「はぁ……」
「……なに、食べたいなら追加で注文する?」
お皿に残った最後の一本の焼き鳥に手を伸ばした湯神くんの声で、自分が声に出してため息をついていたことに気づく。
「ううん、大丈夫。食べていいよ」
「若ちゃんはスポーツ記者、梨緒ちゃんは外交官。湯神くんは宇宙飛行士でしょ?みんな具体的になりたいものがあるんだなぁって思って」
「そう言うあなたは何になりたいの?」
「私?私は……」
何かになって働いている自分を想像しようとしたけれど、上手くできなかった。無理やり当てはめてみてもヘタなコスプレみたいでしっくりこない。
宇宙飛行士だとか、人類に友達を作るとか、突飛だけれどハッキリとした目標がある湯神くんと違って、将来の私はまだぼんやりしている。
でも、今の私がどうなりたいかなら何となくわかる気がした。
私は、
「宇宙人になりたい」
だって私が宇宙人なら、湯神くんは私を探して会いに来てくれるでしょう?
私が宇宙人なら、友達になってくれるでしょう?
……なんて理由、言えるわけないけど。
あ、でも湯神くんは宇宙人を人類の友達にしようとしてるけど、自分は友達になるつもりはないのかもしれない。だとしたら宇宙人になっても友達にはなれないか……。
そう思ったとき、何かが引っかかった。
私、なんで湯神くんに会いに来て欲しいんだろう。
なんで湯神くんと友達になりたいんだろう。
……私、本当に湯神くんの友達になりたいのかな。
『友達』でいいのかな。
私が本当になりたいものは、もしかしたら
「宇宙人なら、もうなってるだろ」
「へ?」
思考を遮る予想外の言葉にひどく間抜けな声で応えてしまった。
「他の銀河系の生物から見たら宇宙人だよ、俺もあなたも」
そうじゃない、と大袈裟に肩をすくめてみせた。
「わかってないなぁ。それだと友達になれないじゃない」
「誰と」
「湯神くんと」
まったく、これだから湯神くんは……と言いつつビールを口にしながら数秒前の自分の発言が脳内でリフレインする。
何だか恥ずかしいことを言ったことに気づいたらむせてしまった。咳き込む私をよそに湯神くんはいつもと変わらないトーンで言う。
「別にならなくていいだろ。そもそも友達じゃないとダメなわけ?」
その問いかけに呼応して、先ほど自らした問いかけを思い出す。
私、本当に湯神くんの友達になりたいのかな。『友達』でいいのかな。
湯神くんは頑なに私を友達と言わない。高校生のときも、大学生になった今も。
それなのに定期的に平楽の高座を一緒に観に行ってはこうして一緒にご飯を食べている。知り合いというには親密過ぎる気がするのは私だけだろうか。
そして、湯神くんと会う理由がなくなってしまった思ったあのときに感じた気持ちは、友達というには特別過ぎるような気がする。
「……宇宙人以外になりたいもの、見つかったかも」
「湯神くん、私の名前知ってる?」
「当たり前だろ」
「じゃあ、言ってみて」
「……なんで」
「だって湯神くんっていつも私のこと『あなた』って呼ぶし、綿貫さんって呼ばれたことすら数えるくらいしかないんだよ」
「だからって知らないわけないだろ」
「じゃあ、呼んでみてよ、下の名前で」
「……あなたこそ、俺の下の名前知ってる?」
「もちろん」
「じゃあ、呼んでみなよ。俺の気持ちがわかるから」
何だか妙に気恥ずかしい。ただ、名前を呼ぶだけなのに。
でも、もし湯神くんが言う『俺の気持ち』がこの感情のことを指すのであれば、やっぱり私がなりたいものは宇宙人ではない。
私がなりたいもの。
それは、湯神くんに名前を呼んでもらえる関係。
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05:58
玲那
うーん
54:09
玲那
タップミスが多くて湯神くんに一瞬「オラ」って言わせてしまった
88:54
玲那
なんか最初に考えてたものと変わってきたな
103:34
玲那
眠い
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初公開日: 2023年10月07日
最終更新日: 2023年10月07日
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お題「名前を呼んで」で湯ちひを書く。元々メモに残してた台詞をベースにします。