夕焼けの中、ルーミアと妖精たちはリズムに乗って弾幕ごっこを繰り広げます。夕闇に染まる木々のあいだを、夏の熱気と飽きの涼しさの入り混じった空気の中を、色とりどりの弾幕と妖精たちの歓声が彩ります。その光景は、まるで過ぎゆく夏を惜しむお祭りのようであり、これから来る秋を迎えるお祭りのようでもありました。
昼間でも鬱蒼としている魔法の森ですが、ルーミアたちが弾幕ごっこを繰り広げているその一角だけは、まさにお祭り騒ぎの賑やかさです。その賑やかさにつられて妖精や妖怪たちがやってきて、その騒ぎはどんどん大きくなっていきました。
騒ぎに参加しているのは、妖精たちだけではありません。たくさんの妖精や妖怪が集まっての弾幕ごっこから発散される妖気に刺激されたのか、この時間帯には開かないはずの花や伸びてこないはずのキノコまでが顔を出してきました。その様子は、さながら妖精のダンスパーティーのよう。
「キノコがいっぱい! お腹空いてきちゃった。でも、なんだか危なそうなキノコばっかり……」
そんな呑気なことを言っているルーミア。今日はほとんど1日じゅう踊りながら弾幕ごっこを続けているというのに、まったく疲れません。それどころか、逆に踊れば踊るほど力が湧いてくるようです。
と、そこに見覚えのある人影が顔を見せました。
「おお、おまえはいつもの黒いやつじゃないか」
魔女のトレードマークである黒の三角帽子にほうき。現れたのは、魔法の森を根城にしている普通の魔法使いこと、霧雨魔理沙です。
「あ、魔理沙だ。そういう魔理沙も黒い服だよ?」
「私が黒いのにはちゃんと理由がある。これは魔女の正装だ」
「そーなのかー?」
ふたりとも金髪に黒い服なので、まるで姉妹のように見えます。
「そうだ、おまえは何しにこんなところまで来た?」
「お散歩だよ!」
「おいおい、ここは幻想郷で最悪クラスのお散歩スポットだろう。」
元気良く答えるルーミアに、魔理沙は呆れ顔。
魔理沙が言うように、瘴気渦巻く魔法の森には人間はまず足を踏み入れません。妖怪だって、下手に入り込めば迷って出られなくなってしまうでしょう。そのため、魔法の森でこれだけ大量の妖精がお祭り騒ぎをしているなんて本来ならありえないことなのです。
「人里の方とか、もっといろいろいい場所はあるんじゃないか?」
「人里? うーん……」
ルーミアの頭の中に、こわいこわい紅白の巫女の姿がよぎります。
「えっと、なんとなく今のわたしは人里に行っちゃいけない気がする!」
その言葉に、魔理沙は不思議そうに片眉を上げました。
「今のお前は人里に行っちゃいけない……? ふむ、何やら怪しいな……」
妖怪がみだりに人里に近づくとどうなるかは言うまでもありません。けれど、妖怪の中には人間に紛れて暮らしているものや、商売などのために人里にちょくちょく顔を出しているものも少なくないのです。
ルーミアはというと、その幼い容姿とのほほーんとした性格からか、なんかもうそのへんの子どもと同じ扱いを受けています。少なくとも悪さをしなければ、紅白の巫女が飛んでくることもないはずなのです。
魔理沙はそのあたりに、なにか怪しいものを感じ取ったようでした。
「なんだか体がうずうずしちゃって! 弾幕勝負がしたくてたまらないの! ところで魔理沙、今暇ヒマなの? だったらちょっと付き合ってよ!」
そう言うルーミアは、もうすでにやる気満々と言った感じです。こりゃこれ以上話を聞きそうにないな、と魔理沙は判断しました。
「今晩は宴会があるし、そんなにヒマじゃあないが勝負ならしてやろう。今のお前はなんだか少し危なそうだからな」
白黒の魔女が懐から取り出したのは、妖怪なら誰もがその威力には一目置いている魔理沙の自慢の武器、ミニ八卦炉。八卦炉はたちまち淡い輝きを放ち、魔力の重点も十分といった様子です。
「妙なテンションの妖怪がいるんなら、人間代表として大人しくさせなくちゃな!」
「やったー! 弾幕ごっこだ! たたかいだー!」
八卦炉の輝きを前にしても、ルーミアは怯むどころか無邪気にぴょんぴょん飛び跳ねながら喜んでいます。