その沈黙と視線に耐えかねて、わたしは頭の中をいっぱいにしている疑問をひとつずつ聞いてみることにした。
「え……と。人間は……人類はもう、わたしだけって言ってたよね」
「はい、肯定します。[[rb:人間 > ホモ・サピエンス]]、[[rb:人類 > マン・カインド]]、[[rb:知的有機体 > ホロン]]、それらのカテゴリに分類可能な存在は、わたしの観測範囲においてはあなたのみです」
「……」
 平坦な声で返ってきたその答えには、実感がわかなかった。ううん……この状況そのものに実感がない。なんだか、ベッドに横たえている自分の体すらも、馴染みがない気分だった。
 考えていても仕方がない。わたしは深く息をついてベッドに身を預け、湧いてくる疑問を口に出すことに集中することにした。
「えと……ほかの人たち……人類は、みんな死んじゃったってこと?」
「はい、肯定します」
「それは、どうして……? 戦争とか? それとも、病気?」
「大規模な遺伝子疾患の感染拡大、およびそれに伴うパニックです」
 女の人の片目が、チチッと赤い光を発する。すると、何もない空中に映像が現れた。
 蛍光グリーンで描かれているのは、世界地図だった。そのところどころに赤い点が現れて、その点はみるみるうちに広がって円になる。そしてその円はさらに広がって……さっきまで蛍光グリーンだった世界地図は、赤一色になってしまった。
「世界各地で発生した遺伝子疾患は、短期間のうちに世界中に拡大していきました。罹患者の遺伝子コードをランダムに書き換え異常を発生させるこの疾患は、罹患者本人は無症状であるにも関わらず、100%子供に遺伝することから罹患者は子供を設けることが禁止されました。それによって出生率は異常低下、わずか30年のうちに世界人口は3分の2まで減少しました」
 わたしはその言葉と、目の前に現れては消えていくデータやグラフをまだぼんやりする頭で眺めていた。
また、[[rb:遺伝子 > ジーン]]バンクには使用可能な遺伝子データは残存していません
 
カット
Latest / 61:44
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
紅楼夢表紙お礼SSを書いていきます。
初公開日: 2022年12月07日
最終更新日: 2022年12月07日
ブックマーク
スキ!
コメント
紅楼夢表紙お礼SSを書いていきます。