ずる、ずる。
目の前には無数の赤い小路が広がっている。
「は、はは、」
世界が真っ赤に見える。これは何だ、これは一体、何だ?
これは俺に対する天の裁きなのだろうか?
数多もの人をこの手にかけてしまった俺に対する、神からの裁きなのか。
ずる、ずる。
真っ赤な小路は、どこまでも、どこまでも続いている。
終わりが見えない。
俺はどこに向かおうというのだ?
先の見えないこの道をずっと歩いていかなくてはならないのか?
頭痛がする。耳の奥も痛い、これは鼓膜がやられてしまっているのかもしれない。
「は、はは、あはは」
思わず口から乾いた笑いが込み上げてくる、何も面白いことはない。否、分かっている。正気じゃないのだ。俺は正気を失っているのだ。
「ふはは、はは、ははっ」
その場にしゃがみ込む、両手で顔を覆って笑いに体を震わせる。
ぬるりとした感触に、思わず顔から手を離した。
赤色。
掌にべっとりとこびりついた赤色が視界に入ってくると、錆びたような匂いが辺りに満ちた。この赤色は何か脳がだんだんと理解してきている、ああ、うすぼんやりとしたこの覚醒していない脳がようやく現状を理解しようとしているのか。
「あ、血だ」
そう呟く上を流れ星が音を立てて流れていく。
次から次へと流れ星が頭上を駆けていく、手で触れれば掴めそうだ。
「死にたくない!!」
誰かの叫び声で全身が楼で固められたように動かなくなる。膝が震えて動けない、これは恐れだ。自分はこの感情をよく知っている、ああ。ああ!!思い出す、ここがどこなのか!
あれは流れ星なんかではない。
「銃弾だ…俺は、俺はまた、ここに…」
ドッッ。
全身の空気が押し出されたように息を吸うことができなくなる。
「あ”、」
身体が何も意志を持たない、自分もそこらへんで転がっているような死体になるのだろうか。死にたくはない、身体を必死に持ち上げて苦し紛れに這いずる。
「いやだ、いやだ死にたくない」
這って、這って、そうして目の前に革靴が現れた。
「た、助けてくれ」
革靴の男はしゃがみこんで、強引にこちらの顔を上に向かせた。
「お前は死ぬのが使命だ。そうだろう」
「あ、お前」
「大丈夫。俺が楽にしてやろう、何も怖いことはあるまい」
がちゃりと撃鉄が押し付けられて、そのまま引き金を引かれた。
なるほどこれは夢だ。
だって今しがた引き金を引いたのは紛れもなく、
「大丈夫だ、スティーブン・エバンズ」
―俺自身だったからだ。
「…ッ!」
がは、と息を吐き出して体を起こす。
どうやらベッドから落ちていたらしい、夢の中の痛みはこれが原因か。
震える手で顔を覆う。
俺の心は未だに仲間を失ったあの戦地から還ることができていないのだ、俺の中ではまだあの忌々しい出兵は終わっていないのだ。
「恐ろしい…」
鼻先を血の匂いが掠めていって、思わず体を丸めてしまった。
「ハッピーハロウィン」
その声に顔を上げるとアーサーが棒付きのキャンディを持っているではないか。
フィリップはその様子を見て鼻で笑い飛ばし、新聞に目を落とした。
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初公開日: 2022年10月29日
最終更新日: 2022年10月30日
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何を書くかは決まっていないけど何か書きたい欲がある今日この頃