さあいよいよ終りが見えてきました同人誌レビューコンプリート。
 残るは本作を合わせて3作品! 駆け抜けるぜ!
・東方顔合わせない合同 舞台袖の貴女(よつのふね)
 東方の合同誌にはユニークなコンセプトの作品が多数ありますが、本作はタイトルの通り、収録作品のすべてが前半と後半の2作品に分けた形式になっているというもの。そしてすべての作品は全部本誌の前半部分の第一幕と後半部分の第二幕に分かれているので、読者は本誌の前半部分と後半部分を行ったり来たりしながら読んでいくことになります。
 必然的に本作に収録されている作品は、「作品をふたつに分ける」「メインキャラクターは直接顔を合わせない」という制約のもとに書かれています。各々の作品はこの制約をさまざまな形で活かしており非常に読み応えのある一冊でした。また、あとがきによれば本作のコンセプトはコロナ禍によるソーシャルディスタンスを反映してもいるそうで、そこには「タダじゃあソーシャルディスタンスしてやるものかよ!」という心意気を感じます。
 それでは収録作品ごとに感想を。
・疫病神は味噌が好き/貧乏神は味噌が好き(全立氏)
 清蘭の団子屋をそれぞれ訪れる女苑と紫苑のお話。別に申し合わせたわけでもないのに同じことをしてしまうという姉妹あるあるが微笑ましい。帰った後にふたりして大量の団子を前に呆れてるんだろうなあ。
・紅と地の闇(天地ハル氏)
 地霊殿のおねえちゃん古明地さとりと紅魔館のおねえちゃんレミリア・スカーレットの対決! 本作の「メインキャラは直接顔を合わせない」というコンセプトを「後方で組織に指示を出す大将」という形で実現しているのが非常に上手い。
・柞のをひとつ/黄楊のをひとつ(ウオheieきん肉2氏)
 本誌では「木乍」と表記されていましたが、おそらくこの漢字だと思うので修正しています。「柞」は「ははそ」、「黄楊」は「つげ」と読むそうですね。「贈り物を選ぶ」というシチュエーションで屠自古と布都ちゃんがそれぞれ同じように櫛を選んでいるのに加えて、それぞれお互いをどう見ているかが垣間見えているのが好き。
・それぞれの余暇(ホオズキ氏)
 春の妖精リリーホワイトと冬の妖怪レティという対象的なふたりのお話。この二人だからこその「直接会わない」というシチュエーションが、季節感も相まってすっきりした読後感。
・魔法使いは待ち人の元へ向かう/古道具屋は待ち焦がれる(與七氏)
 「今頃なにやってるんだろうな、香霖……」「今頃なにやってるんだろう、魔理沙……」という出だしだけでとても魔理霖。直接顔を合わせないふたりの間に霊夢がいるというこのポジショニングが好き。
・歌/返歌(タニシドリ氏)
 ミスリグ。温かみのある絵柄とひらがなオンリーのテキストに、童謡のような素朴さを感じます。「そんなのかんけいないとばぐ!」は今後使っていきたい。
・聞けない独り/見えない独り(らや氏)
 ヘカーティアと純狐さんによるおのろけ劇場。とんでもない圧でのろけるヘカッさんと、クラウンピースを通して表現される純狐さんののろけが好対照。
・その瞳は世界を観る/その瞳は世界から観る(石川スペアリブ氏)
 原作の時点で対象的なふたりですが、その対象性と「直接会わない」というコンセプトを、「世界を俯瞰するもの」と「俯瞰される世界に住むもの」という形で再配置するというポジショニングがお見事。
・人形従者のユウウツ(AquaBooks氏)
 二次創作においては意外なカップリングを発見することが大きな楽しみのひとつですが、言われてみれば確かに芳香と磨弓はこうして見てみると対照的なキャラかも。そしてお互いの主人が狂人呼ばわりされてて笑った。
・my girl(liv氏)
 「顔を直接合わせない」というコンセプト、言われてみれば月と地球という遠く隔たった地にいるこのふたりにこそふさわしい。
・たがいのみち(逆村氏)
