というわけでさっそく今年最大の注目作のひとつ、「シン・仮面ライダー」見てきました!
いやーついに公開されましたね。シン・シリーズもこれで4作目。
当然自分で見る前はネタバレ厳禁ということでネタバレには触れないように細心の注意を払ってきましたが、17日の最速公開を見てきた人たちから漏れ聞こえる声からは、かなり濃度の高いオタ臭のする作品であること、相当人を選ぶ作品になっているであろうことが察せられました。
そういった雰囲気から今回の方向性がなんとなーく察せられるようなそうでないような……という気持ちを抱きつつ、わたくし一路サンサン劇場へ。
恒例の待合室はこんな感じ。
twitterで見たときはもっと小さいサイズを想像してたらえらくデカかったカブトガニ。これも今年最大の注目作のひとつだよな……。
そして塚口のファッションリーダー秋山殿は改造人間である。秋山殿は大洗の勝利のために、黒森峰と戦うのだ! 最終章の続きはまだかのう……。
サンサン劇場では公開当日ではありましたが、夕方だったのと天候のせいか客の入りは半分といったところ。
それでは早速感想を書いていきます。もちろん、公開されたばかりなので感想はネタバレ反転で。
↓ネタバレゾーン開始
まずは全体的な感想ですが、これまでのシン・シリーズと比べると調理に相当苦労したんじゃないかと感じました。
もともと庵野監督の作品であるシンエヴァは置いとくとして、シン・ゴジラとシン・ウルトラマンでは、それぞれ人間側のキャラクターをオリジナルのものにすることで元の作品であるゴジラやウルトラマンの味を残しつつも庵野監督の味付けにうまく成功していました。
しかし、今回のシン・仮面ライダーはそうは行きません。なにせ仮面ライダー1号こと本郷猛というキャラクターの存在があまりにも大きく、そして濃すぎる。その背景には、もはや本郷猛というキャラクターとほとんど同一化しキャライメージがあまりにも強固に癒着した藤岡弘、という存在があるからです。
この食材を調理するのは並大抵のことではなかったでしょう。
本郷猛とは別のキャラクターを仮面ライダー1号の変身者として登場させるというのも選択肢としてはあったかもしれませんが、それをやると「初代仮面ライダー」という作品を下敷きにした意味がなくなってしまう。かといってじゃあ藤岡弘、氏に本郷猛役をやってもらえばいいかというと、それやったらただの仮面ライダーになってしまう。
そういう無理難題を、本作では「メインキャラの名前はそのまま、「演者やキャラ造形はまったくの別物」という形で解決しています。……いや解決できてるのかこれ?
本作の主人公である池松壮亮氏演じる今作の本郷猛のみならず、ヒロインである浜辺美波氏演じる緑川ルリ子も本作では直接的にショッカーと関わっている……というかルリ子が本郷を伴って脱走してきてます。しかし、彼らのバックボーンは一部を除いて基本的に口で語られる部分が非常に多い。なので、キャラクターとしての掘り下げがかなり物足りなく感じました。それに加えて原作のキャラクターの印象があるので、正直今回の本郷猛のキャラ像は、最初はなんともぼんやりしてたというかどういうキャラなのかはっきりわからなかったんですね。
しかし話を見ていくごとに、だんだんその姿が見えてきました。
ずばり本作の本郷猛は「快楽と狂気に溺れ人間であることを捨てたショッカー怪人=オーグに対する人間の尊厳そのもの」なんじゃないでしょうか。
序盤ではためらいなく戦闘員を殺して血まみれになった自分の両手に、変わり果てた己の姿に慄き、中盤ではルリ子のかつての友人であるヒロミ/ハチオーグとの戦いを避けようとする優しさ、そして終盤、ルリ子の残したメッセージに思わず涙をこぼしてしまう弱さ。これが「人間」でなくてなんだというのか。
そしてヒロインであるルリ子もまた「人間」です。中盤、彼女は自分が人工子宮から生まれた生体電算機であることを明かします。それでなくても彼女は序盤から感情を表に出さず、ツンデレ他者とは馴れ合うものかという姿勢を貫いています。しかしそんな彼女も次第に(この辺もやや駆け足に思えましたが)本郷に心を許すようになっていき、険悪な関係だった父の想いも解するようになり、最後には自分も父と同じように他者に自分の思いを託して死んでいきます。
このように、本作における本郷とルリ子は、個性を際立たせたキャラクターと言うよりは「人間の尊厳と自由という概念の擬人化」とも言える存在に感じました。
そして、個性を際立たせたキャラクターは別にいます。仮面ライダー2号こと一文字隼人!
