そう、僕はそこで、神様の声を聞いたんだ。
「お前は、なにかに導かれるように創造維持神の前に近づいていった。そして、防護ガラスに手を触れた途端、気を失ってしまったのだ」
「1号さま……僕、そこで神様の声を聞いたんです」
「なんだと!?」
1号さまのそんな大きな声を聞いたのは初めてだった。でも、僕の頭の中はそのことに驚く余裕なんてなかった。そのときの記憶が、まるで爆発するみたいに頭の中に溢れてきたからだ。
考えてしゃべっている余裕なんてなかった。腕だけをかろうじて伸ばして、掴みかかるようにして1号さまにすがりついた。頭の中に次から次にあふれてくる記憶、そして感情をなんとかして吐き出さないと、一瞬で頭の中がはち切れてしまいそうだった。
「聞いた……わかりません、あれは言葉じゃなかった、でも確かに神様の声だと感じたんです! 神様は……神様の言葉は悲しみと恐れでした、とても深い、僕なんかすぐに飲み込まれてしまいそうな深い悲しみと恐れが……」
「落ち着け、13号! 神は……お前は神の言葉を聞いたのか!?」
「神様も引き裂かれているんです!(傍点)」
「……!!」
1号さまが息を呑んだ。一気に自分の頭の中身を吐き出してしまった僕の体からは一気に力が抜けて、両腕をベッドの上に投げ出した。
全身にぐっしょりと汗が滲んでいるのが、まるで他人事のように思えた。はっとして、自分の左側を見る。――ほんの一瞬、最悪の妄想が頭をよぎった。そこには誰もいなくなっている。
見慣れた弟の寝顔。つい今しがたの僕の取り乱しようなんかまったく気づいていない安らかな寝息を立てている弟の頬に、僕は触れずにはいられなかった。
弟はここにいる。弟はここにいる。それを何回も確かめるように、弟に触れる。むりやり体を起こして、自分の体を弟の上に投げ出すようにして、弟の体に触れる。そうせずにはいられなかった。弟はここにいるということを確かめずにはいられなかった。
1号さまや看護師の先生が僕を止めようとしている声や僕の体を押さえつけようとする腕が、100万キロ先に感じられた。僕にとって弟の感触と体温だけが世界の全てで真実だった。その真実にすがりついていなければ、僕は神様に触れたときに感じた悲しみと恐れ……この世でいちばん大切なものと引き裂かれてしまう悲しみと恐れに飲み込まれてしまう。それが――現実になってしまう。
僕は泣き叫びながら、弟にすがりついた。
まるで……天から垂らされた蜘蛛の糸にすがりつく、罪人みたいに。