
「俺たち」
「本当に」
「「死神らしいよね」」
楽しそうな笑い声を響かせる二人の足元には、物言わぬ玉と人形になり果てた、哀れな魂たちが無造作に転がっていた。【終?】
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