目の前のそれは、未だ熱をまとっていた。
「……」
それを、ぼんやりと見ていた。
白い、白い物の山。ううん、砂場の方が近いかも。遊び道具がほったらかされたみたいな、そんな。
まるで面影がない。
正反対だ――お姉ちゃんと。
「それでは、喪主様から順にお骨を骨壺にお入れください――」
司会の人がそう言って、お父さんにお箸を渡す。お父さんは無言でそれを受け取って、欠片をぽとりと壺の中に落とした。
お母さんも。ぽとり。
そうして私に回ってくる。おっきなお箸は扱いにくくて、間を持たせるように改めて目の前の物を見つめた。
白い、白い――骨。お姉ちゃんの、骨。
これがお姉ちゃんだなんて、目にした今でも信じられない。
だって、今でも呼んだら来てくれそうなんだ。
いなくなっただなんて、信じられないんだ。
でも呼んでも呼んでも、お姉ちゃんは来てくれなくて。
あぁ、いないんだ、って。
鈍くなった心は、諦めて受け止めてしまってる。
……ぽとり。
だからなにを思うでもなく、お姉ちゃんだった物を壺の中に落とした。
くしゃ、と、欠片が力なく欠ける音がした。
促されるままに壺とお箸をおじいちゃんに回していく。おじいちゃんもおばあちゃんも、叔父さんも叔母さんも、みんなお姉ちゃんを突いて崩す。
お姉ちゃんだった物は、どんどん小さくなっていく。
ふと、その中で小さな欠片が見えた。
「みなさま、お箸渡しはお済みでしょうか。それでは――」
みんなの視線が司会の人に向いてる隙に、それへと手を伸ばした。
崩れたお姉ちゃんの粉と一緒に握ったのは、小さな歯だった。
お姉ちゃんの、歯。
髪が、目が、体が。燃えて尽きてるのに――それだけは灰にならずに残ってた。
それはまるで、まだお姉ちゃんが生きてるみたいで。
「……」
私はそっと、ポケットの中にそれを捻じ込んだ。
熱を持ったポケットの中からお姉ちゃんを感じられて、何日か振りに心が緩む。
……私、やるから。
崩れることのないお姉ちゃんに向けて、私はそう誓いを立てる。
……だから見ててね。お姉ちゃん。