さて今日は非常に忙しい日でした。オタクは1日に予定を詰め込みがち。
なので今日は書くことが多いので、無駄に行数を消費してると無駄に体力を消耗するのでさっさと本題に入ります。
まず1本目はこれ!
今敏監督のカルト的な名作、今回は公開25周年を記念して全国51館で公開されるとのこと。
この作品も今やなかなかスクリーンで見ることができないので非常に貴重な機会ということで見てきました。
貴重な機会というだけあって、本日の夕方の回は満席となっておりめでたい。
さて感想なんですが、1998年ということでさまざまな部分に時代の流れを感じます。
たとえばパソコン。もう最近では存在も知らない人も多かろうと思われるCRTモニタとかアドレス直打ちとか、なんかもう見ててひとりでインターネット老人会気分になっててとてもつらい。
ほかにも今ではおなじみのスマホは出てこない、家電がある、ノーパソもやたら分厚い、秋葉原の背景もまだ電気街の様相を色濃く残しているなど、なんかもう容赦ない時間の流れによる本作の演出意図とはまったく異なる方向性の恐怖の前にわたくし生まれたての子羊のごとく震えておりました。
真面目な感想を書くと、本作もまた昨日見た「パプリカ」と同じく「現実の脆弱性」を強く感じさせる作品だと思います。しかもその脆弱性は、例えば薄いガラスのようにパリンと割れるものではなく、泥沼のように突然ぐにゃりと安定性を失ってしまう不気味さと不快感があるのが好き。方向性としてはP・K・ディックでデヴィッド・クローネンバーグですよね。
「パプリカ」が非現実的なイメージの横溢が印象的だったのに対し、本作は日常に潜む些細な違和感から傷が広がるように悪夢が溢れ出すかのような気持ち悪さがあって好き。
死んだはずの熱帯魚が生きてたり、カーテンの向こうの景色が違ってたりなどなどのほかに、主人公である未麻を装った何者かによる掲示板の書き込みがあったりというのがありましたが、こういうなりすまし行為って今の時代なら簡単にできることなんだなあ……と今この作品を見たタイミングならではの恐怖も感じることができました。
また、本作における現実と幻覚の織り交ぜ方がまた上手いんですよね。そもそも未麻が女優、つまり「自分以外の人物を演じること」を日常的に行っている人物であることがまた話の幻惑度を上げているという。
本作は現実と幻覚が入り混じってそのまますべてが曖昧に……というわけではなく、いわゆるミステリーとして真犯人や犯行を曖昧なままにせず、意外なくらい素直に種明かししています。
真犯人は未麻のマネージャーで元アイドルのルミ。「主人公のいちばん近くにいた味方が犯人だった」というオチはそこまでショッキングなものではありませんが、ルミもまたかつてアイドルだった自分の幻像を未麻に重ね合わせて見ており、それがだんだんと常軌を逸した行動に出るようになったというのが本作の真相。つまり彼女もまた現実と幻覚、さらに言うならアイドルから女優に転身したものの不本意な仕事からストレスを重ねていた未麻と同じように自身の理想と現実とのギャップによって狂ってしまった人物というわけです。狂い方としてはストーカー男のほうがまだマシだったという……。
このように今敏監督作品は我々がよりどころとする「現実」というものの脆さを強烈なビジュアルで見せてくれる作品だと言えるでしょう。
そして次に語るのは、我々がよりどころとする「現実」を侵食する存在と、信仰を武器に戦ってきたひとりの男の物語。
2023年。極東の島国、日本。そのさらに奥地に存在する場末の映画館、サンサン劇場。
これから語られるのは、我々の「現実」を侵食してくる存在「悪魔」と、実在したエクソシストであるガブリエーレ・アモルト神父、そしてサンサン劇場に集いし信仰の心持つものたちの、真実の記録である――。
毎回さまざまな作品をさまざまな形で応援上映しているサンサン劇場ですが、今回はまさかのラテン語縛り。この人類初(知らんけど)の試みの報せは業界内を駆け巡り、yahooニュースに取り上げられたばかりか、海を超えて本作のプロデューサーであるジェフ・カッツ氏に届くという事態に発展。
というか今帰宅して冷静になって考えると、こんな企画が実現してしまうサンサン劇場こそ悪魔に取り憑かれているのでは……?と思わずにはいられません。
その証拠に待合室はこの状態です。
ホワイトボードには「ヴァチカンのエクソシストラテン語応援上映学習用ホワイトボード」と書かれており、見る間にラテン語ガチ勢による例文が書き込まれていきます。わたくしも一筆失礼しました。
さらには思いつきで思いついたセリフと「主の祈り」を書きなぐったラテン語カンペを配布させて頂きました。お役に立てたら幸いです。ちなみに現物はこれ。
なお、発音に関してはgoogle先生に丸投げしたので、除霊に失敗して明日とかに体に謎のミミズ腫れができてても当方はいっさい責任を負わないものとします。
そのお返しとしてさまざまな除霊アイテムをいただきました。
カンペのお返しにもらったカンペ。カンペ交換とか塚口でしか発生しないレアイベントなので死ぬまで語り継ごうと思います。
サイリウム、メダイ、お札、イラスト付きうまい棒、イラスト付きコーヒー、イラスト付きお菓子。
ちなみにイラスト付きコーヒーには赤い羽根が仕込まれているという凝りようでオゲェェとなりました。
さらに劇場から公式カンペの配布。なんで映画見るのにカンペ3枚も持ってるんだ……。
また待合室内にはカソック&シスター服姿のブラザー&シスターが集結しておりさながらお葬式の様相を呈していますが熱気は飲み会。というかアモルト神父が3人くらいいた。
この状況を端的に表現するならばアレですね、完全に憑いてる。悪魔が。
悪魔が憑いてなきゃ誰が映画見に行く前日に徹夜してラテン語のカンペなんか作るんだよ……。
このようにみんなして情熱という名の悪魔に取り憑かれており待合室は一種のトランス状態に。今なら七色に輝く山脈とか見えそうですがそっちは宗派が違う。
もちろん正気を失っているのは観客だけではありません。
上映前のスクリーンはこんな感じ。
時代遅れのPS Vitaで撮影してるのであんまり良く見えないかも知れませんが、スクリーンには公式カンペに書いてあるラテン語例文と注意文(もちろんラテン語)が流れています。完全に悪魔憑きの所業ですね。
そしていよいよ上映時間……と同時に今回のクレイジーレギュレーションの仕掛け人であり、シアター4全体を悪魔憑きに陥れた張本人「映画の悪魔」とも呼ぶべき存在が!