2号が登場することは事前に最新のトレーラーか何かで見てて知ってたんですが、どんな形で登場するかと中の人までは知りませんでした。
仮面ライダー1号=第1バッタオーグと同様の昆虫合成型オーグである第2バッタオーグとして登場した2号は、1号と激しい戦いを繰り広げます。わたくし人形使いはライダーに関してはあまり知らないので1号VS2号の戦いを見るのはこれが初めて。本作はバトルシーンがたっぷり楽しめますが、ベストバウトはここだったかも。そしてこの2号の飄々としたキャラ造形がまたいいんだ……。
惜しむらくは、2号の洗脳が解かれた際に過去の記憶が戻る旨の発言があるんですが、そこらへんのバックボーンの一切が省略されてしまっていた点。まあそこに注力してたら尺がいくらあっても足りなかったでしょうけど。
2号の登場とキャラ造形は非常に魅力的でしたが、こちらもやはり深掘りをしてる余裕がなかったであろう点はちょっと残念でした。しかし、詳しくは後述しますが2号には非常に重要な役割が与えられてるんですね。
次は怪人について。
わたくし人形使いはゼロワンから久しぶりに仮面ライダーを見るようになったわけですが、令和ライダーに限らず今まで見てきた新しいライダーはライダーVSライダーの構図が多すぎて怪人の印象が正直薄かったんですが、本作のショッカー怪人たちはどれも初代の歴代怪人を元にしておきながら現代風にメカメカしくアレンジされておりとてもいい。
そしてどの怪人もしっかりキャラが立ってるというかサソリオーグとハチオーグに関しては明らかに変な方向に力が入っているのが笑えます。
特に長澤まさみ氏演じるサソリオーグはなんかもう半分くらいドロンジョ様だしハチオーグは濃厚な百合おっぱじめるし今作が初ライダーだったちびっ子の性癖が歪んでしまう。
ほかにも、慇懃無礼な言動が魅力のクモオーグ、サイコなカマキリ・カメレオンオーグ、ネットリ言動のコウモリオーグなど、バラエティ豊かで魅力的な怪人が楽しめました。
ところで気にしていた本作のサプライズ要素に関してなんですがロボット刑事Kが出てくるなんて誰に予想できるんだよ。予想外にも限度というものがですね。映画館でひっくり返りそうになったわ。
また、終盤で強力な敵として本郷と一文字の前に立ちはだかるショッカーライダーも不気味で良かった。
同じ姿のライダー=バッタの群生相とする設定もしびれますし、エヴァ量産機を思わせる文字通り昆虫の群れのように統率の取れた、なおかつ無機的なコンビネーションは独自の魅力が感じられました。
しかし惜しむらくは、このダブルライダーVSショッカーライダーのバトルシーンが暗いトンネルの中でやってることがよく見えなかったこと。いや、双方のCアイ部分の光の色違いや残光で魅せる意図はわかるんですが、先の1号VS2号のバトルシーンがすごく良かっただけに、ここはもっとはっきり見える場所、さらに言うならお約束の採石場でドッカンドッカン爆発しながらやってほしかった……。
そして本作のラスボスであるチョウオーグ、まさかの仮面ライダー第0号!
V3のダブルタイフーンを想起させるベルトに、シャドームーンを思わせる白を基調とした装甲服がまた強敵っぽくて良い。というか掌底メインの戦い方がなんか散さまっぽかったし、ラストバトルが全体的に覚悟のススメっぽかった。
1号2号は原点からそれほど逸脱してないデザインに収まってたのに対し、怪人側は戦闘員も含め思い切ったアレンジになってて良かったですね。
そしてデザインがアレンジされてたと言えばサイクロン号ですよあああああカッコいいよおサイクロン号ーーーーッ!!!
などと絶叫してしまうくらいのベストデザイン賞です今回のサイクロン号。
普通のバイクのデザインに近い状態からマフラーというかバーニアが生えるあの変形、まごうことなくオタクの所業。そしてきっちりライダーの相棒として活躍して最後には特攻自爆! 100点!!
序盤で本郷とルリ子がセーフハウスに向かうシーンで後ろからゆっくりついてくるのが大型犬みたいでとってもラブリーなので全無機物萌え症候群罹患者は100回見ろ。
原作が非常に強固なだけにアレンジが難しかったとは思いますが、原作の持つお約束と言うかメッセージをストレートに継承しているところもあるのがうまい。
それが顕著に現れているのが、ルリ子がマフラーを渡すシーン。序盤ではまだ「バッタオーグ」と呼ばれていた1号がルリ子に赤いマフラーを渡されることによって「仮面ライダー」として生まれ変わる! 洗脳から解かれた2号がそう、赤いマフラーは正義のしるしなのだ!!
そして、最終的に命を落としてしまうルリ子から託されたこの正義のしるしである赤いマフラーは、本郷からライダーマスクとともに一文字に継承されます。ここで一文字の存在が生きてくるんですね。継承はひとりではできない、2号がいたからこそできる本作のテーマの体現だったと思います。そこから1+2=3でV3とかもうこれがやりたかったがために2号出しただろ庵野監督!! このオタクの鑑め!!!
で、絶対なにか仕込んでるんだろうなーと思ってた竹野内豊演じる政府の男と斎藤工演じる情報機関の男がラストで明かす名前がそれぞれ「立花」と「滝」ってほらあああオタクはすーぐそういう事するうううう!!!!
↑ネタバレゾーン終了↑
……と言った感じで、本作の感想は正直消化不良な部分もあったにせよ、それもまあ必然的な制約ということで「事情によってコーヒー豆が使えないので、なんとかして作ったとても美味しいたんぽぽコーヒー」ってところでしょうか。
わたくし人形使いは仮面ライダー、特に初代に関してはそこまで詳しいわけではありません。なので本作にはここでは挙げられていない相当量の小ネタが仕込まれていると思われます。なので複数回見るのは確定として、他の人の感想以外にもそういった小ネタも調べていきたいですね。
いやーしかし久々に見るのにカロリー使った映画でした。まさにオタクの所業だよ……。