見張ってもらえたらかけるかもしれんという期待。
仕事を終え、駅のすぐそばの喫茶店に入ると、既に先に入って待っていた様子の大門が奥の席から手を振った。テーブルの上には水の入ったコップとメニューが置かれている。俺は真っすぐに男の向かいに座った。
「先に何か食べといて良かったのに」
「俺も今来たばかりなので」
大門はそう言うとすぐにメニューに目を落とした。そして、「お久しぶりです」とメニューに顔を向けたまま、俺を見た。
大門は白いシャツにスラックスを履いていた。隣の席には黒い鞄を置いている。どれも買ったばかりらしくぱりっとしていた。仕事に復職して二ヵ月経ったと言っていた。記憶を失う前と同じ職場に戻ったと言っていたが、以前使っていた服や鞄はもう使っていないようだ
「どうだ、仕事は」
「まあ、まあまあです。記憶の定着が以前よりも良くないことを上司に説明して、今は比較的、単純作業ばかりをしています」
男はメニューに目を落としたまま答えた。
「ドブさん……ドブさんは、煙草吸うようになったんですか」
「あ? ああ、いや。昔から吸ってたよ」
「家は匂いがしなかったような」
「お前と暮らしている時は吸わないようにしてたの」
ふうん、と大門は言い、俺にメニューを見せた。ウェイターが来て一通り注文を済ますと、大門はまた俺に向き直った。
「ドブさんていつから煙草吸ってたんですか?」
「中学くらいからかな」
「へえ、俺も吸おうかな」
「やめとけ今時、金と健康を無駄にするだけだ」
「でもドブさんだって吸ってるし」
「俺は良いんだよ」
「昔の俺も吸ってた?」
大門は家を出た時と同じ目で俺を見ていた。
「さあな。それよりお前職場ではどうだ、いい人はいるのか」
俺は水を飲みそう言った。言いながら、他に言いようがなかったのかと自分でも思った。
「いい人? みんないい人だけど……」
「特に親しい人とかはいねえのか」
「それなら同期で入社した安田さんかな、何かと気にかけてくれるいい人だよ」
「へえ」
「この間、安田さんが紹介してくれたドラマを見たら結構面白くてさ、なんだっけ、タイトル忘れたけど。でもなんていうか、おもしろいと思うポイントが合うっていうか、あの人が勧めるものは間違いないなって思う」
「よかったな」
ウェイターが来て、大門の前にミートソースのパスタを置き、俺の前にも同じものを置いた。
う~んってなっちゃったのでここでストップして、う~んう~んてするやつやります。