ようやく去年の紅楼夢の同人誌レビューが終わったぞ……。
・さよなら、残光(すずだんご)
本作は正確には、紅楼夢直前に在庫が残り1個となったということでboothで注文した作品となりますが、タイミング的にここで紹介。
本作はソノシートです。
このブログを読んでいる人の年齢層がどういうものか、正直まったく想像がつきませんがソノシートってわかる人います……?
このサークルさんがどういう作品を作っているサークルさんかはわかってたはずなんですがこの令和の世にソノシートを出すとは読めなかった、この海のリハクの目を持ってしても。
だってソノシートですよ? わたくし人形使いはたまたま以前のバイト先で現物を触ったことがありましたが、普通に生きててソノシートの現物を見る機会なんて食パンくわえた転校生と曲がり角でぶつかる確率よりも低いですよ?
ソノシートを知らないボーイズ&ガールズに説明すると、ソノシートとはビニール製のペラッペラのレコード盤。wiki情報によればソノシートは朝日ソノラマの登録商標だそうで、テレビ雑誌の付録についてたもの。要は簡易的なレコードです。
紅楼夢でサークルすずだんごの代表・土露団子氏に話を伺ったところ、国内でソノシートを作っている工場のラスト1か所がつい最近なくなってしまったということで海外の工場に依頼したとのこと。行動力の化身。
というわけで作品自体は紅楼夢以前に手に入れてたんですが、なんせソノシートの現物を実際に使うのなんて初めてなので全然上手く行かず、先日ようやくヘルプページの記述やら何やらを参考にしてなんとか鳴らせたのでようやくレビューが書けます。いちおう聞けなかった人のために製品には音声データのURLが記載されてはいたので音声データ自体は聞いてたんですが、やはりこれは自力でソノシートから聞いてこそと思ったので粘りましたよ。なので感動もひとしおでした。
さて感想なんですが、本作は秘封の掌編小説+ソノシートで構成されており、ソノシートに収録の音声は秘封の二人がゴミ捨て場で拾ってきたオタマトーンで遊んでいるという他愛もないもの。
しかし掌編小説の中では、なにがあったのかは明記されていないもの人類はメリーを残して滅んでしまっています。このソノシートに収められたいるのは、そんな中で残された秘封倶楽部のふたりの他愛のない日常の記録。
本作はそうした「すでに失われてしまった日常」を追体験できる、いわば「体験をパッケージ化した作品」と言えるでしょう。
しかし本作はそこで終わらないんですよ。なぜなら、本作におけるソノシートはあくまで消耗品。つまりいずれは、さらに言うなら他の記録媒体に比べてはるかに短い時間でデータが失われてしまうことが前提となっている「いずれ失われてしまう記録」であるところまで含めて作品となっているんです。
以前にこのサークルさんが出していた「こいしちゃんのテレフォンショッキング」もそうでしたが、そもそも情報や記録をなるべく長く保存しておくことを目的としているはずの各種記録媒体の中から、あえて意図的に「記録内容があえて失われてしまうもの」を選ぶことで、収録されているデータを「一時的にしかアクセスできないもの」にしているわけですね。東方的な言い方をすれば、いずれ幻想入りする作品。
そういう意味では、本作は「メディアが消耗してデータが再生できなくなって初めて完成する」「価値が失われることが前提となっている」という非常に特異な作品だと思います。
今日はここまで。