「おや、あれはオキナワスズメウリ」
 卓を隔てて正面に座る客人が開け放たれた硝子戸――網戸の向こうへと視線を投げて呟いた。私は反射的に目線を上げ、彼に倣って庭へと目を向ける。照り付ける盛夏の陽射しにハレーションを起こして白っぽく見える其処には雑草と共に蔓草が掴まるものを探して庭壁へと腕を伸ばしていた。
「あの植物を御存知で?」
「ええ、まあ。というより、私も去年、育ててたんですよ。オキナワスズメウリは日除けに丁度良いのです。支柱を格子状に組んで、蔓を絡ませると緑の窓掛になるのです。知りませんか」
「はあ。あの植物は特に育てている訳ではないのです。気が付いたら、勝手に」
「そうですか。大方、鳥か何かが種を運んで来たのでしょう。緑の窓掛、なかなか涼しくて良いですよ。良ければ、お手伝いをしましょうか」
「ご親切にどうも。でも良いですよ。無精なので、きっと枯らしてしまう」
「そうですか? 暑さには強い植物ですし、手入れも簡単ですがねえ」
 客人はやれやれと云った風情で額に浮いた汗をハンカチで拭う。私は彼を一瞥して、眩しい光の射す庭を見遣る。繁る緑にふと背筋が寒くなる。縦に何処までも生命力を伸ばしていくその貪欲さが、何かの情念のようで恐ろしい。
「――それにしても。彼女はどうしてしまったんですかね」
「さあ。私もそれが知りたいですよ。彼女の場合、失踪になるのでしょうか」
「彼女も子供ではありませんからね。失踪届は受理してくれると思いますが、事件性がなければ警察は動かないでしょう」
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初公開日: 2022年06月25日
最終更新日: 2022年06月25日
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