ぽかぽかと暖かな陽射しがカーテンを通り抜けて、更に柔らかな光になってベッドに降り注ぐ。
陽射し色に染まったシーツ。それに包まるは白い肌に紅い華を咲かせた躰にくしゃりと寝癖の付いた灰色の髪。
年上の恋人が意外にも朝が弱いと知ったのは付き合い始めて1ヶ月のことだった。
(眠いのに必死に目を擦って起きてきたの、可愛かったなぁ)
いい歳なのにとかぶつぶつ言っていたけれど、オレに見栄を張りたくなったカブさんがとても可愛くて、朝が弱いのなんて全然気にならなかった。
それから諦めたのかお泊まりした時のカブさんはゆっくり起きてくるようになった。普段の頼れる大人としての凛々しいカブさんも大好きだけど、寝てる時のあどけない顔も愛らしい。
朝ごはんはオレが作ればいいし、何より誰も見たことがないであろうカブさんの特別な一面が見られることの優越感が嬉しかった。
じっと寝顔を見つめていると陽射しが眩しいのか、むずがるようにシーツの海に顔を埋めてしまう。
(か~わいいな~♡)
ついでれりと頬が緩む。
この時間は何にも替えられない至福の時間。心ゆくまで堪能していると不意にカブさんの目が開いた。
短い睫毛から現れた黒灰の目が、春の陽射しで淡く煌めいて。
そのままゆっくりゆっくり細められた。
「き、ばなく……?」
掠れた声で名を呼ばれる。
まるで昨夜の情事かと思わせるその音。しかし熱は帯びず、ただただ穏やかな空気を纏っている。
「カブさんどうしたの?」
内緒話をするように密やかな声で問い返す。
耳元で囁かれたのが擽ったいのだろう。肩を震わす想い人は優しく目を細めたままこちらを見上げた。
「あったかいねぇ」
「そうですねぇ」
「きょうのあさごはんはなぁに」
「んー……カブさんはなにが食べたいの」
「ぼくはねー……さんどいっちがいいなぁ」
「りょーかいです」
「きばなくんのつくってくれたの、なんでもすきだけど」
「嬉しい。ありがとうございます」
「このまえつくってくれたちきんがはいってたの、とってもおいしかった」
「じゃあそれにしましょうか」
「ありがと」
へらりと笑ってまたシーツに潜り込む。
寝起きのぽやぽやしているカブさんの可愛さたるや。まだ眠そうだからもう少し寝かせてあげよう。その間にリクエストの準備を、
くい。
何かがオレの袖を引っ張った。
何か、なんて心当たりはカブさんしかいない。
どうしたのかと下を見遣ればシーツの中から灰と白のみつばがちょこりと出ていて。
「かぶさん?」
小さく小さく問いかける。
シーツの海に潜ったはずの灰と白の下から桜色のおでこが見えてしまった。
奥手な彼の大変控えめなおねだりに愛おしいやら可愛いやらが溢れて暫し動けなくなる。
「……いっしょに、ねよ……?」
何も言えないオレに小さく口を開けて再度のおねだり。
あまりの可愛さに元気になりかける息子を黙らせ、さっと隣に潜り込んだ。
サンドイッチは2人で作ってブランチにしよう。
そう心に決めて可愛い人の温かな体温にゆっくりと微睡んでいった。
終