私は公園の片隅で震えていた。逃げて来たけれど、何をするにも脚をケガしてるし雨が降りしきるのでジッとしているしかない。
そんな時に彼に出会った。
「迷子?お家は?」
そう聞かれたけれど私はジッと見上げる事しかしない。雨で寒いのもあるけれど、逃げて来た前の家での出来事があるからだ。
私が物心ついた頃にはお婆さんと2人暮らしだった。そこは幸せで私が呼べばお婆さんは嬉しそうに、色々とお世話してくれた。とても幸せな家庭だった。
でもある日突然お婆さんが倒れて運ばれていった。何が起こったのか分からないまま、一人で生きていけない私は、新しい家庭へと移動する事になった。
そこでは私はあまりにも歓迎されなかった。お腹が減って訴えても、面倒くさそうにご飯を用意されたし部屋の掃除もしてもらえない。終には声を出すだけで暴力を受けるようになっていった。
ここは私の居場所じゃない。でも一人ではまだ生きていけない。そう思い我慢してたけれど、昨日の暴力で脚をケガしてしまった。骨は無事だと思うけど動かすと、とても痛い。だからこのままじゃ、死んでしまうと逃げた。
正直、彼をまだ信用出来ないから、逃げようとした。でも脚が痛み上手く歩くことも出来ない。声を出したら暴力の恐怖でなんとか悲鳴を抑えたけれど私の心は恐怖でいっぱいだ。
「ケガしてるのか?とにかく手当てしないと」
彼は痛みで動けない私を優しく介抱して、そのまま病院へ連れて行ってくれた。おかげで適切な治療を受けれたから脚は早く治ると思う。でも注射は聞いてない。
なんか血を抜かれたり、薬を打たれたり、とにかく酷い目にあった。でもお腹は減ってるし声出すとまた暴力を受けるとの恐怖心は私を黙らせるには十分だった。
「この子は虐待されてるかもしれません。なのでこの子を戻すわけにはいきません」
先生がこんなことを言っている。でも私に注射したから先生は嫌いだ。
「そうですか・・・辛かったんだな。うちにくるか?」
信用はまだ出来ないけれど、病院で治療をしてくれたし悪い人じゃないと思う。先生よりは彼だと私は彼に無言で抱きついた。
「その子も貴方がいいようです。虐待された子は中々に心を開かないですが、この子は愛された事もあるのでしょう。とにかく先ずは心のケアをしてあげて下さい」
先生はそう言って私は彼に連れられて、新たな住まいへ連れて行って貰った。
でも彼は少し抜けてたらしく、彼の家族に私のことを連絡してなかったらしい。特に彼の母親が反対して施設がどこかへ私のことを送るべきだと、でも彼は最低でもケガが治るまで責任を持つと、そして私の事で迷惑かけないと頼み込みなんとか暫く泊めて貰える事になった。
彼に驚くほど美味しいご飯を食べさせて貰い、彼の部屋に簡易的だけど寝床も用意してくれた。
この彼の部屋が新しい私の居場所なのだろうか?不安に成りつつも部屋を色々と見て回る。
「それは本棚だよ。俺は大学でブンガクを専攻するくらい好きなんだ」
どうやら沢山扉の向こうは本らしい。お婆さんも本が好きで汚すと悲しい顔をしたから、読めないし触らない事にしようと思う。
彼は一通り説明すると何やら書いたり読んだりしている。私はお腹も久しぶりにいっぱいだし、疲れたのやら安心したのやらで眠くなり寝床へはいる。簡易的なので寝にくい。これはいけないと彼のベッドが使われてないし少しだけと勝手に占領して眠ることにした。
気がつくと翌朝だけど私は混乱している。だって彼のベッドで寝たけれど、彼に抱かれた覚えはない!!なのに私は彼の腕の中にいる。どうしよう!!でも身体の感じから何かしらされてはないと思う。私を襲ったら彼の人間性を疑うというかヘンタイすぎる。
少し目が覚めてくると、彼の体温で安心もするけど暑い。暫くじっとしてるけれど彼は起きない。夜遅くまで本を読んでたのかな?でも暑い。
私は彼の腕から抜け出して彼の体温を感じれる上に乗ると二度寝を決め込んだ。
彼のご飯はとても美味しいし、部屋もとても清潔にしてくれる。私が過ごしやすいように色々と家具も置いてくれたりもした。
逆に私の居場所が増えるほど、母親がいい顔をしない。息子が取られたみたいな感覚なのだろうか?とにかく怒鳴られる。ちょっと爪の手入れをしたくらいでそこまで鬼の形相に成らなくても良くないかな?