 阿求と小鈴といういずれ別れることが確定しているふたりをこのコンセプトに配置するのは簡単ですが、そこにマミゾウさんという第三者を噛ませることで「直接顔を合わせられなくなったあとも繋がっているふたり」になっているのがお見事。
・Re:日記/日記(双葉使用氏)
 影狼と幽香という珍しい組み合わせの一作。本誌のコンセプトで「入れ替わり」という方向性を持ってきたのがこれまた予想外。
・Distance to the Light/Light in the Distance(土露団子氏)
 こまえーき。作品の本文だけでなく、「背景色と文字色を白黒にする」というところが実に芸コマ。閻魔・死神というお互いの立場をうまく絡めつつお互いを想うふたりがとてもいい。
・こどものしくみ/フィッシングナイト(星野正一氏)
 大チルというカップリング自体は珍しくありませんが、このカップリング、ひいては大妖精にこういう角度で切り込んでこういう方向性で解釈しているのは非常に意外でした。
・九代目御阿礼の子、幻想郷縁起を書き終える事/あらゆる文字を追いかけて(ホプレス氏)
 「直接顔を合わせない」というルールであるなら、必然的にそこには「直接顔を合わせない二人を結びつけるもの」が必ずあるという。そしてこのカップリングの強固さを改めて感じられました。
・冬のおわり/春の始まり(奈矢氏)
 なんというか、かぐもこという王道カップリングには必然的にというか宿命的に慧音が文字通り絡んでくるんだなあ……と感じました。それこそ直接顔を合わせなくなっても。
・虚構/アイドル・アイドル(はるすみ氏)
 畜生界における重鎮、埴安神桂姫と吉兆八千慧のバチバチ。その焦点となるのは埴輪の戦士、杖刀偶磨弓。「忠誠心」、そして「橘の華」を中間地点としての構成がうまいです。
・その一発(もりっしー氏)
 直接顔を合わせなくても、その一発は届く。訓練生時代の清蘭と鈴瑚のお話。小道具のディティールが非常に凝っててとても好き。また、2作品ともに構図も合わせるようにしているのが芸コマ。
・疑い/得たもの(ケー平)
 それぞれ別のタイミングでお団子を買いに来る屠自古と神子の話。本作はむしろ直接顔を合わせなかった屠自古と神子でもって団子屋の老婆を深掘りしてそこからさらに屠自古と神子を深掘りするかのような、相互関係性な構造を感じました。
・The Gift of the Magus/泊鎖は月を繋げない(銅折葉氏)
 濃厚な咲マリ。瀟洒なメイドであるはずの咲夜さんの裏側とけっこうめんどくさい性格とそれに振り回されつつもいじましい魔理沙が実に咲マリでした。
・一番弟子(柳太氏)
 華扇ちゃんはともかく青蛾がまともな言動をしてるのに違和感を覚えてしまう……。神霊廟の面々がこういう穏やかな会話をしているという姿が新鮮な一作でした。
・魔法少女はミステリがお好き/我らが愛しき狂人によせて(かねうお丁氏)
 前半はなんだかんだでパチュリーにも懐いてるふうのフランちゃんに、後半ではレミリアの霊夢に対する甘え方に微笑ましくなれた一作。「顔を合わせない二人」であるフランちゃんとレミリアの思考の違いが面白かったです。
・瞳を開けて/瞳を閉じて(tog.氏)
 タイトルからさとこいと思わせといて実態はメディアリ。人形たちに流れ星に願い事をさせようと瞳を開けようとするメディスン、故障したミルク飲み人形の瞳を閉じさせようとするアリス。その「顔を合わせない」両者をペルセウス流星群で結びつけるのが美しい。
・おひらきは私が決めること/アンコールは鳴り止まない(満田鍬)
 本誌の最後を飾る一作。つまり第一幕と第二幕の終わりを告げるポジションに配置された作品なんですが、しっかり第一幕を終わらせて第二幕へ導く構成になっているのがさすが。ここで満を持して紫様が出てくるのもいいよな。そして第二幕終了からそのままアンコールかつエンドロールに入るこの流れ、思わず拍手してしまいました。
 今日はここまで。
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