第三章
下書きだからメモ転々と置いていく
花吐き病ご都合設定変更する。
小さい頃からそうだった。思えば物心ついた時から本当のことを伝えるのが苦手になっていた。今思うと五感が人よりも発達していたからだと思うけど、他の人の耳に聞こえるよりも前に音が聞こえたり、遠い距離からでも人物を特定することができたり、風邪の向き、匂いとかでも天気が分かったりしていた。それを小さい頃は、素直にいろんな人に教えていたりしていた。
きっとそれがダメだったけど、小さい頃の俺はそれを理解できなかった。
「嘘つき!そんなの見えないし、聞こえないよ!」
「また世一くんが嘘ついた!」
本当なのに、誰も信じてくれなかった。
「嘘ついてないもん!本当に聞こえたの!俺、嘘ついてないもん!」
何度も嘘をついてないことを言ってもみんなは信じてくれなくて俺はムキになった。だからじゃないけど、そういうことがあったのが小さい頃の嫌なこととして思い出に刻まれている。本当に嫌な記憶だと思う。こんなことを覚えてなくていいから、楽しい記憶を覚えていたらいいのにって思う。
・世一の過去を書こうと思ったけどここ多分推敲したら無くなっちゃうかもしれない。原形とどめてくれるか分からないけど一応書いておく。
・世一の幼少期に嘘つきって言われたことがあって本当のことを言うことも、自分の本当の気持ちを隠すようになったことにしようかなって思うけどエピソード的に保留。
本当のことを言っても信じてもらえないし、嘘つきって言われる。だから自分の感情をコントロールしたし、本当のことを言うことをせずに隠すのが上手くなった。だって本当のことを言っても信じてくれないなら隠して自分だけが知っていればいいとそう思ったから。
でもカイザーに告白する時は自分だけの感情で自分だけが知ってるだけでは思いが成立しないから、だから自分の隠していた心をちょっとだけ曝け出しだしたのにこれだ。やっぱり言うんじゃなかった。昔と今じゃ状況は違うけど、俺の思いを相手に伝えたところで何も変わらないし、だったらずっとこのまま騙されたままでいいかなって思う。
・カイザーに告白したことを後悔する世一の心境を後でちゃんと書く
自分を守りたかったけど、それより初めての恋が世一を動かしたけど結論はカイザーの嘘によってそれは壊された
世一は本音を全部隠すことを決めた。いや、本音は言うけど自分が騙されていることを知っているということをカイザーに言うのも聞くのもやめた。これ以上傷つきたくないから。真相を知ったところで傷つくのは自分だし、騙されたままだったらカイザーの隣にいることを許されるということであれば俺は騙されている男のままでいい。カイザーは俺のことが嫌いで、好きって言ってもそれはカイザーの心に響かない。
カイザーは嫌いな男と付き合っているけどどんな感情なんだろう。本当にBLTV映えするからという理由で嫌いな男と付き合ってくれているのか。でも…俺はそれに甘えることに決めた。初恋は実らないというのは本当だった。
「明日で花吐き病と診断されて1ヶ月か……」
遅発性の花吐き病はその進行はとても遅いもので、1日に多くても20枚の花弁を吐き出すことで症状は治まっていた。進行性の花吐き病と比べるとそれはもう、とてもとても遅い症状の変化だった。進行性の花吐き病は、発症から1週間で花弁ではなく花を吐き出すらしい。花弁を吐き出すだけでも苦しいのに、花を吐き出すなんてどんなに苦しいのだろうか。今までだってずっと苦しくて、生理的な涙がボロボロと流れてくるし、花で窒息する思いしちゃうのに。
「花吐いても死なないから怖いよな、この病気」
普通花を吐き出す、また喉の奥に花が存在しているなんて恐ろしいものだ。窒息しかけてもなお、好きな人と結ばれることを願うなんて…どんな呪いだよって思う。俺の場合は付き合っているのに白銀の百合を吐けないんだから。誰か一人でも俺が鼻は奇病であることを知っていたら、カイザーと本当に思いが結ばれてないと気づく人がいたのかもしれないけど、生憎誰一人として俺が花吐き病であることを言っていない。
俺みたいに付き合っているのに白銀の百合を吐けない人ってのはいるのかな。こんなケース稀だと思うけどな。
「本当……嫌いなら嫌いって振ってくれた方が良かった」
人の恋愛をウケがいいからってやめてくれって話だ。どんだけ捻くれてんだよ、お前は。数多なる告白を受けてきてその感性がぶっ壊れてんじゃないかって思う。
嫌いって言われたら俺はカイザーへの恋心を諦めるために行動を始めたかったのに、これじゃあ生き地獄だ。諦めたくても、付き合っているとされている俺は毎日付き合っている距離で接されるし、距離が近すぎる、付き合っている人の距離でいるのにその恋を諦めろだなんて拷問の域だと思った。これで付き合わなくて距離が離れてくれた方が楽だったのに。
「惨めな思いをして花と恋心に溺れて死ぬのは、怖いな……」
本当の自分を少しだけ曝け出したからだ。俺が自分を出さなければ良かったんだ。あの日の俺も、今の俺も、状況は違うけど一緒だ。気持ちに鍵をかけて、自分はまだできると自己暗示をして。あぁ、明日も偽りの付き合いと、カイザーへの感情をコントロールする。絶対に自分がカイザーに騙されているっていうことをバレちゃいけない。
だって、一緒に、少しでも長くいたいと思うのは、おかしいことじゃないだろ?
・花吐き病進行