チラッ私を見かけるだけで怒るので彼の部屋に引き籠もるようになった。彼はそんな私をとても心配してくれた。
だから私は逃げることもなく、彼がいない間も寂しいけど彼の部屋にジッと隠れるようにして過ごした。
私の脚が良くなって来た頃、彼が1人の女人を連れてきた。どうやら彼女らしく彼と一晩過ごすようだ。それはそれこれはこれ、私のルーチンワークは彼よりも先にベッドで眠り気がつくと抱きしめられている事だ。
彼女も私の事をカワイイ!!と可愛がってくれたし、眠ることにした。
そんな時に私をベッドから彼女が降ろしてあろうことか、廊下に簡易的寝床を出してそこへ降ろされる。
「これからは、大人の時間だからごめんね」
いやそれは困る。あの母親と出くわしたらどうなるのか、もしかしたら暴力されるかもと私には高めだけど、脚も治ってるしドアノブを開けて彼の部屋へそしてベッドに向かってダイブする。
「ちょっと!!私の方が先に出会ったのよ?」
そんなことを言われても私の居場所はここしかない。
「仕方ないよ。この子は虐待されてたらしいし、一緒に寝るしかないよ」
彼女さんはなんだか私がお邪魔みたいだけど、小さな私へ強くは当たれず結局3人で寝ることになった。
彼女さんの方が身体の柔らかいし、なんだか懐かしい気がするなぁ。だから彼よりも彼女さんにくっついて眠ることにする。
「ちょっと!?もうぅそんな顔されたら怒れないじゃないのよぉ。初夜だったのにぃ」
そんな彼女さんの嫉妬?な声を子守唄しながら私は今夜も眠りに落ちた。
翌日、人口密度が高すぎるベッドは暑くて、もう熱いと表現するほどで目が覚めてしまう。いつもなら少し涼しい場所で二度寝するけど、今日は2人だからか、彼も彼女さんも起きてしまった。
どうやら彼女さんが住むらしく、家具やら運び込むらしい。
こうなると私は彼の部屋に引き籠もれないので、家の中で安心な場所を探して彷徨う。
そうしたらお父さんを見つけた。お父さんは母親の手前大ぴらに可愛がらないけど、こっそりオヤツくれたりする。だから今日はお父さんの部屋に隠れる事にした。
「引っ越しだから逃げてきたのか?仕事しながらだけどゆっくりしなさい」
とか言いつつ書物をしながらチラッチラッと私を探したり声をかけたり、オヤツをこっそりくれたりして過ごした。
そんな日常な一コマのはずが、お父さんが急に胸を抑えて机に頭を置いて動かなくなる。
私はこの光景に覚えがある。お婆さんが倒れた時だ。
またどこかへ連れて行かれたくない。どうにかしないと、そう思い私はドアノブをこじ開けてお父さんの部屋を飛び出す。すると母親が忙しいそうになにやら作業をしてる。
私は意を決して拙いながらも声を出すけれども、「コラッ!!今はお料理してるの!!アッチ行きなさい!!」
私は恐怖で動けなくなる。あぁこのまままた暴力を・・・いやそれよりもお父さんが大変だからと、もう一度だけ今度こそ声を張り上げる。
「煩いわね!!アッチへおいき!!」
上手く伝えられなくて更に怒られる。凄まじい恐怖に心が折れそうになったその時、彼女さんがお母さんの声を聞きつけてやって来る。
「そんなに怒らなくても、こんなに可愛いですよ」
味方だけどそれどころじゃない。なんとかお父さんのところへ連れて行かないとそう思い彼女さんの足を触りお父さん元へダッシュする。来ないから焦りつつ振り返る。
「あら?どこかに呼んでるの?玩具でも取れなくなったのかしら?」
彼女さんがついてくるのを確認してお父さんの元へ案内する。
「お父さん!!お父さん!!しっかりして!!救急車呼ばなきゃ」
お父さんはあれよあれよと、色々とされて気が付いたけれど、体調が悪いらしくけたたましい音がする車に乗せられて何処かへ行ってしまった。
「お父さんの事を伝えに来てくれたのに悪かったわね。もう、うちの子よ」
お母さんにそう言われて、抱きしめられながらお母さんはずっと泣いてる。
お母さんは泣いてばかりで役立たずらしく彼がお父さんに付き添い彼女さんが、お父さんを追いかけて色々と持っていくらしい。
お母さんは、私のお世話というか邪魔なのでお留守番みたい。私はお母さんとちょっと心が通じて幸せだ。でも泣きすぎじゃないかな?
延期になった引っ越しも終わって、お父さんも帰って来ていつも3人で眠る落ち着いた日常を過ごしていると、ある日私は物凄くおめかしさせられて家族揃ってお出かけする。
どうやら彼女さんと彼の結婚式らしい。
私は何故か場違いな場所に座らさせられて・・・お婆さん!?!?
「おや?みゃーちゃん?」
お婆さんだ!!なんか管がいっぱいついてるけどお婆さんだ!!私は特等席のお婆さんの膝の上で丸くなる。そして優しく撫でられる。
あぁ幸せ。
「お祖母ちゃん?凄いねそんなにすぐなつくことあるだ」
新婦な彼女さんが声をかけてくれる。
「みゃーちゃんはうちの子よ。倒れて親戚に預けたら居なくなってしまったと聞いてたけどこんなことに居るなんて、孫の結婚式も見れてなんて幸せな日でしょう」
私も幸せぇ♪
「もしかしてこの子虐待したのって叔父さん?後で御祝儀をもっと強請らないと、フフフッ」
怖っ!!彼女さん怖い
私はちょっと退避と決め込んで他の人の元へ向かう。
「この子が夜のお邪魔をする猫ちゃん?」「やぁカワイイ〜♪」「本当に静かな子ね」「良い子でちゅねこれ飲む?」
どうやら祝いの席でもうテンションアゲアゲらしい。なにやら変わった匂いのお水を貰ったので飲む。
「おい!!猫にアルコールはダメぇ!!」
彼が叫んで私の元へ走ってくる。けどなんか気分が良い。「にゃ?にゃーー」
追いかけっこするー。アレ?上手く走れない〜?なんでかな〜?でも楽し〜♪
「待ってほら病院行くぞ!!」
「にゃ!?にゃーーーー」
あの先生、注射するから嫌い!!あっ!!
私は水へダイブしてしまう。ヤバい泳げない。ジタバタしてると彼に助けられる。
「酔って水に落ちるとか、ソウセキの猫か?そうだ。まだ飼主に戻すかもって名前付けてなかったけど、今日から、吾輩にしよう」
私はみゃーちゃんだから!!
「吾輩はカワイイなぁ。それじ病院へ行くぞ」
病院はいやー!!私はみゃーちゃんなの!!
「にゃ!!にゃにゃにゃ!!」