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輝くシャンデリアに、楽器隊の生演奏、色とりどりのドレスに、いつもよりも弾んだ生徒たちの声音。
あまり大勢の人が集まる場や、こうした華やかな場所は苦手な私であっても少しだけいつもより気分が高揚しているのは会場の空気にあてられたせいか。
「どうぞ、お姫様」
「……」
ユージン様から差し出されたピング色の液体の入ったグラスを無言で受け取れば、カチンとグラスがぶつかる。
付き返したい衝動にかられたものの、グラスや飲み物には罪はないとそのまま口をつける。
「美味しい」
「ああ。だが酒だからな。ゆっくり飲んでくれ」
ユージン様の忠告が耳から通り抜けると同時に、シュワシュワと小さな気泡が弾けるベリー系のシャンパンが喉を通っていく。
そのまま目の前に並ぶ色とりどりのケーキの選別に取り掛かる。
力いっぱい、それこそ内蔵が口から出そうになるほどの強さで締められたコルセットのせいで、食べられる量が限られてしまっているのだ。
前回の舞踏会の時は友人たちとケーキを含むデザート全種類制覇に挑戦したものの、半分ほどでギブアップしてしまったのだ。
今回こそリベンジしよと友人たちと話していたのに、叶いそうにない。
「ショートケーキにシュークリーム、マカロンにカヌレ、チーズケーキは王道だから外せない」
「こっちにファニーリが好きそうな、苺とミルクティーのロリポップ、レモンチーズプリンもあるぞ」
やだ。悩む。どうしよう。
学園主催の舞踏会だ。当然ながら会場内に用意された軽食やデザート、飲み物などはすべて国内有名店のシェフが作っていたり、王族御用達の洋菓子店などが手掛けたものばかり。
普段の私であれば大口開ければ一口で食べられる小さくカットされたケーキであっても全部は無理だ。
ウンウン唸りながら、艷やかな真っ赤な苺が美しショートケーキを頼む。
「色っぽい…」
真っ赤な一度と、真っ白なクリームのコントラストが美しくて、フォークを入れるのを躊躇う。
十分眺めてから、一口。
滑らかなクリームとしっとりとしたスポンジ、苺の程よい酸味が絶品である。
二口で完食。さあ次は何にするか。
「たくさん食べたいなら俺が半分食べてやろうか?」
「……」
一つのケーキをユージン様と半分こ。
そうすれば私はたくさんのケーキを何種類も食べることができる。
しかしそれはマナーとしてはよろしくない。
むしろ家族以外とそれをやるのはとてもはしたない行為であると教えられている。
「婚約者同士なら別に問題ないだろ。
なんなら俺が食べさせてやろうか?」
「…遠慮します」
美味しそうな目の前のケーキをたくさん食べたい欲求に負けて、ユージン様の変態発言にうっかり頷きそうになった自分を殴り飛ばしたい。
背後にぴったりくっつく大きな駄犬の存在を忘れるべく、私は改めて二つ目のケーキを選びにかかった時だった。
「ユージン、こんなところにいたのか」
「さっき、ホール中央あたりで女子生徒たちが真っ赤な顔で倒れ込んでいたらしいが、何があったか知っているか?近くにいたんだろ」
「…俺が知るわけないだろ。酒にでも酔ったんじゃないのか?」
「私のお友達が教えてくださいましたわ。お兄様がはじめてパートナーを連れて参加されただけでも驚きなのに、その方の耳元で愛を囁いたんですって」
…いいえ、囁かれたのは呪いです。
耳が腐り落ちる妄言です。
そこははっきりと訂正させていただきます。
って、だめよ。
何やら背後でキラキラした雰囲気を醸し出したユージン様のご学友らしい集団に構っている暇はない。
夏らしい爽やかなレモンチーズプリンを顔の高さまで持ち上げ、角度を変えながら愛でる時間だ。
ああ、ここからでも香るレモンの爽やかな香りが素晴らしい。
「お父様とお母様にも紹介されたのでしょう?
でしたら妹の私にも紹介してほしいわ」
「今日こうしてパートナーとして連れ立っているということは、俺たちにも紹介してくれんだろう?」
ああ、やめてください。
私はわざわざ高貴なユージン様の妹やご友人たちに紹介するほどのっ身分も容姿も、ついでに話題性も持ち合わせていないのに。
それでも自分よりも遥かに身分の高い方々を無視するわけにはいかない末端貴族令嬢だ。
ユージン様の手が腰に周り、私はキラキラとした粉塵を撒き散らすユージン様の友人たちへと顔を向けた。
…手に持ったままのプリンは見逃してください。
「こちらファニーリ嬢だ」
さっぱりあっさりした紹介と受け、
「ファニーリ・キプリングと申します」とこれまた簡素な挨拶をした。
いいのだ、この場はあくまでも学園の行事の舞踏会であり、彼彼女らも生徒、生徒親族としてここにいるのだ。
私の無礼ギリギリ挨拶にも目を瞑ってくれるはずだ。瞑ってください、お願いします。
「一番端からフェルナンド、俺の妹マドリーヌ。隣のゴリラがライナスで、メガネがロレンソだ。覚えなくていい」
なんとも雑すぎるユージン様の紹介を聞きながら、目の前の方々を見る。
フェルナンド王子殿下はまさに王子様という理想容姿を体現する柔らかな金色の巻毛、薔薇色の頬、甘い顔立ちをしており、その隣にいるマドリーヌ様は目鼻立ちのはっきりしたお人形のような美しい容姿をしている。
そして服の上からでもわかるほどの鍛えた体をもつロリペタ好きのライナス様の隣には、幼さの残る愛くるしい顔立ちにまだ成長途中という感じの薄い体つきの少女がいて、
細いフレームメガネをかけた巨乳太もも好きのロレンソ様の隣には、ドレスから零れ落ちそうなほどの豊かな胸の妖艶の女性がいる。
と、不躾にならない程度に目の前の方々を観察していたら、なぜか目の前の六人の視線が私を見て固まっているようだった。
…え、あの、私の背後にでも何か視えてます?
変態の生霊?駄犬の怨霊?
「…見過ぎだ」
ユージン様の一言で意識を取り戻した友人たちは、改めて自分の隣にいる女性たちを紹介してくれた。
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