わずかにひそめられた声に、彼女の本気を感じた。ここまではっきり仕事が好きだと公言する人を見て、泰智は驚くよりも感動した。
「僕には理解できませんが、でも、応援しますよ」
「ありがとうございます。仕事のできる丸さんにそう言ってもらえると、うれしい」
「仕事ができる……?」
ついぞ馴染みのない修飾語だ。
「自分の力量を見極めたうえで、きっちり仕事をこなすのも大事な能力じゃないですか」
「そういうお世辞も出世のため?」
「丸さんにお世辞言っても、なんの得もないでしょ」
あはは、と遠慮なく笑われる。それは確かに。上長からの覚えもめでたくない、どころか若干目をつけられている自覚のある自分が何を言おうと、社内人事にさざ波ひとつ立てられないだろう。
「早く成長するために、他人のいいところをいつも観察してるんですよ。丸さんは仕事が的確で、愛想はないけど納品物のクオリティは誰よりも高い。だから、懲りずに何度もお願いされるんですよ」
「はた迷惑な……」
「じゃあ手を抜けばいいじゃないですか」
そうだけど。それはちょっと、悔しいというか。あえてソースをかけないお好み焼きを提供する気分というか。あとちょっとでぐっと良くできるなら、手を出したくなるじゃないか。
「そういうとこ、職人ですよね」
「やめてくださいよ。食べるために働いてるだけです」
「そういうことにしておきますよ」
くすくす笑った武藤さんは、スマホの時刻を見て、そろそろ戻りましょうかと立ち上がった。
「あの、ICレコーダーの声、消してもらえます?」
「え? ああ、天使?」
「別に脅したりしないってわかってますけど、自分の声を持たれてるってのはちょっと」
引き戸をあけながら、彼女はえー、とくちびるをとがらせた。
「悪用しませんよ?」
「いい活用法があるとも思えないですけど、使わないなら消してもいいでしょ」
「わかりましたよ」
代わりに、と指を立てて振り返る。
「今度、ちょっとでいいので作業画面のキャプチャログ取らせてくれません?」
「お断りします」
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