「ねえ霊夢、お願いがあるの!」
いつもはのんびりほわほわしている印象のあるルーミアですが、今日はなんだかやたら元気に満ち溢れているというか、テンションが高い様子です。
(妖精の様子がおかしいのはわかったけど、ルーミアみたいな妖怪まで……?)
いつもと違うルーミアの様子に、霊夢は胸の中の疑念が一回り大きくなるのを感じました。
「ちょっとだけでいいから、弾幕ごっこに付き合って!」
「あー? 私はあんたと違って暇じゃないんだけど。私は宴会の買い出しの帰りなのよ。この荷物が見えないの?」
そう言う霊夢ですが、ルーミアの方はもう完全にやる気になっている様子です。
「霊夢がイヤでもわたしはやる気満々だもん! 行くよー!」
「やれやれ……」
まあ言っても無駄か、と霊夢は小さくため息をつきました。まあ、どのみちこっちの方が話は早いか……そう判断した霊夢は、荷物を木の陰に置いてお祓い棒を構えます。同時に袖からばらばらばら……と無数のお札がこぼれ落ち、二人の周りを取り囲みました。
戦闘態勢に入った霊夢を前にしても、ルーミアはまったく怯む様子を見せません。それどころか、まるで音楽に合わせてダンスを踊るようにリズムを取り始めました。
「たん、たん、たん、はい!」
四方から襲ってくるお札を、ルーミアは軽くステップを踏むようにしてかわします。空中でくるんと身を翻しながら、流れるような動きで妖気弾を放ってきました。
「……!」
それだけの動作で、霊夢はルーミアの様子がいつもと違うことを確信しました。「まるで音楽に合わせてダンスを踊るように」ではなく、ルーミアはほんとうにダンスを踊っているのです。
ルーミアの様子がおかしいというのは、急に性格が別人のようになったとか、いきなり強くなったとかいうことではありません。戦い方がまったく違うのです。
霊夢はルーミアと初めて出会った紅霧異変から、何回もルーミアと弾幕ごっこをしたことがあります。そのため、霊夢はルーミアの弾幕ごっこのクセや使ってくるスペルカードの種類はもちろんのこと、弾幕の避け方や安全地帯までしっかり把握しています。
しかし、今のルーミアの動き、弾幕の張り方、特にこのダンスを踊るようにして弾幕を撃ってくるという戦い方は初めてのものでした。
ルーミアは、言ってしまえば弾幕ごっこはあまり強くはありません。本人はあまり勝ち負けは気にしていないようですが霊夢との弾幕ごっこには一度も勝ったことがないくらいです。
しかし、今のルーミアの動きは、正確にリズムに乗っていました。まるで武術の達人が相手の攻撃に対して勢いや力ではなくリズムでいなしてしまうように、ルーミアは無駄な動きもなく霊夢の放つ弾幕をかわしながら攻撃を仕掛けてくるのです。
霊夢は自分の中の警戒度がひとつ上がるのを感じながら、袖からこぼれ出たお札に力を込めます。霊力を流し込まれたお札は集まり固まり、球体に変化しました。
飛び交うお札の嵐の次に霊夢が放ったのは、紅白の陰陽玉。陰陽玉は地面や木々の間を跳ねながら、不規則な軌道を描いてルーミアに襲いかかります。