はい、今日も今日とて塚口です。
今日見てきたのはこれ。
例によって例のごとく、塚口での予告で知った作品。そして例によって例のごとく前情報まったくなしで、なんだか面白そうというだけで見てきました。
ある日主人公ジェシカは頭の中に鳴り響く謎の爆発音に悩まされるようになります。他の人には聞こえないその音の謎を解くためにジェシカは旅に出る。
こないだ見た「TITANE」に続いて、またなんというか難解で不可解で特殊な映画でした。
何が特殊ってこの映画、BGMがいっさいありません。
劇中で楽器を演奏したり音楽を鳴らしたりしてるシーンはありますが、最初から最後まで環境音のみでBGMはほんとうに一切なし。「音」を非常に重視した作品であるためだと思われます。
わたくし人形使いはこれまでそれなりにたくさんの映画を見てきましたが、まったくBGMがない作品なんて初めて見たと思います。
そしてもうひとつ特徴的なのが、固定アングルでの長写しが作品の大半を占めているということ。もうスクリーンが止まってるんじゃないかってくらいカメラが動かない。こんなに動きのない映画もこれまた初めて見ました。
本作は明確なストーリーがあるわけでもなく、一大スペクタクルがあるような作品でもない、いわゆるアート系の作品で、作品の発端である謎の爆発音の正体は明確にされません。ストーリーの起伏による驚きや謎が解けるカタルシスもありません。
この映画を一言で表すなら「静謐」でしょう。BGMもなければ明確なストーリーもない。さらに加えるなら大きな音や大声すらもない、ひたすら静かな作品です。
その静かさの中に際立つのが環境音。
風、雨、川のせせらぎ、雑踏のざわめきなどなど、BGMやストーリーがない代わりに、これらの環境音が饒舌に語りかけてくる作品でした。
特に印象的だったのが、終盤でジェシカの脳裏に音とともに過去の記憶が蘇ってくるシーン。普通こういうシーンでは映像もセットになってるものですが、本作ではあくまで音のみ。そのせいで、じっと目を閉じて脳裏の音と記憶に集中しているジェシカの感覚と自分とうまく重ね合わせて見ることができました。
わたくし常々映画というものは、「現実では見えない映像、聞こえない音、感じられない感覚を体験できるもの」と思ってるんですが、本作ではまさにその感覚を味わうことができました。
そしてそれに加えるに、本作は映画館で鑑賞してはじめてその魅力に十全に触れることができる作品であると思います。前述の環境音に関しては、映画館という静寂の空間の中ではじめて気づけるようなごくわずかな変化、小さな音があるので、周囲の雑音があるような環境では楽しみきれないでしょう。さらに言うなら、これまた前述の通りBGMが一切ないので、「シアター内の音が際立つ」という付加価値があります。
普段なら決して気づかないようなシートのわずかな軋み、他の人が身動ぎする気配がこの静謐な映画のトッピングとなって本作の味わいをさらに深めていると感じました。