「gratias(ありがとう)!!」のシャウトとともに登場した戸村支配人に場内割れんばかりの拍手が。こないだ補修したばっかりの待合室の壁が割れそう。
そしてすでにラテン語縛りは始まっている! それは戸村支配人の前説も例外ではありません。
戸村支配人、ステージの上のノーパソとカンペを見ながらラテン語で前説開始!
おそらくサンサン劇場史上最高の難易度となったであろうラテン語縛り前説に挑む戸村支配人に、観客席からは「fac optimum(がんばって)!!」「Ne perdas(負けるな)!!」の声援が飛びます。相変わらず上映前のカロリー消費が激しいなあ……。
そして見事にラテン語での前説を成し遂げた戸村支配人に万雷の拍手を浴びせながら、いよいよ「ヴァチカンのエクソシスト」上映開始……ではない!?
ここにきて最大級のサプライズ! なんとジャンボ鶴田のBGMに乗せて本作のプロデューサーであるジェフ・カッツ氏からのメッセージ映像が!!
これは完全にリークなしのサプライズだったのでもう場内がすごいことに。というか半分はプロレス愛語りになってたのが実にオタクで笑えました。とりあえず氏が長州力が好きなのは理解した。
あと氏の飼っているわんこ自慢が始まって笑った。
これはもう8割がた決まったようなもんですね、来日。戸村支配人vsジェフ・カッツ氏の電流爆破デスマッチの可能性すら浮上したと言っていい。
さて、この記事を読んでいるみなさんは忘れてはいないでしょうか。まだ上映始まってません。
この時点ですでに今日1日分のカロリーは確実に消費しています。WHOは早急にサンサン劇場における健康効果を周知すべき。
上映前の段階でこれだけ盛り上がってるんだから、いざ本編が上映されたらどうなってしまうのか。
前代未聞のラテン語縛り応援上映は実現するのか。
それらすべての疑問の答えを己の信仰心に託して、いざ上映開始!!
結論から言いますといやー楽しかった!!
そりゃまあサイリウムの光で必死にカンペ見たり、慣れないラテン語の聖句で舌がもつれそうになったりと苦労もありましたが、それもまた楽しみのひとつであり神の与えたもうた試練であるといえるでしょう。
基本はもう「gratias(ありがとう)!!」「fac optimum(がんばって)!!」「Ne perdas(負けるな)!!」とアーメンが言えればなんとかなります。愛と感謝があればOKですよ。
個人的には冒頭で豚が射殺されたときに「Porcus(豚)ーーーッ!!」って叫べたのと、個人的に本作で一番好きなセリフである「Mea visio nocturna est Gallia Mundi Calicem concilians.(私の悪夢はワールドカップのフランス優勝だ)」がなんとか言えたのが良かったです。惜しむらくはラストのアモルト神父による捨て身のメガンテのシーンで「Fides est mori et inveniens.(信仰とは死ぬことと見つけたり)!!」って叫びたかった。
あとから知ったことですが、なんかやたら流暢なラテン語が聞こえた気がしたと思ったら、外国の方が参加しててガチのラテン語で応援してたらしいですね。
ラテン語縛りということで発声の機会や量は通常の応援上映に比べるとやはり少ない感じでしたが、そこは鈴とサイリウムでカバー。特に鈴は、「やばい雰囲気になってくるのに合わせてだんだん音が大きくなっていく」というのを誰からともなくやってたのが実に一体感。この一体感こそ塚口よ!
そしてラストバトル、そこかしこから祈りの言葉が聞こえてくるのが「みんなで戦ってる感」があってとてもいい。これですよ。アモルト神父、トマース神父とともに我々は覚えたてのラテン語で恐るべき魔神・アスモデウスと対決していたんですよ!
通常、スクリーンは作品と我々を隔てる絶対的な壁となります。その壁を通り抜けることはできません。
しかし、塚口の応援上映では、スクリーンは作品と我々とをつなげる窓となるのです。我々はあのとき、確かにスクリーンの中で祈りを捧げていた!
……といったように、うっかり神の国に召されてしまいそうな多幸感の中、前代未聞の試みであるラテン語縛り応援上映は無事に幕を閉じました。
上映終了後、劇場を後にする皆さんの顔の晴れやかなこと! そう、本作はホラーではあるものの、後味が非常にすっきりなのも魅力なんですよね。
「ヴァチカンのエクソシスト」、次は日本語応援上映が控えているのでまだまだ楽しめそうです。